エルディア共和国
注意書き
- EVE burst errorのストーリーの根幹とも言うべき国、エルディア共和国についてのページです
- 当然激しくネタバレしておりますのでくれぐれもご注意下さい。今のところ暫定version。改訂予定
エルディア共和国概要
まずは基礎データを日本政府のDBMSから転載。
アラビア半島の南西部に位置する開発途上国家。イスラム守護国としてその戒律には厳しく、西洋文化の流入を拒み続ける。 君主共和制をとってきたが、昨年国王が死去、同時に、国連加盟と文化改革が起こり、イスラム圏でありながら リベラルな国風と西洋文化の混在が注目を浴びている。鉱物と観光が主な収入源。
地図をご覧頂きたいのだが、アラビア半島の南西部には、サウジアラビアとイエメンがある。 エルディアは、そのあたりにある小国、といったところだろう。
拙作『EVE -the eternal smile-』では、サウジアラビアとイエメンに挟まれている、という設定にしてある。 プリシアが言う砂漠の海というのは紅海のことだと思われる。紅海を北上すればスエズ運河を挟んで地中海へ、 南へ向かえばバブ・エル・マンデブ海峡(アラビア語で涙の門、という意味の言葉が語源)を挟んでアラビア海へと通じている。 お隣のサウジアラビアにはイスラム教徒の聖地、メッカがある。エルディアにもイスラム教徒が多いのは当たり前だろう。
国の母国語はアラビア語。続編ではなぜか「エルディア語」なる言語があり、 「コジ=ロー」とは馬糞という意味だというエピソードがあったが、間違いである。
エルディア人と、国内の勢力関係
国内には対立があった。王権派と反王権派である。ひとまず各キャラクターごとに見ていこう。御堂
王権派。表向きは真弥子を擁立し王政に反対しているように見える。前国王の治世復活を望む、前国王第一のしもべ。
ディーブ
御堂の部下であることから王権派かと思われるが、
御堂とは確執があり最終的に殺害されているので、金や権力で左右される人物だったと考えられる。つまり思想は柔軟だったかもしれない。
アクア
反王権派。自らの生い立ちから、王家に対して憎しみを抱いており、王政を打破するために首相にまでのぼりつめた。
彼女の目的はプリシア即位の回避であり、そのために対立候補である真弥子を擁する御堂と手を組んだ。
真弥子=前国王であることを彼女は知っていたが、プリシアと真弥子を天秤にかけた結果、真弥子を選んだのだろうか。
プリシアの真意を戴冠式直前まで知らなかったせいもあるだろう。
桂木
かつては御堂と同じく前国王を崇拝していた。Cプロジェクトによって前国王を生き存えさせることを発案したのも桂木である。
だが何らかの出来事がきっかけとなり、彼はエルディアから、情報部から逃亡。
その後は桂木探偵事務所を開くことになるが、最終的には自らの犯した罪を償うために事件に身を投じる。
シリア
プリシアの侍女というか護衛を務めているので、彼女と同じく、王家に身を寄せながらも反王権派であると言えそうだ。
プリシア
女王となる身でありながら、王政には否定的。自分が王座についた後は、やるべきことを済ませた後は王政を廃止する、と言う。
ストールマン
王権派。と言っても御堂と違い、プリシアを擁立する。ほとんど何も喋らずに死んだので、彼の考えは不明だが、
プリシアを愛し、敬愛していたかどうかについては怪しい。プリシアが権力を手に入れることによって
自分にも利益がある、と考えていたかもしれない。
ドールマン
ただの科学者なので政治的対立とは無縁だったと思われるが、Cプロジェクトを進め、前国王の記憶を移植したわけだから、
御堂と同じ陣営にカテゴライズして大きく間違ってはいないはずである。
エルディア前国王
断片的にしか語られていない謎の人物。性別は男だと分かっている。与えられた情報から総合すると、サダム・フセインを彷彿させる独裁者で、恐怖政治による弾圧を行っていた。
そしてクーデターが起こる寸前まで民衆を追い詰めたが突然病死……エルディアは間一髪で民主化、
文化改革の道を歩み始める……というのが表向きの構図で、実際には病死ではない。
《テラー》によって暗殺されたのだというが、前国王を殺害したのは、どうやら前国王自身である。
すなわちμ-101に移植された、「新しい前国王」が、不必要になった、老いた自分自身を処断したということである。
御堂がそう言ったが物的証拠は何もないのでもちろん推理、というか想像でしかないが、
いちおう筋書きとしてはそういった感じ。
ラシャール卿と国璽、それを巡る争いについて
国璽というのは、条約締結などの重大な決め事に用いられる、国のハンコである。エルディアにおいては、国璽を持つ者が王位を継承する権利を有する……というしきたりがある。
ゆえに国璽を巡って、血で血を洗う争いが繰り返されてきたという。
現在使われている国璽を作成したのは、印象派の影響を強く受けた芸術家、ラストマ=グルリタ=ラシャール卿という人物である。
十九世紀に生きた人物というから、百年ほど昔に既に死んでいるわけだ。
