22 韓国の現状
1909年(皇紀372年)
史実では伊藤博文暗殺など、韓国併合に反対するための反日運動が盛んだったが、この世界ではほとんど無い。何しろ韓国は日本帝国に外交権こそ奪われど、韓王国としての存続を許されたのだから国家存亡の危機は脱したのだ。
しかし、勿論代償もあった。日本帝国は身分制などの復活や両班支配の容認、鎖国など、かつて旧日本が成し遂げてきた韓国の近代国家への道を全て破壊し、かつての李氏朝鮮王朝時代へと逆行させたのだ。
両班など支配層はかつての栄光が蘇ったとこの世の春を謳歌し、日本帝国による支配を全面的に支持する。その一方、民衆は開国や旧日本支配によって、虐げられてきた暗黒時代がようやく終わりを告げたのかと思いきや、新たな主人となった日本帝国によって再び暗黒時代へと逆行させられる事となった。
併合されるのは嫌だが、暗黒時代に逆行するのも嫌な韓国人達は現政権の打倒と日本帝国支配からの独立運動を起こそうとしたのだが、その匂いを嗅ぎ付けた警察や自衛隊に襲撃されて逮捕や処刑される。
このような事は度々あり、何故決起する前に集合場所などがバレているのかと言うと、裏切り者が政府へ密告しているためだ。
韓国には日本帝国が作らせた密告制度があり、反政府活動や反日運動など韓国政府にとって面白くない活動の情報を密告すれば、褒賞金が出る制度だ。特に決起する直前、全メンバーが集まっている会場の情報は高く売れ、場合によっては平均年収を上回る程の金額が貰える。
貧困に喘ぐ韓国で、身分に関わらずそんな大金を得られるのは密告制度しか無いため、何かしらの反対運動や活動には必ずと言って良い程密告が来る。そしてその度に反政府主義者や活動家達は逮捕、裁判など無いので即座に処刑となる。
そもそも、反政府主義者達の掲げる目標は非常に困難なのだ。
仮に、反政府運動が成功して現政権の打倒が出来たとしても、必ず駐留している日本帝国軍によって鎮圧される。更に、奇跡的に日本帝国軍の攻撃を凌いで独立を果たせようとも、韓国に手を差し伸ばす国など皆無だ。
韓国独立を承認するという事は日本帝国に対する敵対行為に他ならず、最悪戦争になれば強力な日本帝国軍と戦う事になる。日本帝国と戦争をしてまで韓国を味方する価値は無い。
よほど豊富な油田や鉱物資源が埋蔵していたり、ジブラルタルのように地政学的に重要な場所にあるならともかく、資源はあるとは言ってもそこまでの量は無く、日本帝国の目と鼻の先にある土地など危険でしかない。そんな国を巡って超大国化した日本帝国と争っても百害あって一利無し。
そもそも、日本帝国以外の列強は全て白人の国なのだから、黄色猿がどうなろうと気にもかけない。超大国化して日本帝国との戦争を望む正義(笑)の国であるアメリカだったらあり得たかも知れないが、現時点でそんな国は存在しなかった。
助けは一切無く、密告によってことごとく活動を潰されれば周りは全て敵なのではないかという疑心暗鬼に陥り、自然に反政府活動や反日運動は尻すぼみになっていく。ほとんどの主義者や活動家は諦め、やがてはかつてのように圧政を受け入れていくしかなかった。
しかしマトモに働くにしても職は無く、農業国である韓国では農家になるぐらいしかないが、その農家でさえ収穫量のほとんどを両班に取り上げられ、自分達が食べる分でさえ困るのが現状。口減らしのために働けない子供を間引く必要がある程なのだ。
その一方、儒教が強い韓国では年長者は敬わなければならず、例え1歳違うだけでもオッパ(兄)と呼んで跪き、従わなくてはならない。これは韓国のみの事であり、儒教発祥の地である中国でもここまではしない。
