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マスコミが報じない日銀の真実=高橋洋一氏

マスコミが報じない日銀の真実―次期日銀総裁候補・高橋洋一氏

2013.02.13

高橋洋一・嘉悦大学教授

一貫したリフレ派であり、次期日銀総裁候補の一人でもある高橋洋一氏に、インフレターゲットの効果、新総裁を迎える日銀のあり方、為替相場への影響などを聞いた。


2%のインフレ率は2年以内に実現可能

――2%のインフレターゲットを決めた効果は?

インフレターゲットは「期待」に働きかける政策だが、まずは市場が実質金利の低下を期待して反応する。足元の株高と円安がその動きだ。

株高で儲けた人は懐が潤ったと感じ、お金を使いだす。個人で最初にインフレ期待の恩恵を受ける層だ。株高が消費を刺激する資産効果が次第に表れる。円安で輸出が伸び、輸出企業の業績があがって懐が潤ってくる。

そのお金が巡り巡って、経済全体がじわじわ潤っていく。潤う人が多ければ多いほど、その潤いは全体に広がっていくわけだ。

――すぐに実物経済に波及する?

市場の反応が実物経済に波及するにはタイムラグがあり、たとえば円安が輸出増に貢献するまでには半年~1年かかる。株価上昇が消費に波及するには1年半くらいはかかる。

実質金利が低下すると設備投資が伸びるが、これは1年半~2年くらいかかる。これらが巡り巡って有効需要が増えるのはその後だ。

賃金はこのあたりから上がりだす。ただしこれは業種によって違いがあり、非正規雇用のほうが上昇は早く、正規雇用の人はまずボーナスが上がる。正規雇用の賃金が上がるのは最後だ。

――2%のインフレ率は可能か?

私はただ「マネタリーベースを増やせばインフレ予想が増える」と言っているだけ。経済学の理論的に言えば、インフレ予想を高めることはむずかしくない。

マネタリーベースを増やすにはお金を刷ればいいだけのこと。どれくらいお金を刷ればいいかの計算方法は、過去のマネタリーベースとインフレ期待率の相関から導き出される。概算すれば80兆円。緩く見積もって60兆円~100兆円の間。

これを1年以内にやった方がいい。そうすればタイムラグをみても2年以内に2%のインフレ率を実現できる。

あとはその通りやるかやらないかだけ。新しい日銀総裁が、安倍総理の考えをきちんと理解していれば、それでなんの問題もないことだ。

日銀が買い入れる資産は国債以外でもなんでもいい。日銀はなんでも買えばいい。ケチャップでもいい。もっともそうすると、さすがにケチャップ会社の株価が急騰するだろうが(笑)。余計な思惑が入るのはよくないので、買い入れるのは国債が無難だろう。

日銀はすでに国債の直接引き受けをしている

――日銀の国債の直接引き受けについは?

マスコミは書かないが、日銀の国債の直接引き受けは今の法律上でも認められている。今年度予算でもすでに17兆円やっているし、来年度予算でも13兆円やる予定だ。

その根拠は毎年度の予算書にも書いてある。法律上は30兆円までやってもいいことになっており、実際、私が官邸にいたころに22兆円やったことがある。それをあたかもやっていないかのように日銀が説明しているだけだ。

これをオープンに話すのは私だけだろう。私は担当者だったからよく知っている。「日銀引き受けは禁じ手」などというのは嘘で、なぜかマスコミも学者もころりとだまされる。毎年行われていることが禁じ手なはずがない。

「日銀が直接引き受けをすると政府のファイナンスをしているとみなされて、長期金利が急騰する」などと言う人は無知な人だ。私がいたころに22兆円やったときも、金利はぜんぜん反応しなかった。

インフレ率2%ならドル円は110円に

――円相場の適正水準は?

適正水準はわからない。為替操作を目的に金融政策を運営しているわけでもない。ただ、日銀が80兆円くらいの国債買い入れをして、インフレ率2%を達成したら、円は対ドルで110円くらいになるだろう。

――日銀の超過準備の付利を無くした方がよいか?

こんなものは無くした方がよいと思うが、微々たるもので、つまらない話だ。こういったつまらない話にマスコミの人は惑わされて本質を忘れる。

――民間銀行の貸し出しは増えるか?

貸し出しが増えるのはかなり後になる。3年以上はあとの話だ。銀行は景気の回復局面で収益が上がるのが一番遅れる。

最初にインフレ予想が変わるので、円相場が反応し、株価が高くなり、1年半~2年遅れて設備投資が出てくる。企業は内部留保がたくさんあるので、銀行貸し出しが必要になるまでは3年以上かかる。

――日銀法改正は必要か?

あたりまえだ。今、インフレターゲットを決めたからといって根拠がないしペナルティーもない。そんなことは海外では常識だ。

仮に新しい日銀総裁が積極的な緩和政策をとったとしても、いつまでもその人が総裁を勤めるわけでもないし、安倍総理もいつまでも総理なわけではない。次の人が何をやるかはわからない。

海外に円安を責められる筋合いはない

――日銀と政府が外債購入ファンドをつくる案は?

やってもやらなくてもどうでもいいような話だ。日銀はなんでも買えばいい。ただし、わざわざ外債を買って、為替操作の懸念を受けるのはあまり賢いやり方ではない。

――日銀も失業率を目標とすべきか?

失業率と物価の上昇率の間には相関がある。中央銀行がそれを明示するかしないかの違いだけで、物価が上昇すれば失業率は低下する。

――アメリカが為替操作だと非難し始めるリスクは?

為替操作はしていないのだからそのリスクはないだろう。ドイツのメルケル首相はけしからんと言ったが、「日本はインフレ目標2%に徹底して、国内がデフレから脱却するように努力しています。変動相場制の国だから為替は変動します。操作はしていません。その結果、自由な相場の動きによって為替レートが決まっています」と言えば終わりだ。

――次の日銀総裁はどのような人が望ましいか?

財務省筋が押している候補なら市場は失望する。リフレ派が総裁になれば、市場は好感するだろう。マスコミの人は前者が有望としているが、そうとは限らない。あとは安倍総理が決めることだからわからない。
  • マスコミが報じない日銀の真実―高橋洋一氏
    2013.02.13

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