携帯電話はどのような流れで販売されるのか。
量販店や併売店、専売店は何が違うのか――。
携帯電話の販売に携わったことのある人には
常識的な内容だろうが、そうでない人には、
何となく分かっているようで明確に答えることは
難しいと思う。今回は、携帯電話を販売している
店舗の形態や代理店について紹介する。
量販店、専売店、併売店の違いは?
――携帯ショップのカギを握る「代理店」
「ケータイショップ」と一言で言っても、さまざまな店舗が存在します。
今回は携帯電話販売の仕組みや販売形態など、一般のユーザーが
あまり見る機会の少ない部分を紹介していきたいと思います。これから
販売員を目指す方や代理店事業をやってみようと思う方にとって参考
になれば幸いです。
携帯電話を販売するには代理店契約が必要
まずは代理店について。携帯電話を販売するには、まず代理店契約
を行わないといけません。代理店には契約相手によって種類(ランクの
ようなもの)があります。通信事業者であるキャリアと直接代理店契約を
交わした代理店を一次代理店(以下、一次店)、その一次店と代理店契約
を交わした代理店を二次代理店(以下、二次店)、同様に二次店と契約した
代理店を三次代理店(以下、三次店)、それ以下は四次店、五次店となります。
いずれの場合も携帯電話の販売(契約の取り次ぎ業務)を行う契約が交わ
された後に「代理店コード(販売店コード)」が発行され、どこの店舗で販売
されているかをキャリア側でも把握できるようになっています。
一次店であればキャリアとの直接契約になるので、キャリアからの支援金や
インセンティブなどがキャリアから直接支払われます。交渉もできますが、それ
以降の二次店、三次店となると契約した代理店との条件になるため、条件面の
バラつきもあり、二次、三次、四次……となるにつれ、どんどんと厳しい条件に
なっていきます。
具体的にどういった面で条件が厳しくなるかというと、顧客管理システムを
導入することができず、また在庫が不充分などの理由で、その場での契約や
機種変更処理にすぐに対応できないなどです。もちろんインセンティブ(平たく
言うと“もうけ”)も少なく、もっと細かい話をすると、モックアップも十分に手に
入らなかったりします。機種によってはモックがない場合もあります。また、
二次店以降はキャリアではなく代理店との契約になるので、一次店に比べ、
直接キャリアとやり取りをする機会が少なくなり、こちらも二次、三次……と
なるにつれどんどん減っていきます。そのため、特殊な例を除き、四次店
以降の契約は“ビジネスとしてのうまみ”がほとんどありません。
代理店契約は“どこと行うか”で、その事業や店舗の立ち位置が変わって
くる重要なポイントです。条件面を考えるとキャリアと直接代理店契約を交わ
すことがベターです。しかし、携帯電話がまだ普及していない時期はキャリア
と直接契約を交わすこともできましたが、成長期を経て現在は市場が飽和
状態といわれており、ケータイショップ自体も多く存在します。
そんな状況下でキャリア自体は新たな代理店を必要としておらず、むしろ
コスト削減のためにも代理店はある程度淘汰されていくのが現状です。加え
て、一次店契約をするためには膨大な保証金が必要となります。必要とする
金額や保証金制度を設けているかどうかはキャリアによって異なりますが、
キャリアが新たな代理店を必要としていない状況では、保証金ももちろん
高額になるわけです。そのため、何年も前からではありますが、一次店に
なるのは狭き門であり、そこまでリスクを負ってまで新たに代理店契約を
して事業を始めるのは豊富な資金力がある限られた企業のみとなります。
上記までの代理店については企業として携帯電話を販売するための
第一歩ですが、その契約を元に販売店(ショップ)を運営した場合、販売する
商材や店舗の規模によって量販店、専売店、併売店の3つに分類されます。
- 量販店
いわゆる“大型の家電量販店”を指します。量販店の中にも「ヤマダ電機」
や「コジマ」などの家電系量販店とイオンやマイカルといった流通系量販店
があります。また、「ビックカメラ」「ヨドバシカメラ」「さくらや」は3カメと言われ、
