• 編集部よりお知らせ  
  •   雑誌・ニューズウィーク日本版、毎週火曜日発売になりました。 *一部地域では異なる場合があります

最新ニュース

ビジネス

政府が日銀総裁に黒田氏の起用を固める、参院野党の対応が焦点

2013年02月25日(月)19時23分

Bookmark:

[東京 25日 ロイター] 政府は25日、次期日銀総裁に黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁を、副総裁に岩田規久男・学習院大教授と中曽宏・日銀理事(国際関係統括)を起用する方針を固めた。

安倍政権が掲げる大胆な金融政策を具現化するため、金融緩和に積極的で、元財務官として世界の金融界に人脈を持つ黒田氏に白羽の矢を立てた。副総裁にリフレ派の論客として知られる岩田氏を充てることで、金融政策の「レジームチェンジ(体制転換)」(安倍晋三首相)を印象づけた格好だ。政府は週内にも人事案を国会に正式に提示する方針で、焦点は参院で拒否権を握る民主党など野党の対応に移った。

<参院で拒否権握る野党、民主の対応が焦点>

白川方明日銀総裁は、3月19日の2人の副総裁の任期満了に合わせて前倒しで退任する意向を表明しており、国会の手続きが順調に進めば同20日から新体制が発足する。

ただ、衆参両院の同意が必要な日銀正副総裁人事では、参院で過半数を占める野党が事実上の拒否権を握る。現在、自公両党で過半数に16議席届かない。特に院内第一会派を形成する民主党の対応が最大の焦点となる。同党は財務省出身者を事実上容認する姿勢を示しているが、現段階で態度を明確にしていない。今のところ、財務省出身でも主計畑ではなく、主に国際金融を経験してきた黒田氏に好意的な向き多いが、岩田氏に対してはリフレ政策の効果を疑問視する声もあり、不透明感も漂う。候補者の適格性に基づいて、「賛否は一人ひとり判断する」(細野豪志幹事長)方針だ。

<みんなの党は黒田・中曽氏に反対>

一方、参院で12議席を持つみんなの党は、岩田氏を総裁候補に挙げるなど高く評価している。しかし、黒田氏は財務省出身を理由に反対する方向で、現日銀理事の中曽氏についても、「日銀は今までデフレと戦う姿勢がなかった」として否定的。こうした野党の思惑も複雑に絡み合う中、新体制の円滑なスタートに支障が出ないよう、政府・与党は「全力で(野党の)理解を求める」(菅義偉官房長官)考えだ。

<黒田氏人選、国会情勢も後押し>

総裁人事をめぐっては、前日銀副総裁で財務次官も務めた武藤敏郎・大和総研理事長や岩田一政日本経済センター理事長も有力候補に挙がっていた。武藤氏は2008年の日銀総裁人事で財務省出身であることを理由に否決されており、今回は「政治主導による大胆な改革」イメージが後退することを懸念した政権側の意向として、日銀に批判的で緩和に積極的な黒田氏を次期総裁とする方向が固まった。また、みんなの党が財務省OBに反対する姿勢を明確にする中、主計畑の武藤氏で民主党がまとまれるとの確信が得られなったことも、黒田氏への流れを支援したとみられる。

岩田一政氏は日銀による外債購入が持論だが、先にモスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において日本の通貨安政策がけん制される中、就任に否定的な見方が政府内でも強まっていた。

黒田氏が日銀総裁となる場合、ADB総裁を任期途中で退任することになるが、日本は中国など他国と後任ポストを争う可能性が出てくる。

<限界設けない金融政策を主張、市場も熟知>

黒田氏は、1月に都内で行われた景気討論会で、日銀の金融政策運営について「2%の明確な物価目標を掲げ、あらゆる手段で限界を設けずやるべき」と発言。昨年のIMF世銀総会の際のインタビューでは、金融政策の手段として「国債からインデックス債、株式など山のようにある」と指摘。一段の金融緩和を求めていた。

また、元財務官として為替を中心に市場を熟知していることも「市場との対話」が重要となる日銀総裁の条件に合致する。ADB総裁を務めたことなどから、世界への政策発信力も期待される。甘利明経済再生担当相は25日朝、記者団に対し、安倍首相から候補者名は聞いていないとしながら、「仮に黒田さんならば、総理自身が諸々の課題をいろいろと勘案して選んだとものと思っている。国際的な金融のインナーサークルの人であることは間違いない」と語った。

日銀総裁ポストは1969年から30年近くにわたり日銀と大蔵省出身者がたすき掛けで担ってきたが、日銀の独立性を高めた1998年の新日銀法施行以降は、3代続けて日銀出身者が就いてきた。

(ロイターニュース 吉川裕子 伊藤純夫 基太村真司;編集 久保信博、吉瀬邦彦)

*情報を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2009 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

 

Bookmark:

ページトップへ

本誌紹介 最新号

2013.3. 4号(2/25発売)

特集:世界をダメにするオバマの無気力外交

2013.3. 4号(2/25発売)

北朝鮮の核問題を悪化させ、中東問題も放置──
なぜアメリカ外交はこれほど消極的になったのか

東アジア 二枚舌オバマの無気力外交

転換 米外交が中東をダメにした

倫理 ノーベル賞大統領は無人機で民間人を殺す

視点 強権オバマをあがめる危うさ

雑誌を購入   デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

AD SPACE

Photo

世界報道写真コンテスト 「ガザの葬列」が大賞に

2013.02.16 : 2月15日、世界報道写真(World Press Photo)…

Picture Power
詳しく見る

MAGAZINE

特集:世界をダメにするオバマの無気力外交

2013-3・ 4号(2/25発売)

北朝鮮の核問題を悪化させ、中東問題も放置──
なぜアメリカ外交はこれほど消極的になったのか

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版
ニューズウィーク日本版  特別試写会ご招待
年間予約購読
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

特集

特集一覧

WEEKLY RANKING

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース

HEADLINES ARCHIVE-Business

  • 2013年2月24日 - 2013年3月 2日
  • 2013年2月17日 - 2013年2月23日
  • 2013年2月10日 - 2013年2月16日
  • 2013年2月 3日 - 2013年2月 9日
  • 2013年1月27日 - 2013年2月 2日