もともと調教系ゲームというのは、効率性とバリエーション探しとのバランスの見極めが非常に重要なので、どちらかといえばイケイケドンドン的に進めてしまうタイプのゲーム姿勢を取ることの多い私にはわりと苦手なジャンルで、キャラクターの魅力やシナリオの力、演出の効果などがあってはじめて興味を引かれるという場合のほうが多くなっています。この『流聖天使プリマヴェール』は、そんななかでもかなり評判がよく、複数の人から勧められてなんとなくプレイしたものの、初回プレイ以降はかなり長い間放置していたものでした(^^; ゲームシステム上、やはり繰り返しプレイでハマるようになるのは難しいのでしょうが。
※このレビューを書いているのは『流聖天使プリマヴェールV』発売直前ですが、私はこちらはプレイしていません。
ヒロイン・純菜は、悪の組織「マルク・ジュネ」から世界を守るための力を持った「プリマヴェール」の1人で、妹分に当たるつばさと2人で日々悪者を退けていた。しかし彼女は捕らえられたうえに「プリンス・ガーランド」(主人公=下の名前のみ変更可能)に処女を奪われ、彼によって「実験」という名の調教を受ける日々を送ることになった。期間は2月半、彼女はどんな変貌を遂げるのか。すべてはガーランドの手練手管にかかっている。
シナリオ担当は「志茂ひろ雪」氏。
午前と午後の1日2パートに分かれ、自由に行動したり純菜を調教したりします。この際、主人公および純菜の「体力」というパラメータが重要で、調教中にこれがゼロになると、それまでの効果がチャラになります(展開が変わることもあるので100パーセントむだとも言い切れませんが)。
また、純菜の調教を進めるのはもちろんですが、メインである組織の勢力拡大のため、戦闘員を使って作戦を行うことも必要です。ただし、この「作戦」は正否が報告されるだけで、その経過の描写がないのはやや寂しいところ。
これらを組み合わせて期間内にスケジューリングしていく必要があるのですが、限られた期間内でイベントを適切に発生させるのはなかなかたいへんです。クリアするのはさして難しくありませんが、イベントをきちんと見ていこうとすれば難易度はかなり高いものになります。
調教が進めば、それに応じてイベントもぽんぽん発生するので、少なくとも初回プレイでは飽きることなく進められます。
シナリオ自体は、取り立てていうほどのものはありません。囚われの身になった「正義の少女」に対して好き放題にあんなことやこんなことを繰り返す、というものです。課せられているノルマをクリアするのは容易ですが、ポイントを多く稼ぐほど資金が多く調達できるので、可能なかぎり進めておくのがよいでしょう。
エンディングが、基本的に主人公に取って都合のよい形で終わるうえ、「本当にそんなんでいいのか?」と思うケースをあちこち置き去りにしている観もありますが、そういうところにツッコミを入れるタイプのゲームではないのですし、これはこれでいいかと。
また、随所で出てくるスケールの小ささやバカバカしさが笑えるために、この悪の組織に対して「悪の巣窟」という印象を抱かせにくい効果をもたらしています。具体的にいえば、月々の予算が6,000円だったり(高校生の小遣いかいな)、当初の侵略地がアフリカ南部と南米南部だけとか(そのくせワールドワイドな舞台をうかがわせる描写は皆無)、戦闘員による「作戦」が「園児誘拐」だの「戦闘員勧誘」だの「パチモングッズのセールス」だのやたらとチープだとか。これらが醸し出すお間抜けな雰囲気のため、深刻さがあまり感じられません。ヒロインが「囚われている」ことによる深刻な空気をはねのけているわけで、なかなかうまい扱いです。もっとも、「悪の結社」というよりは某Y興業ばりのお笑い供給団体に見えてしまうこともままありましたが(^^;
その「悪の結社」の“悪どさ”を、“組織として”直接純菜に向けることをしていないのも(賛否両論があったと思いますが)うまく出ています。あ、脇役(笑)のつばさにはそういうのもありました。
キャラクターは、ヒロインである純菜1人の勝負といえますが、割とお約束のキャラとはいえ、調教の進行パターンによってその嗜好や態度が変化していくさまがきちんと描けているのが何よりもいいですね。調教の「過程」の中でのみ変化が見られるのではなく、事態の変化を態度できちんと示しているのが好感度大。皮肉な見方をすれば、その程度のキャラと言えなくもないのですけれど、これはプレイヤーサイドとしてはひねくれすぎなのかな(^^;
エスクードのWebサイトに修正ファイルがアップロードされています。また、複数のCD-ROMドライブを接続している場合、最初のドライブにCD-ROMを入れないと認識されないようです。
存在を確認していません。なおリメイク版については、デモ・体験版とも確認済みです。
対応OSはWindows95/98ですが、WindowsXPでも問題なく動作します。メディアはCD-ROM1枚で、インストール時に必要なHDD容量は100MB程度なので、特に容量を気にする必要がないのはありがたいところ。プレイ時にはCD-ROMが必須です。
画面は、640×480ウィンドウ表示とフルスクリーンとを切り替え可能で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。初期画面から入れるオプション設定では、BGM/効果音/画面処理/テキスト表示速度(2段階)/テキスト表示方式/早送りスピード(5段階)を切り替え可能です。メッセージ読み返し機能はありません。基本的にマウス操作で進めますが、テキスト送りはスペースキーで行うこともできます。
セーブは、指定されたポイントで80個所まで可能ですが、セーブしたあといちいち「中止」ボタンを押さないと戻れないのは感心できません。ロードは任意の個所で可能です。
CGモードは各キャラクターごとのサムネイル表示、Hシーン回想モードは各ヒロイン別、BGMモードは曲名選択方式と、ひととおりそろっています。
BGMはCD-DAで再生されます。特に印象に残る曲ではありませんでした。音声はありません。
原画担当は「はなたかれとも」氏。頭部に着けている飾りなど、過多ぎみともいえるゴタゴタした服装が、純菜の「汚れ役ヒロイン」としての役割をよく表しています。また目パチ小アニメもあります。ただし、特にHシーンでの構図が非常に不安定かつ不自然でしたが、どの程度のデフォルメを求めるかによって違ってくるんでしょうかね。あんな姿勢を平気で取れる純菜って、もはや人間のカラダじゃねーだろと思ったのは私だけでしょうか(^^;
純菜以外のキャラはそもそも名前を覚えていません(^^;
シーンとしては、気に入っているというよりは印象に残っているシーンですが、純菜が自慰にふけっているところをビデオでのぞくところ(爆
調教メニューの単純明快さ、およびパラメータの変化(調教進度の変化)によってイベントが発生する明快さのために、調教ゲームにつきものの「何をやっていいのかわからない」という状態に陥ることがない点は、まず評価できるでしょう。
その反面「受けるであろう展開・素材」にマトを絞り、シチュエーションを限定している結果、ヒロインである純菜の“姿勢”の描写がある一方で心理描写がどうにも欠落している印象は否めず、この結果「都合のよいエンディング」がかなり不自然な形で浮き上がってしまった観も否定できません。私がプレイした範囲内では、純菜が「従順にならざるを得ない」画面は出ても、反抗する画面が具体的にでる画面が皆無なのは本当に物足りない。進めていくあいだは脳天気に進められても、締めの段階で白けてしまったのは、この不自然さの結果と思います。
2002年12月13日には、リニューアルされたバージョンが音声つきで発売されるとのことですが、骨格部分は大きく変わっていないものと思われます。