女性が働きやすい社会が、地球を救う?!(2)
『賛同してくれるパートナーが不可欠。』
武藤 病児保育を核とする働く女性の支援が、社会にとっていかに意味があることなのか、段々判ってきました。その活動を、より広めたり効果を上げたりするためには、フローレンスが単独で動くより、たとえば企業とのコラボレーションを行う方が、効率的な場合もありそうですね。
駒崎 その通りです。先日、『社会を変えるお金の使い方』という本を出させていただいたのですが、実はその中で一章丸々、「企業は社会変化のドライバーです」という章を立てているんです。どういう内容かというと、NPOだけが世の中を変えるのではなく、企業もその力を持っていて、実際にそれができるということを書かせていただいています。
武藤 確かに企業には、その業種に合わせて様々な解決力が備わっていると思います。お互いがウィンウィンになる道筋は、今、企業が積極的に考えていかねばならないソーシャルビジネス、あるいはCSRの方向性だと思います。
駒崎 たとえばフローレンスでは、東京都と東京建物と共同で、子育て支援マンションを作るプロジェクトに関わっています。45階立ての高層マンションの低層部に、病児保育を始め、本当に必要な子育て支援機能が集まるというプロジェクトで、単に子育てに便利なだけではなく、コミュニティをきっちり作っていこうと思い、参画しています。
武藤 子育てに手厚いマンション、ということで話題になれば、売り上げにも直結しますし、それに付随した様々なサービスが、そのエリアに集まって来るでしょうね。
駒崎 NPO単体ではマンションを作るなんて夢物語ですが、企業や行政と手を組むことで、こうした大きなプロジェクトに参画できる。企業や行政にしても、単体では実現できない面白い取り組みにつながるので、お互い相乗効果がある、まさにウィンウィンのケースだと思います。
武藤 メディアにも取り上げられるでしょうから、認知度が上がる効果もありますね。企業側にしてみると、これまでは社会貢献といっても、身銭を切って寄付をする、といった認識に止まっていることが多かったのではないかと思います。それだとどうしても、売り上げが厳しい時は、縮小せざるを得なくなってしまう。でも、今回のように、企業とNPOがコラボレーションをして解決の具体的なアイデアを示していくというのは、すごく意味のあることですね。
駒崎 SISの場合ですと、ご一緒させていただいた『ぷちドネ』が、まさにそのケースではないでしょうか。
武藤 そうなんです。僕らは普段、広告を作っていく中で、キャラクターを生みだし、それを使っていくことには慣れています。そのノウハウを使っての社会貢献の仕組みを作り、いずれはキャラクタービジネスにつなげることでより大きな寄付を生み出す、というフローを、ぷちドネでは考えました。
駒崎 「デコメをダウンロードしたら、それが寄付になる」というところで終わりなのかと思っていたら、今日拝見したミネラルウォーターみたいに、アイデアとクリエーティビティで、新しいドネーションのかたちを模索していらっしゃるのがすばらしいと思いました。
武藤 同じくぷちドネにご参加いただいたグリーンバードとは、表参道で拾ったゴミを「カエル虫くん」の型で抜いてキーホルダーに作り替え、ガチャガチャでの販売を通じてドネーションにつなげる企画を進めています。今、代表の長谷部健さんと、表参道に実際ガチャガチャを置けるかどうかを検討しているところです。リサイクルというか、アップサイクルですね。
駒崎 NPOが企業とコラボレーションする意味は、やはり、僕らからは生まれてこないアイデアやクリエーティビティをいただけることだと思っています。こちらは、それによってより効果的に社会に対して活動ができ、企業は、それをビジネスにつなげていける。そんな関係性の中で、社会に対していろいろな課題解決を提案できればと思います。
<プロフィール>
駒崎弘樹(NPO法人フローレンス代表理事)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後「地域の力によって病児保育問題を解決し、育児と仕事を両立するのが当然の社会をつくれまいか」と考え、フローレンスをスタート。日本初の「共済型・非施設型」の病児保育サービスとして展開。また10年から待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。政府の待機児童対策政策に採用される。07年Newsweek「世界を変える100人の社会起業家」選出、同年「ハーバードビジネススクール クラブ オブ ジャパン アントレプレナーオブザイヤー2008」受賞。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)および『働き方革命』(ちくま新書)、『社会を変えるお金の使い方』(英治出版)がある。10年6月より厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員、10月よりNHK中央審議会委員に任命。10年9月、一児の父に。10年12月より内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員に任命。
武藤新二/MUTO SHINJI
株式会社電通 汐留イノベーションスタジオ チームリーダー/クリエーティブディレクター
1992年、広告会社電通に入社。クリエーティブディレクション、コミュニケーションプランニング・商品ブランド開発設計、ソーシャルデザイン、メディアコンテンツ企画制作など、仕事の領域は多岐に渡る。2010年7月、電通社内に「汐留イノベーションスタジオ」を立ち上げ、社内さまざまなセクションから集まったクリエーター、プランナーを率いる。
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