「卿」とわざわざついていることから、王族と関係の深い貴族だったのではないかと想像できる。
自分の首をナイフで切り裂いて絶命、という壮絶な死に様が伝わっているが、これについては殺人の可能性も否定できない。
ラシャール卿は死に際に呪いのような言葉を残しており、それは、
「我に触れし者よ、その罪は深く、神刃によって地獄の業火に焼かれん」
というものである。絶命寸前に自分の血で作品の裏に書き殴った、と伝えられている。
些細なことかもしれないが、二階堂やディーブの事例を見るまでもなく、首をバッサリとやればほぼ即死である。
そんな長い文章を書き残せるほどの力が残っているかどうかは甚だ疑問である。
すなわちラシャール卿は国璽を巡る争いに巻き込まれて殺害されたのだという推理も成り立つ。
何百年も昔の海賊が、財宝を隠すための穴を部下に掘らせ、
完成したあとは秘密を守るために働いた者たちを皆殺しにした、などという話はよくあるが、
似通った状況ではないだろうか。
さて。
国璽はその後も様々な人間の血を吸ってきただろうと推測されるが、とにかくバーストエラーにおいての国璽の行方を追ってみよう。
国璽は、シルクスクリーン版画の原版である。それを用いた絵画もあるが、芸術品ではない。
かたちとしては長方形で、板チョコを想像すれば良い。
真ん中で二つに割られており、二つとも揃っていないと意味が無い。
最初、それを持っていたのはストールマン=孔であった。
ストールマンは王権派で、戴冠式においてはプリシアを王座につけるために国璽を用意した。
それ以前の国璽については全くの不明である。
ストールマンは王家に仕える家柄の人間であったので、国璽を持ち出すことができたのかもしれない。
念のためにイミテーションを作成しようとしたそうだが結局失敗に終わっている。
彼自身が敵対勢力に囚われてしまったからだ。
二つに割られた国璽のうち一方は、ストールマンの自宅、応接室の戸棚の中に隠された。
旧情報部に捕まったストールマンは国璽の隠し場所を問われるが答えなかった。
それを探すためにディーブは私立探偵を雇う。小次郎が事件に関わったきっかけである。
小次郎は依頼された絵画を見事に見つけ出す。
ディーブの依頼は絵画を見つけることのみで、戸棚の引き出しには原版も一緒に入っていたのだが、
それはその場にいた二階堂が盗み取る。
二階堂はディーブから依頼を受け、同時に御堂からも依頼されて原版を手に入れた。
高く買い取る方に売り飛ばすつもりだったのだが結局殺害される。
二階堂が奪った原版はその後茜の手に渡る。茜はそれをカメラのフィルムをおさめるスペースに隠し、持ち歩き、
事態が血生臭くなってきた頃、恐くなったのだろうか、そのカメラを小次郎に託すつもりだったのか、
小次郎の事務所に置いていく。その時点では小次郎はカメラの中の原版に気付いていなかった。
茜はディーブに捕まって拷問を受け、原版の在処を喋る。それに基づいてディーブは小次郎を呼び出し、
そのスキに事務所の中からカメラを奪い、原版を奪取する。
原版の片割れはそうしてディーブが手に入れたが、その後、御堂と話し合うために出かけたホテルで襲撃を受けて
護衛を殺害される。そしてトリスタンへ向かったディーブは裏切りが原因なのか、殺害されて結局原版は御堂の手に。
そして真弥子が手に入れることになる。
もう片方はストールマンの仕事場、外国人学校のディレクタールームにある本棚の中に。
ストールマンはディーブに捕まった際、こちらの原版は仕事場の本棚に隠したことを吐くが、
ディーブが探しに来た時には既になくなっていた。
まりながFAXで呼び出しを受けて外国人学校を訪れ、シリアと対決した際、桂木がディレクタールームで怪しげな行動を取っていたが、
おそらくその際に桂木は原版を手に入れていたと思われる。
ストールマンは原版が見つかってしまう可能性を考慮して桂木にそれを回収するようにと頼んでいたのだと思われる。
本棚の原版はその後ずっと桂木が持っており、彼が、ディーブに囚われた小次郎を助け出した際、原版を小次郎に託す。
小次郎はそれをプリシアに渡すつもりでトリスタン号へと向かうが、
隠し持っていた原版を真弥子に見つけられてしまい、奪われる。
真弥子は自分が取ったことを告白し、小次郎はどうするつもりだ、と聞くが真弥子は分からないと言う。
戴冠式では真弥子が、二つに割られた国璽の両方を持っていたが、最終的に彼女はそれをプリシアに渡して、
プリシアが新たな女王となる。
旧エルディア情報部および《テラー》について
アメリカでいえばCIAやシークレットサービス、といったところだろうか。エルディアにおいて他国の情報を収集したり防諜をしたりといった機関だったと推測できる。
そしてエルディアが、石油も産出しない弱い国であるエルディアが発言権を有するようになったのは
情報部の働きによるものが大きい。
情報部には特別部隊が存在し、暗殺をも任務としていた。
《テラー》とは情報部の、実行部隊の別名である、というのが真相である。
すなわち中東、東ヨーロッパにおいて要人を次々と暗殺していた殺し屋《テラー》の正体は、
