【ジャンプ】沙羅、男子より飛んだ！混合団体で日本初金

　◆ノルディックスキー　世界選手権第５日（２４日、イタリア・バルディフィエメ）　初採用のジャンプ混合団体がノーマルヒル（ＨＳ１０６メートル、Ｋ点９５メートル）で行われ日本が今大会初の金メダルを獲得した。男女各２人のチーム戦でジャンプ女子で銀メダルの高梨沙羅（１６）＝グレースマウンテン・インターナショナル＝が２回目に男女通じて最長不倒の１０６・５メートルを飛び存在感を示した。伊藤有希（１８）＝下川商高＝、伊東大貴（２７）＝雪印メグミルク＝、竹内択（２５）＝北野建設＝も安定したジャンプを見せ、総合力の高さを証明した。

　世界選手権で初めて実施された男女参加の混合でも主役の座は１６歳の少女が奪った。各国４選手が２本ずつ飛んで合計得点を競う。高梨は２回目で、女子だけでなく男子選手の誰よりも遠くへ飛んだ。ただ一人ヒルサイズを越える１０６・５メートルの最長不倒。このジャンプで日本は竹内を残し優勝をほぼ手中に収めた。

　「ここでの最後のジャンプだったので、いい形で締めくくりたかった。やっと一番欲しかったメダルがもらえた」と金メダルに笑顔がはじけた。今季はＷ杯８勝を挙げ、総合Ｖに輝いたがいつも団体戦への魅力を語ってきた。勝てば、チーム全員で喜びを分かち合える。金メダルの瞬間は４人で抱き合って歓喜した。

　高梨にとってまたひとつ伝説となる記録だ。今回の混合では体重で劣る女子は助走スピードを出すために男子よりも高い位置からスタートする。一般的に１段約５０センチと設定されるスタートゲートは今回、高梨と男子選手で１０段約５メートルの差があった。時速１キロの差で飛距離が５メートル違うといわれる助走スピードでも、高梨は男子選手とは約２〜３キロ速かった。そのため、飛距離で単純に比較はできない。ただ、記録上で男子を超えた最長不倒に変わりはない。

　２年前の中学２年時にＨＢＣ杯ジャンプで１４１メートルを飛び、札幌大倉山の女子最長記録を樹立。ベテランの葛西紀明（４０）＝土屋ホーム＝を「１４０メートルを越えるのは完璧なジャンプと風、着地の勇気がないと立つことができない。ホントにすごい」とうならせた。昨年は山形蔵王でのＷ杯で女子最長記録の１０２・５メートルをマーク。男子のバッケンレコードとタイ記録を残すなど男超えの伝説は、今回だけではなかった。

　この日は２回とも１００メートル越えで、世界選手権女子金のサラ・ヘンドリクソン（米国）や男子Ｗ杯最多４８勝のシュリーレンツァウアー（オーストリア）も上回る１位の成績。「ジャンプが良くてなおさらよかった。日本の力で取ったメダル」と高梨。混合団体は五輪種目ではないが、日本の今大会初の金は、チームの総合力と高梨の能力を世界に見せる結果となった。

　◆高梨　沙羅（たかなし・さら）１９９６年１０月８日、北海道・上川町生まれ。１６歳。１１年世界選手権６位。今季のＷ杯は８勝し、総合Ｖが決定。父・寛也さんはジャンプの元選手で、兄・寛大（かんた、明大２年）は現役選手。１５２センチ、４５キロ。

　◆伊藤　有希（いとう・ゆうき）１９９４年５月１０日、北海道生まれ。１８歳。父の克彦氏が指導する下川少年団で上達し、１２歳の０７年にコンチネンタル杯３位。Ｗ杯は８位が最高。北海道・下川商高から今春、土屋ホームに入る。１６１センチ、４７キロ。

　◆竹内　択（たけうち・たく）１９８７年５月２０日、長野県生まれ。２５歳。長野・飯山一中卒業後、フィンランドに留学して成長。１０年バンクーバー五輪団体５位。１１年世界選手権団体５位。今季のＷ杯で２位など、Ｗ杯表彰台は２度。１７５センチ、６０キロ。

　◆伊東　大貴（いとう・だいき）１９８５年１２月２７日、北海道生まれ。２７歳。五輪は０６年トリノ大会団体６位、１０年バンクーバー大会ノーマルヒル１５位、団体５位。世界選手権０７、０９年団体銅。昨季はＷ杯４勝で総合４位。１７３センチ、５９キロ。