このように、マトモに働いても食べる事さえ困難なのだから共産主義革命が起きても全く不思議は無いのだが、それを留めているのが日本帝国が資本を出している要塞線建設や鉱山採掘だ。
キツイ労働にも関わらず賃金は一切出ないが、代わりに朝昼晩の三食を保証されていた。
1日二食や一食が当たり前の韓国人にとっては非常に魅力的な条件で、実家では食べられない日も普通にあるのにも関わらず、要塞線建設や鉱山採掘の現場なら必ず朝昼晩の三食が出るのだ。オマケにメニューは充実していて、滅多に食べられない肉や魚なども豊富で調味料も惜し気も無く使われる。
実家にいてもマトモに食べられなくて家族の負担になるよりは、賃金は無いけど三食美味い飯を食べられる要塞線建築や鉱山採掘の方が良いとして、元主義者や活動家達は群がった。
しかし、その作業現場は過酷そのもの。
万里の長城のような巨大で長大な要塞線を築くというのに、建設機械は一切無いのでひたすら重い石材を人力で運ぶ。正しく万里の長城を再現するかのように。
少しでも休めば同じ韓国人の指導員から「休むなっ!」というありがたい言葉と共に鞭を受ける。
基本的に休憩時間は昼食のみ。朝起きたら朝食を食べて直ぐに作業に入り、昼に昼食のために20分間休憩したら後は晩飯まで続けて作業は終わり。これが1日のスケジュールだ。無論、雨が降ろうが雪が降ろうがスケジュールは変わらない。
冬季に入れば一応防寒着として作業着や軍手、長靴が支給される。もし支給しなければ大多数が凍死するか逃げ出して作業が止まってしまうので、防寒着は仕方なかった。
作業員達は全員日本帝国が支給した遊牧民族のゲルのような簡易式住居で寝ている。ゲルなら直ぐに撤収出来て新たな現場へ移動出来るからだ。
このスケジュールなどは鉱山採掘でも同様で、掘削にも機械は無いので全てノミとトンカチの手作業でひたすら掘る。更には、トロッコは無いので掘り出した鉱石は木製の一輪車や籠で運搬する。鉱石は馬車で製錬所がある仁川まで運び、その後精錬は本土の工場で行う。
仁川まで軽便鉄道でも通せばずっと楽になるのだが、鉄道技術を盗まれたり、盗賊に狙われる可能性があるので馬車で鉱石を運搬する。元々採算性を考えていないのだから問題無かった。
このように、過酷な作業内容と劣悪極まりない環境なために怪我や病気が原因で死亡者は多数出ているが、脱走する者は少なく、更にはその脱走者もほとんどが戻って来る。
何故なら逃げた所で希望は無いからだ。
元々、この要塞線建設や鉱山採掘を選んだのは他に希望が無いからで、実家に帰った所で食料は無いのでむしろ家族にとっては迷惑にしかならない。食いぶちが増えればその分自分達の食事量が減るのだから。
帰った所で疎まれ、だからと言って他に仕事がある訳でも無い。必然的に要塞線建設や鉱山採掘に戻ってくるしかなかった。
韓国人の多大な犠牲の基に要塞線建設や鉱山採掘は順調に進んでいた。
もしも韓国人の人口が漢民族並みにいたなら、マンパワーによって作業機械並みの建設スピードを誇っていただろうが、残念ながら1909年の韓国人の人口は1200万人程度で、更には日本人のような真面目さは無くダラダラと作業をしているため、建設機械に比べると建設スピードは遅い。とは言っても、本当に韓国人が漢民族並みに何億といたら正しく悪夢なので、この数で問題は無い。
何しろ要塞線建設や鉱山採掘の本当の目的は少しでも韓国人の人口を減らしたいからで、要塞線や鉱石はオマケ程度でしかない。
要塞線建設や鉱山採掘の他にも、両班支配に戻した事で韓国人同士で人口を減らしていってくれている。
元々、両班とは農・工・商業に一切従事せず、儒学だけを勉強して科挙に合格すれば何の制限も無く高級官職にも昇進する事が出来る特権階級なので、馬鹿な世間知らずが多く日本帝国の代わりを果たしてくれていた。