旧エルディア情報部だったということになる。
エルディアが国際的な確固たる地位を獲得できたのは、邪魔になる者を自前の暗殺で消していたから、ということになる。
EVE burst errorにおいては、エルディア情報部は既に解体されている。
アクア=スティル=ロイド首相の行う改革の一環として、科学局と同じように解体されたとされているが、
その後も情報部は非公式に存在し続け、ゲーム中にもその残党が登場している。
ロス=御堂は情報部の部長であり、国防や戦略外交のトップに立っていた人物だと言える。
ディーブは情報部次長、すなわち御堂の下で働くナンバー2。
桂木は実行部隊の隊長……すなわち暗殺の実行犯だった。
シリアもまた情報部に身を置き、「特務第三班」に所属していた、という。どういった部署であったかは不明。
真弥子襲撃の工作についても情報部の残党、おそらく御堂の部下が使われていた。
外国人学校で真弥子を誘拐しようとしたチンピラ二人組は金で雇われた素人だったようだが、
作戦を指示したのは御堂本人かもしくは情報部員である。
まりなと真弥子が滞在しているホテルを襲撃したが、それら全ての行動は要人を狙うテロリズムではなく、
御堂の指示によるアジテート、世論形成のための「やらせ」であった可能性が高い。
ということは、極論すれば、まりなが撃ち殺した工作員たちには真弥子に対する殺意はなく、
いわば無駄死にだったと言うことができる。
もちろんこれには証拠がなく、御堂の指示、意図とは別に工作員達が動き、真弥子を抹殺しようとしていた可能性も否定することはできない。
旧エルディア科学局、Cプロジェクトとμ-101
Cプロジェクトを開発した政府機関。判明しているのは、その局長はストールマンの父親であるドールマン=孔であったということくらいである。
先進国の支援金を湯水のように使い、様々な薬品などの研究開発を進めていた。
そのうちの一つに、催眠をかける薬品がある。
これは投与すれば、元からある人格に、擬似的に別の人格をかぶせ、一時的に完全な別人になれるというもの。
作中ではプリシアがこれを飲み、プリンとなってプリシアの存在を隠していた。
そのあたりの矛盾というか曖昧なことについては別項にて記す予定。
「月は満ち、オアシスは潤い、砂漠には緑が戻る」という詩の一節を耳で聞くことがスイッチとなって、
プリシアは元の人格を取り戻す、という暗示が掛けられていた。
この薬品は誰にでも効果があるために非常に危険なものである、と言われている。
それを応用し、自白剤として情報部は使用していた、というエピソードもある。
小次郎はディーブに拷問を受け、実際にこの薬品を、通常より大幅に高い濃度で投与される。
そのまま放置していたら数時間で発狂死に至るという危険な状態だったが桂木が解毒剤を持っていたために九死に一生を得る。
が、小次郎は薬が体内から抜けるまで地獄のような副作用に一晩中苦しみ、死者の幻影や、その呪詛に悩まされる。
それに耐え抜いて、小次郎はトリスタンを目指すわけだが。
さて、そんな薬品など子供だましに過ぎないのだ、と言わんばかりの、科学局最大の成果が、
すなわちCプロジェクトであり、その研究の結晶μ-101である。
Cプロジェクトとは、一言で言えば永遠の命を追求するためのものである。
人間の肉体は時と共に朽ち果てて、寿命を迎えてしまう。
しかしその記憶、意識だけならずっと保存できないだろうか……。
どういった試行錯誤があったかは謎に包まれているが、ドールマンが下した結論は
人間を一から作り、そこに記憶を移植するというものであった。
記憶の保存方法についても不明であるが、確か続編のロストワンでは液体の中に記憶が含まれているとかいう内容だった気がする。
かくしていわゆるクローン人間が生まれるのだが、受精によって胎児を生み出す正攻法的な技術ではなく、
人間のDNAを元に特殊な培養液の中で生成した、有機ヒューマノイド……すなわち人造人間である。
そしてそれには識別コードとしてμ-101という番号が割り振られた。
核となる遺伝情報にはプリシアのものが使われた。DNAは髪の毛にも含まれており、それを入手することは容易かっただろう。
急速に試験管の中で成長するμ-101。そこに、あらかじめ保存してあった前国王の記憶を移植し、Cプロジェクトは完成した。
前国王の意識が眠っている間に発現する「御堂真弥子」という人格は、おそらくは計画にはなかったのではないだろうか。
計画の成功を望んだ者たち全てが必要としていたものは、新しく健康な肉体に宿る前国王の意志と記憶であり、
真弥子という女の子は計算外であったに違いない。
とはいえ、わざわざその別人格に真弥子という名前をつけたり、アクアが過ごしてきた人生の一部を本人に起こったことだと認識させたり、
どう考えても彼らの目的成就のためには不必要な行動を、御堂やアクアたちはとっている。
そこに唯一、狂気の代名詞とも言えるCプロジェクトとエルディア旧科学局の中に、希望というか、救いを見いだせるような気がする。