党内不和？埋没危惧？　橋下共同代表、日銀総裁人事にクレームも維新は賛意伝える

　日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長（４３）は２５日、政府がこの日決めた次期日銀人事案で、黒田東彦アジア開発銀行総裁（６８）を日銀総裁に起用することに対して批判した。黒田氏が財務省出身であることが理由。橋下氏はここのところ、安倍晋三首相（５８）の環太平洋経済提携協定（ＴＰＰ）交渉参加への政治的プロセスを評価するなど、与党との蜜月ムードも漂わせていたが、今夏の参院選をにらみ、ようやく反旗を翻した形だ。

　「まずは財務省ＯＢじゃない人から探るべきという思いがあります」。日本維新の会の橋下共同代表が、財務省ＯＢの黒田氏を起用する方針を固めた安倍政権の次期日銀総裁人事に、けん制球を投げた。

　これまでほとんどなかった橋下氏による安倍政権への“口撃”。２３日には、ＴＰＰ交渉での関税撤廃の例外を容認した日米首脳会談に関し、「党内の議員をまとめていく手続きを一つずつ着実に進めている。ものすごく政治的な手腕がある」と首相を評価したばかり。憲法改正論議でも、改憲発議に衆参総議員の３分の２以上の賛成が必要で、国民投票で過半数の賛成が必要と定めている「９６条」を改正し、改憲へのハードルを下げる方向性で一致するなど、安倍首相との“蜜月関係”が続いていたが、ようやく“らしさ”を発揮した。

　橋下氏はさらに「維新の哲学は人材の多様性と移動性」とアピール。日銀総裁人事への財務省ＯＢ起用に否定的な理由について「長い間、勤めた人は（出身）組織の価値観にしばられる」と懸念を示した。意見はすでにメールで維新の国会議員団に伝えており、黒田氏起用の前に「民間の人材を探るプロセスをとるべき」と強調。このような自らの意向も踏まえた上で「（国会での同意については）国会議員団に議論してもらう」とした。

　ところが、維新の小沢鋭仁国対委員長は、黒田氏の総裁起用について「ベストな人事だ」と自民党側に賛意を伝えるなど、党内不和が露呈した。黒田氏起用に強硬に反対し、この日も岩田喜久男学習院大教授（７０）の副総裁起用のみ賛意を示したみんなの党の渡辺喜美代表（６０）については、「みんなの党は哲学が出てると思いますよ」と対応を評価した橋下氏。一方で「維新の哲学が出るような振る舞いをしないと、有権者に愛想をつかされる」と党内への危機感も口にした。

　橋下氏は「財務省ＯＢだからといって全否定するわけではない」とも述べており、安倍首相への配慮をにじませた。安定した政権運営が国民に評価されつつある安倍首相とあって、維新が埋没しないように橋下氏も必死のようだ。

（2013年2月26日06時03分スポーツ報知）