今回は大がかりなご都合主義がありますが、気にしないで下さい。
第一章 新たなる世界~1935年~
第一話 海軍代表との会談
「えッ!?うそッ!?」
どこかの部屋の中央に落下した二階堂。その上に姫島が乗っ掛かる状態で落下してきたのだ。
「ちょ、ちょっと…悪いが降りてくれないか紫苑」
「あっ…ごめん」
姫島が謝って二階堂の上から退くと、互いの顔を見合わせた。
「神様の言った通り確かに若返っているな」
「ええ、それに私達の服装も変わっているよ」
姫島が二階堂にそう言うと二階堂はすぐに自分の服装を見た。先程まで来ていた私服では無く、海上自衛隊の服装に変わっていたのだ。
「それにしても…ここは一体どこなの?」
「あぁ…見た感じどこかのお偉いさんの仕事場では無いのか」
そんな時、後ろの扉が開き、2人の男性が部屋に入って来た。
「……誰かね?君達は」
「長官。見て下さい。我々の服装とは違います」
長官と呼ばれた男が2人に聞き、参謀らしき人物が2人に向けて鋭い目線を浴びせた。
疑われているため、2人は取り敢えずは自分達の身分を明かす事にした。
「申し遅れました。自分は日本国海上自衛隊第一護衛艦隊司令長官の二階堂紅蓮海将補であります」
「同じく第一護衛艦隊参謀長の姫島紫苑一等海佐であります」
「海上自衛隊…だと」
「それに海将補や一等海佐とは一体…?」
「それについてはちゃんと説明します」
そう言うと2人は体勢を立て直した。
「改めまして自分は日本国海上自衛隊第一護衛隊司令長官の二階堂紅蓮海将補であります」
「同じく第一護衛艦隊参謀長の姫島紫苑一等海佐であります」
「うむ。私は大日本帝国海軍連合艦隊司令長官の高橋三吉海軍中将だ」
「自分は連合艦隊参謀長の野村直邦海軍少将だ」
「それで早速だが…君たちはいったい何者なのかね?」
高橋はいきなり核心を突く質問を2人に言った。
「自分達は今から67年後の2012年の世界から来た人間です」
「な……何を言っている…」
野村は信じられないと言わんばかりの声を上げた。
「信じられませんしょうが、これから起こる事を1つずつ話して行きます」
そう切り出すとこれから起こる事を1つずつ丁寧に話して行く。
「取り敢えずはここまでが自分たちの世界が歩んだ道です」
「……俄かに信じられないな」
「確かに自分もです。それだけではどうしても」
「分かりました。では証拠をお見せしましょう」
そう言うと二階堂はポケットから携帯もといスマートフォンを取り出し、2人に見せ渡した。
「これは……」
「それは携帯電話と言って未来の世界では誰もが持っている必需品です」
「ふむ~、なんとまぁ不思議な形をしておりますな」
見た事のない形に不思議に思う野村。
「これはどのように使うのかね?今の所、真っ黒だが?」
「では、実際に使ってみましょう」
そう言うとタッチし画面を出現させる。これだけで二人は驚く。
「なんと!!こ、これはカラーではないかッ!?」
「それに、画面が綺麗ですよ!?」
「まだ驚くのは早いです」
二階堂は携帯を操作し、そして音楽を一曲流す。海軍軍人なら聞いただけで分かる曲である。
「こ、この曲は軍艦行進曲ではないか!」
「それにこんな小さい機械にも関わらずラジオで聞くよりも遙かに優れている」
高橋と野村はそれぞれ違った驚き方をしそして納得したかのように頷くと
「確かにこの技術はあのドイツ連邦共和国ですら到底できない技術だな…君達2人を未来から来た人間であることを認めよう」
「「あ、ありがとうございます!!」」
二階堂と姫島は高橋と野村に深々と頭を下げた。
「それで君達はこれからどうするつもりだ?」
「自分達はあの悲惨な敗戦を防ぐために戦いたいのですが……この世界の歴史が分からないのです。先程のドイツにしても連邦共和国と言うのだけでも我々の世界とは全く違いますから…」