業界的な分類では家電量販店ではなく大手のカメラ量販店となります
(さくらやは2010年2月に閉店)。
- 専売店
一般には“キャリアショップ”と言われるもので、「ドコモショップ」「auショップ」
「ソフトバンクショップ」「ウィルコムプラザ」がこれに当たります。
「ウィルコムカウンター」は他キャリアを販売している場合もあるので、
一概に専売店とはなりません。
- 併売店
いわゆる“街のケータイショップ”です。扱っているキャリアは店舗によって
異なり、ドコモのみしか扱ってないところもあれば全キャリア取り扱っている
ところもあります。また、ドコモは三次店だけどauは一次店、ソフトバンクは
二次店といった具合に、キャリアごとに代理店契約の形態が異なり、店舗で
対応できる業務に差がある場合もあります。
量販店は集客規模が非常に大きく、ほぼすべてのキャリアを取り扱って
おり、販売台数も多いことが特徴です。ただし量販店といえどもアフター
サービスについては取り扱っていないことが多く、基本的には新規契約、
機種変更、MNP、買い増しなどが主な業務となっています。店舗の床面積も
広いので販売している商材や在庫も多く、周辺機器なども豊富に扱っています。
また、一部の量販店では店内に専売店を併設している場合もあります。
専売店はキャリアのサポートショップという位置付けでもあるので、新規契約
や機種変更、買い増しはもちろん、修理対応や料金収納などのアフターサービス
も行っています。キャリアの看板を掲げているために“キャリアの直営ショップ”と
誤解されがちですが、運営は代理店が行っているショップがほとんどです。
キャリア直営ショップも中にはありますが、数は非常に少ないです。ちなみに、
ドコモは直営ショップを展開していないため、ドコモショップはドコモの一次店
もしくは一次店を介した二次店以降の代理店が運営しているショップとなります。
併売店は量販店を小さくした感じですが、その店舗形態はさまざまで、店舗の
規模や取り扱う商品にも大きな差があります。基本的には主要キャリアは販売
しており、周辺機器なども取り扱っています。店舗によってはインターネット
プロバイダの取次ぎ業務や携帯電話に直接は関係ない商材など、幅広く扱って
いるのも特徴です。ただし、量販店に比べ集客面と人材が不足しているところ
が多く、長時間お店にお客さんがいない状況が発生したり、1人のスタッフが
全キャリアを販売したりという厳しい状況が多々発生します。
また、併売店には各キャリアの顧客管理システムなどが設置されていない
のがほぼ前提となっているため、手続きに時間がかかってしまう場合も多いです。
もちろんアフターサービスについても対応できる範囲に制限があるため専売店
への誘導が行われています。そうした意味では、量販店や専売店に比べ、一番
厳しい条件下での運営を強いられています。
専売店は“キャリアの顔”ともなるため、すでにいくつもの店舗を展開している
大手の代理店であっても、専売店より併売店のほうが出店はしやすいです。
しかし併売店の弱みはアフターサービスの範囲に限りがあるため、価格競争や
周辺機器などの取り扱い商品の面で不利になります。立地条件などを考慮した
上で出店するとともに、そのお店独自のサービスや特徴を打ち出し、いかに
地元に根付くかがポイントとなります。
私自身も代理店契約や出店業務に携わった経験がありますが、ケータイ
ショップを始めるまでには多くのステップがあり、また競争に勝っていくためには
どこの代理店になるかが重要です。二次店、三次店の場合、条件の悪い代理店
と契約してしまうと競争力が乏しくなってしまい、結局は少しでも条件のいい代理店
を探してあらためて契約する、といったことにもなりかねません。逆に一次店や
二次店の場合、店舗展開だけでなく、代理店契約をしたい企業への卸業務も
可能です。その際、下位代理店に対しての条件面やフォロー体制をしっかり
しておかないと、結局は“売れないお店”を作ってしまうことになり、継続した
収益を得られなくなります。(IT media~Professional Mobile)