逆風の中の再出発である。民主党があす、東京都内で党大会を開き、新たな党の綱領と改革案を示す。壊滅的な大敗を喫した総選挙から2カ月あまり。文字どおり[記事全文]
安倍首相が、春の大型連休中にもロシアを公式訪問する見通しになった。日ロ間では首脳の公式訪問が絶えて久しい。これを機に首脳対話を活性化させ、北方領土問題の解決と両国関係の[記事全文]
逆風の中の再出発である。
民主党があす、東京都内で党大会を開き、新たな党の綱領と改革案を示す。
壊滅的な大敗を喫した総選挙から2カ月あまり。文字どおり党の再生をかける。
民主党への国民の不信感は根強い。夏の参院選では苦戦が予想され、きのうも2人の参院議員が離党届を出した。
国会では存在感を示せず、他の野党との選挙協力でも蚊帳(かや)の外に置かれている。
八方ふさがりである。
それでも、政権与党の経験を持ち、全国に根を張る野党は民主党以外にない。
再び内紛と分裂を繰り返していては、日本の政治に進歩はない。
党の理念を再確認し、組織や運営方法のどこに問題があったかを見つめ直す。それが出発点となる。
新しい綱領は「生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立つ」「個人として尊重され、多様性を認める共生社会」をめざす、などとしている。
政権復帰を果たし、支持基盤とのパイプを再び強めている自民党との対立軸を意識したものだろう。
目を引くのは、党運営の反省点や総選挙敗北の総括を盛り込んだ報告書である。
▽09年総選挙のマニフェストは、財源の裏付けが不十分で実現性を欠いた。
▽政治家と官僚の仕事の仕分けができず、官僚との意思疎通を欠いた。
▽適材適所の人材配置ができず、閣僚の交代も頻繁だった。
そのうえで「民主党が政権担当能力を身につけ再生するのは容易ではない」と、自らの統治能力のなさを、あけすけに認めている。
嘆息せざるをえないが、これが民主党の実情だろう。
だが、言葉だけではもはや有権者の心に響かない。
こうした反省を、党運営や政策づくりにどう生かすのか。要はその実行力である。
たとえば、生活者の中にも利害の対立があり、働く者の立場も様々だ。それをいかに調整するかが統治能力であり、民主党が問われたものである。
一方、民主党政権下では、外交密約をふくむ情報公開や、将来のエネルギー政策をめぐる「国民的議論」など、国民の視点に立った取り組みもあった。
いずれも自民党政権下では考えられなかったものだ。
「民主党らしさ」を全否定することはない。そこにも党再生の手がかりがあるはずだ。
安倍首相が、春の大型連休中にもロシアを公式訪問する見通しになった。
日ロ間では首脳の公式訪問が絶えて久しい。これを機に首脳対話を活性化させ、北方領土問題の解決と両国関係の進展へとつなげたい。
森元首相がモスクワでプーチン大統領と会談し、日程調整を進めることで合意した。プーチン氏は「両国間に平和条約がないことは異常な事態だ」と語り、北方領土問題の解決にも意欲を示した。
日本の首相のロシア公式訪問は、日ロ関係全体を包括的に発展させる「行動計画」をつくった03年の小泉元首相以来、10年ぶりとなる。
行動計画のうち、経済分野は貿易額がその後、4倍以上になるなどの成果をあげた。
一方、領土問題は「相互に受け入れ可能な解決を模索する」としながら前進はなかった。05年のプーチン氏訪日から続く首脳による公式訪問の不在は、その反映ともいえる。
いまプーチン氏があらためて日本との関係改善を望む背景には、現在のロシアの抱える経済や安全保障上の事情がある。
極東やシベリアの開発で、日本の資金や技術の引き入れは欠かせない。米国のシェールガス革命のあおりでロシアの天然ガスは欧州市場で供給が減り、日本はじめアジア市場への売り込みも必要になっている。
日本にとっても、福島第一原発事故を受けてエネルギーの供給先の多角化は急務である。
軍事面で強大化する中国や、核開発を続ける北朝鮮は、日本と同様、ロシアの脅威になりつつある。それへの牽制(けんせい)という意味でも、協力の拡大は両国の利害が一致する。
とはいえ、領土問題でのプーチン氏の姿勢は慎重だ。
歯舞、色丹の二島返還から踏み出す姿勢は見せていない。国後、択捉を含む四島の帰属問題解決をめざす日本側との隔たりは、なお大きい。
だが、行動計画がそうだったように、領土問題で具体的な進展が伴わなければ、プーチン氏のいう両国間の「異常な事態」は解消されず、幅広い協力は立ちゆかない。そのことを、プーチン氏は理解すべきだ。
森氏との会談で、プーチン氏は「もっと頻繁に両国の首脳は会うべきだ」と述べた。この提案を歓迎する。
定期的な首脳協議を重ねるなかで、領土問題をとことん話し合い、その解決と両国の協力を両輪で進める道筋を見いだしていってほしい。