「ふむ。なら話そうではないか?先程君達の語った君達の世界とは成り立ちも違うからな」
そう言うと高橋はこの世界の日本の歩みを説明し始めた。
まず日露戦争は日本の勝利の終戦となった。勝利の原動力になったのはあの日本海海戦だったがここで1つ違うのが本来、機雷事故で沈んでいるはずの『八島』『初瀬』は機雷事故が起こらなかったため日本海海戦に参加しておりロシア海軍第二太平洋艦隊(バルチック艦隊)を撃破したのだ。
それが元で史実では手に入れられなかった賠償金をこの世界では日本円にして五億円を得る事が出来、その他の譲渡などは史実と一緒であった。
その後、日本はイギリス海軍が竣工させた『ドレッドノート』型戦艦が竣工したのを機にそれに準ずる戦艦建造に入ったのだ。なおこの世界では『薩摩』型戦艦、『筑波』型巡洋戦艦は起工すらされずにその分の資金及び資源を使って弩級戦艦を建造し、それが『河内』型弩級戦艦4隻の就役に繋がったのだ。河内型は二番艦に『摂津』、三番艦『志摩』、四番艦『和泉』となり性能は基準排水量1万5000トン、武装は背負い式の50口径30.5cm連装主砲4基8門、50口径12.7cm単装副砲12基12門、53.3cm魚雷発射管4基、40mm単装機関砲8基8門を備えた一等級の弩級戦艦となった。
そして1911年にイギリスから巡洋戦艦『金剛』とその設計図を購入し、その設計図をもとに二番艦『比叡』、三番艦『榛名』、四番艦『霧島』を就役させた。
その後は『金剛』型の発展改良型として『扶桑』型戦艦4隻を竣工させた。なおこの世界では伊勢型戦艦は存在せず、代わりに扶桑型の三・四番艦として同名が存在している。
性能としては基準排水量3万5000トン、武装は50口径36cm三連装主砲4基12門、50口径14cm単装副砲16基16門、50口径7.62cm単装高角砲8基8門、40mm単装機関砲12基12門の超弩級戦艦として建造された。
そして第一次世界大戦ではあのユトランド海戦では日本海軍は金剛型巡洋戦艦4隻、『河内』型戦艦4隻を筆頭に遣欧艦隊を派遣、そしてドイツ第二帝国艦隊と交戦、その際にドイツ最強の15インチ主砲搭載戦艦『バイエルン』型2隻及びドイツ最強の巡洋戦艦こと『デアフリンガー』型巡洋戦艦3隻と『ザイドリッツ』型巡洋戦艦と激戦を繰り広げた。
その後の戦闘では先程の6隻はいずれも戦闘不能状態になり日本海軍の手に堕ちた。
第一次世界大戦の終戦条約において日本は先のユトランド海戦で捕獲した6隻にバイエルン型戦艦三番艦『ザクセン』、四番艦『ヴュルテンブルク』の2隻をイギリスから譲る代わりに、ドイツの租借地だった青島の所有権利と多額の資金をイギリスに譲渡する事を条件として得た。
戦中には最新鋭にして世界初の41cm主砲搭載戦艦、『長門』型戦艦を建造・就役させた。主砲口径は41cmだが50口径となっており、基準排水量は4万8000トン、武装は50口径41cm三連装主砲4基12門、50口径14cm単装副砲16基16門、50口径7.62cm単装高角砲8基8門、40mm連装機関砲8基16門、20mm連装機関砲10基20門と世界最大最強の地位を獲得した。なお史実では2隻だけだったがこの世界では三番艦として『伊予』、四番艦『淡路』が存在している。
その後、日本は八八艦隊計画を実行した。その第一陣として『天城』型巡洋戦艦4隻と『加賀』型戦艦2隻を建造し始めたが、ここで待ったをかけたのがアメリカ主催のワシントン軍縮会議だった。
だが、ここで日本はイギリス・フランスなどに手を回し、何とか船体の出来た『天城』型巡洋戦艦4隻(『天城』『赤城』『葛城』『愛鷹』)と『加賀』型戦艦2隻(『加賀』『土佐』)の6隻を当時、補助艦艇扱いだった航空母艦に改造する事を条件に保有が認められた。
