エッセイ式資料59
22 外は陽炎つむじ風 劇舎燐公演
84年10月 三百人劇場
演出=手塚敏夫 装置=三上博 照明=小林宏次 効果=深川定次 作曲=新井ユタカ 殺陣=東郷秀信 振付=滑川芳子 舞台監督=やまねひろし
出演=森川信 佐倉徹 青柳文太郎 中坪武志 伊藤嘉章 石川利一郎 中村淳之介 宮崎義人 岡田正 佐藤雄一 西野富昭 高尾一生 宇佐見多恵子 伊倉一恵 引間貴久江 安原葉子 本多知恵子 平辻朝子 桂田祐子 横田ひろみ 大森知子
「じゃあ、内はなんなの?」と演出の手塚さんに笑われたっけ。タイトルに大した意味はない。ただ口に出してみて調子がいいな、と気にいったのだった。

出だし、百姓たちが逃散するところから始まる。
「逃散」というのは、覚えてますか? 中学か高校の日本史で勉強しましたね。江戸時代、年貢と生活に困窮して村を捨てて全員で逃げるという行動。

月明かりもない真夜中の海岸である。
百姓たちが大勢で船を待っているのだ。漁師に話をつけてあるはずなのになかなか船が来ないのだ。

緊迫したいい場面だ。
と、自分で言ってりゃ世話はないけど、この場面、実は、大阪の劇団潮流で公演した水上勉原作、わたくしの脚色した「城」という芝居の、中程のシーンの設定からいただいてる。

村を捨てて大勢で逃げようとしているのを、追いかけて止めにくる庄屋の息子がいる。いわば置いていかれるのが主人公なのだが、こっちの作品では、逃げることに嫌気がさして、別行動を取る同じ百姓の若者を主人公にした。

あとは目的のない気ままな道中記である。
とはいっても、成り行きで人を殺してしまい、大泥棒になっていくという話になったのだが。

ところで、出だしの場面は、また別の芝居で使うことになる。とても気にいってるんです。おそらく、また使うだろうなあ。

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