非道とも言える程の重税を敷き、収穫物を取り上げたり商品を勝手に持ち出した挙げ句に賄賂を要求し、突然家を取り上げる事もある。また、身分が低い者を商品として取引して奴隷売買も行う。
「わざとしているのでは?」と聞きたくなる程、日本帝国の希望通りに両班達は動いてくれていた。
歴史ではこの両班支配に耐えられなくなった農民達が、1894年に甲午農民戦争を起こして身分制などを撤廃させる甲午改革を迎えさせたが、再び復活して今度は日本帝国という強大な力を得た事で覆すのは不可能。例え自衛隊を倒したとしても日本帝国軍が出てくればどうしようも無かった。
農民以外にも、知識階級にも弾圧は行われていた。
両班の下には中人という階級があり、両班とは違い外国語や陰陽学(天文地理)、医学、法律、算学、音楽、絵画など技術系官職の家系で、時代の流れや旧日本のおかげか徐々に西洋学問についても学び始めていた。
しかし、日本帝国は教育制度や学問もまた李氏朝鮮王朝時代に戻し、外国語は日本語のみとして西洋学問の一切を禁じ、儒教を中心とした学問のみと制定した。これに逆らった者は韓国政府に私財没収の上、一族朗等皆殺しにされた。
西洋学問や日本帝国支配には相応しくない本は全て焚書され、出版物にも全て検閲がかけられて相応しくない本は焚書し、作者も処刑された。
活版印刷技術さえ無い韓国では、新聞でさえ発行されていないので出版物の管理は容易かった。個人が書いた本については流石に管理出来ないが、所有している事を密告すれば褒賞金を得られるので大体は管理出来た。
ポル・ポトの知識人弾圧とまではいかないが、日本帝国は徹底的に西洋系の知識や思想、技術を消し去ろうとした。自分達では到底独立出来ないようにするために。
海を越えて日本帝国に密入国して来ないようにと、大型船舶の造船を禁じて船舶の規定も制定。
半島南岸の島々は領有したとは言え、もしかしたら大回りで日本本土へ来たり、又は大陸へ逃げ込む可能性もある。そのため、江戸時代のように外洋航行が可能な船舶は勿論の事、1トン以上の船舶の造船や所有を禁じ、全木製で1トン以内の手漕ぎボート以外は造船や所有を認めない。
つまり分かりやすく言えば、矢切の渡しのような小舟以外は全て禁じたのだ。
貿易や漁業に多大な支障が出るようにも思えるが、貿易は特別区である仁川島にさえ行ければ良いのだから問題は無い。そこまで多量の貿易品を積む訳でもないのだから。
漁業にしても、韓国側に許された経済水域は沿岸部のみで、他は全て日本帝国の領海。なので小舟でも十分漁は可能だ。
そのため、軍民問わず小型船舶以外の造船所は全て閉鎖、解体。そして造船や航海技術を記した本も全て焚書し、大型船舶の船大工や工員達を全員処刑とした。
ちなみに自衛隊は陸上部隊のみで、海上部隊の創設は禁じられているので軍港は全て破壊した。
日本帝国が南極点に到達
北極点に引き続き、南極点も日本帝国が世界で初めて到達、日章旗を掲げた写真が世界中の新聞に掲載された。
その後、日本帝国は南極の沿岸部や内陸部などに多数の基地を建設した。
しかしこれは南極を占領したいのではなく、あくまで環境調査のための基地である。流石の日本帝国も南極を防衛する余裕は無かった。
北郷の屋敷では、何時も通り定期報告会が行われていた。
「龍驤級原子力空母の建造を開始しました」
龍驤級空母とはニミッツ級空母の事だ。
「非公式ながら、ようやく日本帝国初の原子力空母の建造開始か…」
「はい、原子炉の発展と雲龍級のノウハウにより、ようやく建造に入れました」
雲龍級とはキティ・ホーク級空母の事であり、現在運用中の最後の通常動力型空母だ。他国では未だに空母どころか水上機母艦すら存在しないが、日本帝国は既に原子力空母にまで進んでいるのだ。