その結果、日本海軍が保有出来たのは『金剛』型巡洋戦艦4隻、『扶桑』型戦艦4隻、『長門』型戦艦4隻、『薩摩』型戦艦4隻、『蔵王』型巡洋戦艦3隻、『安達太良』型巡洋戦艦1隻の主力艦20隻69万5900トン、『天城』型航空母艦4隻、『加賀』型航空母艦2隻、『翔龍』型航空母艦4隻の10隻27万7870トンとなった。
ちなみに米英比率は対8割8分、米英の保有主力艦艇は24隻85万トン、空母10隻30万トンと言う破格の数字(史実は米英50万トンに対して日本は30万トン、空母は米英13万5000トンに対して日本は8万1000トン)となっており、この要因は、第一次世界大戦最大の海戦であるユトランド沖海戦における連合艦隊の獅子奮迅の活躍によって連合国軍が勝利を収められたためと、他国への根回しのおかげで成立したのだ。
この保有の代わりに退役になった『富士』型、『敷島』型、『河内』型等の艦艇は第一次世界大戦のドイツ海軍のUボートの被害を目の当たりにした日本海軍の上層部によって輸送船団の護衛を主任務とする『海上護衛総隊』の設立しそのために護衛戦艦として配備された。
航空母艦については世界初の『鳳翔』型の就役の後に、世界最新鋭の『翔龍』型航空母艦4隻を建造した。この艦は基準排水量2万8000トン、武装は50口径12.7cm連装高角砲8基16門、40mm四連装機関砲10基40門、20mm三連装機関砲12基36門、航空機搭載量70機と中々の性能を有した航空母艦を有し、中型航空母艦として『龍驤』型を『翔龍』型とほぼ同時に完成させた。史実では1隻だったが、この世界では二番艦『神驤』、三番艦『天驤』、四番艦『鳳驤』の4隻が存在している。
この『鳳翔』と『龍驤』型はワシントン海軍軍縮条約の規定では1万トン以下の空母の保有は制限がないため、保有する空母は『天城』型4隻、『加賀』型2隻、『翔龍』型4隻の合計10隻となっている。
尚、巡洋艦・駆逐艦の排水量は史実と一緒である。
1925年、日本はイギリス・フランス・中華民国そしてドイツの四カ国と共に軍事同盟を結成。これを後の歴史家は五カ国軍事同盟と呼んだ。
この軍事同盟は反共産党主義・自由主義を掲げた軍事同盟であり、このためイギリス・フランス・ドイツの先進技術とハイオクタン価燃料が滞りなく輸入する事が出来るようになった。
「と、まぁこんな感じだな」
高橋は話を終わらせた。
「この世界は凄い事になっている……」
「凄いですね…」
これも神様に願いした2つ目の『日本優位への修正』が聞いたのだろう。
それに史実でなら敵対するはずのイギリス・フランスが味方となっており、技術大国ドイツもナチスが政権を取れなかったため(これは史実よりもドイツに課せられた負担が史実よりも軽減されたため)今も尚、連邦制を敷いている。
そんな時、士官が慌ただしく入室してきた。
「長官殿、緊急事態です!所属不明の無数の艦艇が近海に出現しました!」
「あ…忘れていた」
二階堂はあの事を説明した。
「ほう。では、その未来兵器が搭載されている輸送艦とやらを見せてもらいたい。悪いが代表者を呼んできてくれ」
「その事ですが……」
士官は少し歯切れの悪い口調で答えた。
「どうした?」
「は、その輸送艦やタンカーには人一人見当たりませんのです」
「何だと……そんな事があり得るのか」
「はい。念の為武装した陸戦隊を派遣した所、誰一人として見当たらず格納庫には見た事のない大型戦車や航空機等が発見されました」
大型戦車とは『コンカラー』や『チーフテン』、航空機はMe262『シュヴァルベ』の事だろう。
今から見れば破格の性能であるから、士官が驚きつつもどこか興奮した口調で答えた。
「ふ~む…分かった。我々が向かう。君達もあの未来兵器の説明に着いて来てくれ」
「「分かりました!!」」
二階堂と姫島はもちろんとばかりに返事し一同は無人の輸送艦隊に向けて内火艇で向かった。
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