「黒田新日銀総裁」を市場は歓迎、円安批判抑える国際手腕に期待

2013年 02月 25日 14:11 JST
 
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[東京 25日 ロイター] アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁が次期日銀総裁に就任するとの観測が強まり、円安・株高・債券高の「安倍相場」が再び進行している。同氏持論の大胆な金融緩和が歓迎されている格好だ。

海外は円安誘導策に神経質になっており、黒田氏の豊富な国際金融人脈と経験を活かし、海外からの円安批判を抑える手腕に期待が高まっている。ただあくまで期待先行の動きであり、売買一巡後、東京市場は一服気味だ。

<日米欧のコントラスト>

金融政策の方向性に関し、日本と欧米とのコントラストが際立つ可能性が強まってきた。欧州中央銀行(ECB)が期間3年流動性供給オペ(LTRO)の早期返済を受け入れる一方、FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録では早期の緩和縮小を視野に入れるメンバーが多かったことが判明。26─27日のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言では、QE3(量的緩和第三弾)に対するスタンスに変化があるか、注目が集まっている。景気回復がシナリオ通りに進むという前提付きだが、市場としても「出口戦略を徐々に意識せざるを得なくなってくる」(邦銀)状況だ。

一方、政府が次期日銀総裁にを起用する方針を固めたと複数のメディアで報じられた黒田ADB総裁は、大胆な金融緩和が持論だ。同氏は、今月11日、ロイターなどの記者団に対して、「日本国内に日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」として金融緩和の手段は豊富にあるとの持論をあらためて強調している。副総裁候補に挙がっている学習院大学の岩田規久男氏も「リフレ派」の代表的な経済学者だ。観測報道について市場では「安倍晋三首相の意向を汲んだ強力な金融緩和路線を想起させる人事だ」(岡三証券の債券シニア・ストラテジスト、鈴木誠氏)との受け止めが多い。

国債など資産を大量に購入する金融緩和策は、あくまで日本のデフレを解消するためであると主張しても、欧米が「出口」方向に舵を切るかもしれないと市場がみているなかで、日本だけが大規模な金融緩和を実施すれば、想定以上に円安が進む可能性がある。一方、円安が急速に進めば、海外からの批判が強まる可能性があるが、海外の視線を気にして金融緩和が小規模にとどまれば、市場や国民の「デフレマインド」を変えることは難しい。大胆な金融緩和によるデフレ脱却と同時に、国際社会への丁寧な説明が求められる中で、市場では黒田氏の豊富な国際経験と人脈に期待している。

三菱東京UFJ銀行シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は「副総裁候補として名前の挙がっている中曽宏日銀理事も国際金融界で尊敬を集めており、黒田氏とともに日本の金融緩和政策を国際社会にうまく説明していくことが期待される」と話している。

<国債買い入れ増額でも効果ありとの見方>   続く...

 
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