「それで、その龍驤級に搭載する新型艦載機の開発は問題無いのか?」
「超音速艦上戦闘機飛燕と艦上電子戦機電戦は既に完成し、初飛行も迎えていますので間もなく量産体制に入ります」
飛燕とはF8Uクルセイダーの事で、電戦はA-6イントルーダーの事だ。この他にも、初の攻撃ヘリであるAH-1コブラや対潜ヘリのSH-60シーホーク、輸送ヘリのCH-47などヘリ群も開発してある。
「そうか、ならば龍驤が完成した頃には問題無く戦力化出来ているな。
艦上機は分かったが…地上戦闘機の更新はもう完了したのか?」
「はい、既に第二世代機である超音速戦闘爆撃機呑龍や、防空戦闘機隼への更新は完了しました」
呑龍とはF-105サンダーチーフの事で、隼はF-106デルタ・ダートの事である。
この世界への転移後は日露戦争を控えていたため、地上機の更新は遅れて長らく前の世界から運用していたF-86セイバーを使っていた。しかし、日露戦争が終結した事によって太平洋戦争までは総力戦は無くなったので地上機の更新を開始したのだ。
「よし、兵器技術は順調に進んでいるな。
来る太平洋戦争までに戦力を更に増強させなくてはならない……世界を敵に回そうが圧勝出来るぐらいに」
太平洋戦争時、日本帝国がアメリカに対して行う事を黙らせるには、どうしても圧倒的なまでの武力が必要不可欠だった。自らに歯向かう可能性が1番高いアメリカに、北郷は決して容赦などしない。
例えアメリカ人を皆殺しにしようとも……。
「兵器開発が順調な事は分かったが、原発についてはどうなったのだ?」
「原子力発電につきましてはウラン式は既に完成していますが、トリウム式の開発はまだまだ先になります。何分、トリウム式はウラン式に比べて要求技術が高いので…」
北郷は初めから原発はトリウム溶融塩炉にすると決めていた。
何故なら、現代世界で一般的なウラン式は核兵器の材料であるプルトニウムを精製してしまうからだ。精製量や濃度は高くないので直ぐ様核兵器に転用は出来ないが、時間と遠心分離機があればそれほど難しくなく核兵器に転用可能なプルトニウムが手に入る。
その一方、トリウム式も完全にプルトニウムを精製しない訳では無いが、ウラン式に比べれば遥かに精製量は少ない。それに、ウラン式に比べればまだ安全性が高いと言えなくもない。
強力なガンマ線や設備投資に莫大な額がかかるという欠点はあるが、原子力の平和利用という観点から考えればウラン式より遥かに良い筈。現代世界ではアメリカなどの妨害で遅々として進んでないが、この世界なら妨害する者は存在せず、更には無限の予算を投じれるので北郷は積極的に開発を進めている。
「ふむ……まぁ仕方あるまい。今すぐ必要という訳でも無いのだから、これまで通り安全性と確実性を重視して開発を続けるのだ」
「はっ、ありがとうございます」
北郷の言う通り、例え既に開発に成功してようとも、今公開する必要は無かった。
世界で最も技術力が進んでいる日本帝国でさえ家電はほとんど無く、まだ白黒テレビでさえ発売してないのだ。そのため、現状の火力や水力発電などでも需要は賄えた。
一応テレビやエアコン、冷蔵庫など主要家電は既に開発済みなのだが、一般公開は行われていないので主に軍用として使用している。また、表向きでは未だ開発中としていて、不自然に思われない程度に次々と特許を取得している。
技術的には既に1960年代を突破して70年代に入ろうとしているのだから、他国の技術力がある程度追い付くのを待たなくてはいけないのだ。
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