韓国の朴槿恵大統領が就任、「公正な市場」を公約

 【ソウル】韓国を貧困から脱却させた朴正煕元大統領の娘、朴槿恵氏(61)が25日、大統領に就任した。同氏は就任演説で「希望の新時代を開く」と約束した。

Shin Jun-hee/Associated Press

就任式会場に向かう朴槿恵氏

 同氏がかじ取りを任される韓国経済は、父の時代よりずっと大規模で世界での重要度も高まっている。だが依然として父が1960年代に作り上げた制度や規制の一部に縛られている。

 朴槿恵氏が迫られる基本的な選択の1つは、政府による経済への巨大な影響力を維持するか否かだ。政府は数十もの規制当局を有しているほか、大手銀行の一部など400の企業も保有している。

 朴氏は25日午前、ソウルの国会議事堂の敷地内で、7万人の招待客を前にして就任の宣誓を行った。同氏は国会議員であり、1990年代終盤以降与党の代表を務めている。

 朴氏は韓国初の女性大統領になる。就任式には、韓国を除くアジアの国で唯一女性が国を率いているタイのインラック首相も出席。

 朴氏は「資本主義は、世界的な金融危機を受け、新たな試練に直面している」と指摘。政府は「公正な市場」を創出する必要があると述べ、これまで政府による大手財閥などに対する優遇措置の是正について間接的に言及した。

 朴氏は「様々な不公平慣行のほか、中小企業の間で不満が募っていた誤った習慣などを根絶することで誰でもが潜在力を最大に発揮できるようにする」と述べた。

 朴氏は昨年12月に次期大統領に選出されて以降、経済についてあまり発言していない。側近が発表した政策提言で最も重視されているのは、高齢者向け社会保障の拡充だ。

 同氏は企画財政相に、政府関連のシンクタンクである韓国開発研究院の玄旿錫院長を起用した。

 韓国の経済成長率は、世界的に経済が低迷した08-09年の後に5%以上に回復したが、3%未満に低下するとみられている。朴氏はそんな中で同国のかじ取りを任される。

 一方、超低出生率やその他の人口動態的な状況が経済成長の潜在力にマイナスに働いている。朴氏が18年に一期目を終えるまでに、同国の労働可能人口は減り始める予定だ。

 1961年から79年まで、朴正熙大統領(当時)の施政時代、韓国は貧しい開発途上国で、政府が経済を統制していた。朴正熙大統領は、乏しい資源を各産業に投入し、韓国の輸出志向経済の礎を築いた。

 政府は現在、当時のような権威主義的な経済体制を敷いていないが、他の先進国でみられる以上に権威主義的ではある。

 韓国の規制は他の先進国に比べて、企業に対する自由放任度がはるかに小さく、政府は大半の市場部門を支配するコングロマリット(財閥、複合企業)のために競争を封印していると広くみなされている。

 当選以来の朴槿恵氏の言動をみると、政府の役割に関する同氏の考え方についてまちまちなシグナルが出されている。

 政府は経済問題への介入を控えるべきだと同氏が考えていることを示す兆候として、同氏と側近は経済成長目標の設定を避けた。これまで歴代大統領は、父親の正熙氏から退任する李明博氏に至るまで、経済目標を設定していたのと対照的だ。

 野村インターナショナル(香港)のエコノミスト、クオン・ヨンソン氏は「李明博氏は恐らく旧スタイルの成長モデルを掲げる最後の大統領だ」と述べた。

 クオン氏は、もしそうであれば、朴新政権はグローバルトレンドの仲間入りすることになると言う。クオン氏は「2008年の世界金融危機の後、多数の国が極めて高い経済成長の恩恵は極めて少数の人々に集中したと自覚したため、これら諸国は高度成長を力説しなくなっている」と語った。

 しかし、朴氏が政府と企業の密接な協力を望んでいる兆候としては、同氏が貿易問題と通商条約の掌握権限を外交通商省から15年ぶりに産業省に戻したことが挙げられる。

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