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【コラム】

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 「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信を持って宣言したい」。初めてオバマ米大統領と会談した安倍晋三首相の記者会見の姿からは、首脳会談を成功させたという高揚感がにじんだ▼焦点の環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加は「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」とする共同声明を発表した。その内実は「聖域」を米国から勝ち取ったと見せかける演出らしい▼首相は交渉参加を近く表明するが、農業団体を有力な票田とする自民党内は、慎重意見が大勢を占める。参院選を前に「参加は農業を守れない」という合唱をどう説得するのか、道のりは平たんではない▼日米両首脳は、沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設を早期に進めることを確認、安倍首相は歴代首相で初めて集団的自衛権の行使に向けて検討を始めたことも説明した▼首相は、野田前政権が打ち出した「二〇三〇年代に原発稼働ゼロ」を目指す戦略をゼロベースで見直すことも伝えている。脱原発を求める広範な世論には耳を貸さず、原発維持路線をあらためて鮮明にした▼「絆」は本来、犬や馬などの動物をつなぎとめる綱のことだった。束縛などの意味が生じ、強い結びつきという使い方は比較的新しいという。首相が絆を強調するほど、本来の意味を思い浮かべてしまう。

 

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