この資源開発には米国が特化しているが、開発当初から問題点も多く、米国も承知の上で、次の水素や循環再生型エネルギーまでの過渡的な資源とみている。米国環境当局は「世の中に完全無欠なエネルギーはない。オイルシェールも完璧ではない。飲料水で問題のある所帯には水を供給している。雇用や石油の外国依存によるリスクも考える必要がある。水素エネルギーが利用できるまでは妥協が必要だ。」と述べ、問題はあっても、今は目の前の資源調達が優先だということのようだ。しかし、シェールガスが抱える危険は過小評価していい問題では無く、また学者の空想でも無い。これらはすでに起きている。
水質汚染:汚染の原因は、岩石層の水圧破砕のために地下に注入する特殊溶液にある可能性が浮上してくる。アメリカでは飲料水の安全確保のため、水源 地帯の土中に異物を混入する行為は厳重に規制されている。ところが、住民の要請を受け当局が調査を行った形跡はなく、ガス会社には溶液の成分を公表する義 務さえない。
回収された薬剤入りの水は地上で仮の溜池に保管されるが、池の土手から水が漏れ、また、溜池から薬剤がどんどん蒸発し、大気汚染を起こしている。廃液はまた深さ1~4kmの井戸に流され地下に廃棄されるが、岩塩層の下の廃液が岩の割れ目を通って地下水中に漏れる化学物質もあり問題とされている。ペンシルバニアでは地形上これが出来ず、廃液を下水処理場に輸送して処理している。(*地下に廃液を貯めるのは、近くに適当な処理場が無いとか、コスト削減のためと想像する。これを地上に放置すれば、大気汚染につながる)
地震の発生:2011年11月に英エネルギー会社Cuadrilla Resourcesは、同社がイングランド地方北西部ランカシャー沿岸で行った水圧破砕法による天然ガスの掘削によって、いくつかの弱い地震が引き起こされた可能性が極めて高いと発表した。
2012年、米地質調査所(USGS)は米中部地域での地震の急増はシェールガス採掘が関係していると報告した。年次大会での報告で、M 3.0以上の地震が急増していることを明らかにし、このことは夏に発表される予定。
米地質調査所(USGS)は、異常なことが起こっており、地震の多くは産業活動に結びついていると考えている。2000年までの30年間で米中部地域での地震活動は年平均21回であったが、2009年に50回、2010年87回、2011年134回と急増した。2001年に始まった増加はColorado-New Mexico の境界のRaton Basinでのcoalbed methane層での地震活動による。OklahomaではM3以上の地震は、過去50年の年間平均1.2回から2009年には25回以上と急増した。2011年11月にはM5を超える観測史上最大級を記録した。この急増は火山地域以外では過去にないことで、ほぼ確実に人工のものであると言っている。
2009年に始まった地震の急増はArkansasやOklahomaの石油とガス生産地域で起こっており、廃液の井戸への注入に関係するという証拠がある。水圧破砕法Frackingでは水と砂と薬剤をシェール層に注入し、注入された廃液は回収され、処分される。地震活動はガスや石油を抽出するプロセスよりも、廃水を井戸に流し込んで処分するプロセスで発生する。メンフィス大地震研究情報センターの研究員によると、地下に戻された水が断層の隙間に入り込んで滑りやすくなり、地震が起きやすくなったと考えられると述べている。
2011年米国エネルギー省は水圧破砕の環境影響を調査する委員会を立ち上げ、委員会は天然ガス業界への環境ガイドラインに水圧破砕や廃液注入により起こされる地震に関する調査を求めた。各州では排水井戸に対する新しい規制を検討している。
シェールガス開発に関係して米国で起きている大気汚染、水質汚染、群発地震。これらの予防には、十分な地質調査、廃水処理施設、地域への安全な給水設備などの対策が必要とされる。合わせて法制度や環境基準の設定なども不可欠で、同時にそれらを厳格に守る企業のモラルも必要とされる。将来が有望な資源であると同時に、薬品による地下水汚染や地震という問題を含む将来が不安な資源でもある。
2012年5月19日:ロイター通信は、中国にとってシェールガスShale gas分野での外国の技術が必要不可欠であるにもかかわらず、シェールガス鉱区の第2次入札から外国企業を排除する決定が下されたと報じている。 シェールガスの採掘に関しては、世界中ですでに数年前から積極的に話し合われているが、多くの批判もある。特に、採掘現場地域では地震のリスクが増大することも含め、環境上の問題が指摘されている。中国は2009年12月から四川省で試掘を開始しており、2015年までには本格的な開発を目指している。 参照記事 参照記事
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