キャッチコピーに、
1997年「Piaキャロットへようこそ!!2」1998年「With You〜みつめていたい〜
そして、2000年。カクテル・ソフトから新たな伝説が生まれる!
という文字列。「なるほど、絵だけは一級ということか」とつまらないツッコミをいれたものの、逆に絵だけは問題ないできなのだろう、と期待して購入(発売後2週間たらずで4,000円台前半だったというのも大きいですが)。『ロマンスは剣の輝きII』(こちらはフェアリーテールブランド)のグラフィックがやや寂しいという面をなんとかフォローしてくれるだろう…と思ったのですが…あ、あ、あぁぁぁぁ。
ところで、パッケージの「初回限定パッケージ」って、何?(^^;) とうとう「初回限定版」として差別化することを諦め、パッケージの差異で勝負しようと考えたということでしょうか。確かに、パッケージでスカートまくって中身を見せている女の子はそそるものがありますけれどヾ(^^;
幼いころに孤児となった主人公・コリン(変更可能)は、宿屋の主人に拾われ、娘であるサリアン・ポーニィ姉妹とともに家族として暮らしてきた。ある日、サリアンにそそのかされる形で、村外れの洞窟に足を運んだ彼は、あらゆる感情を失っている少女を目にすることになる。彼女を宿へと保護した主人公たちは、彼女に「フィーリア」という名前をつけ、家族の一員として扱う。彼女が感情を取り戻すきっかけをつかむために、洞窟への探索を開始することとなる。そして、彼女がすべてを思い出したとき、明らかになる真実とは何か、そして主人公が向かい合う困難は何か。
ゲームの舞台となっているのは、村と洞窟の2つのフィールドです。いずれも、背景・キャラクターともに3D表示され、移動は基本的に垂直方向のみ可能となっています。時間やお金の概念はありません(バザーでの「チケット」がお金の代替として一時的に使われますが、これは例外)。時間はともかく、「お金」がまったく関わってこないRPGというのは珍しいのでは。
全体を貫いているシナリオの根幹は、非常にシンプルなものですし、「プリンセス」という語が用いられていることからも、ある程度見当はつきますね。それはともかく、シナリオ自体が薄いのは別にかまわないと思います。
ただ、キャラクターの「見せ方」という点で、非常に物足りなさを感じます。
F&Cゲームの得意技というのは、シナリオ全体の出来不出来よりも、登場するヒロインを「いかにかわいく見せるか」という点にあったと思うのですが、このゲームでは、ヒロインたちの魅力が「描き切れていない」以前に「打ち出せていない」と感じます。その最大の理由は、変化の少ない会話パターン、バリエーションに乏しい表情変化、ラブラブになるための決定的なシーンが欠落している、この3点に尽きるように思えます。RPGの性格上、ゲーム展開の主軸が探索部分にさかれるのは当然なのですが、村で発生するイベントシーンなどでも、ヒロインとの接触はお世辞にも多いとは思えません。
辛うじて頑張っているフィーリアについても、取ってきた貢ぎ物ならぬプレゼントを手渡して会話をしているぶんにはそれなりに楽しいんですが、これ以外ではほとんど「キャラクターの魅力」を発揮するシーンがありません。また、彼女にプレゼントを手渡す際、パラメータが上がるのですが、どのパラメータをどんな順で上げるといった戦略的な要素が皆無で、手当たりしだい渡していってすべてのパラメータをフルにすると次のイベントに進む、というのは、あまり楽しいモノではないと思います。全パラメータを一定程度以上にする、というのはいいとして、ある程度プレイヤーサイドで「フィーリア」の色づけをできるようにすればおもしろかったのではないでしょうか。このパラメータを一番高くするとこんな性格になり、このパラメータを先にあげるとこんなイベントが起きる、といったタイプのバリエーションをつければ楽しめたと思うのですが、「全部のパラメータを一律に上げるだけ」では、これさえも「単純作業」の中に埋没してしまいます。彼女がしだいに感情を取り戻していき、その過程で「おにいちゃん☆」と言ってくれるときにグッとくるものは確かにあるんですが、「退屈なシーンの合間の清涼剤」とでもいった程度に留まっています。
2人の姉妹に至っては、そのイベントの少なさたるや、涙が出るほどの寂しさです。さらに、「姉妹」と主人公という関係がどうしたって想像できるというのに、修羅場はおろか、何の葛藤さえも出てきません。2人ともそれなりにかわいい…と思えないこともないのですが、いかんせん何のアレンジもされていないので、感情移入もへったくれもありません。「生の素材だけで勝負」という言葉を素で受け、ゴボウやニンジンを皮も剥かずに盛りつけしたような印象さえあります。
また、エンディングの締め方が、あまりにも中途半端にすぎます。フィーリアのトゥルーエンドを迎えても、「フィーリアの世界」がわかったというだけで、そこから先の話、あるいはそれ以降につながるための「オチ」が一切用意されていないのです。「はい、お話はここまでですよ〜」と、中途半端なところで幕を引かれたような印象があり、どうにもおもしろくありません。
姉妹それぞれのエンディングを迎えた場合に至ってはもっとひどく、彼女たちとの一枚絵CGさえ出ません。「3人が対面」した後、それまでの「家族」とは違った人間関係になる以上、3人の間には一筋縄ではいかない展開が絶対に残されているはずですが、ここに何の手も着けていないというのは、いくら彼女たちがサブ格にすぎないとはいえ、あんまりでしょう。スタッフロールが流れないことを考えれば、彼女たちとのエンディングはハッピーエンドではないのだ、ということも可能でしょうが、「真実」が明らかになるという点では、フィーリアエンドと本質的には変わらないと思うのですけれどね。
村でのイベントシーンが少ない点は先述のとおりですが、農場やら納屋やら、何の関連イベントもないどころか、そもそも会話すら発生し得ないような場所が設定されているのは、「舞台を作ったもののイベントを用意できなかった」のがうかがえます。RPGである以上、シナリオ本編に無関係なモノでもいいから、何らかの「遊び」がほしかったというのは、贅沢な望みなのでしょうか。特に、十数人という規模で登場する村人たちとの会話が、シナリオ展開にはまったく関係がなく、単に「通行の障害物」程度の存在にすぎなくなっているのは、「むだ」以外の何ものでもないと感じます。
RPGパートについてですが、こちらは、AVGパート以上に退屈と感じたものです。
体力回復などのアイテムは各階層に、武具類は指定された階層にそれぞれあるので、上から順々に降りていけばよいという設計となっています。また各階ごとにワープゲートが設定されているので、一度行った階層にはいつでも直行できるようになっています。ダンジョンは、入るたびに自動生成されますが、フロア自体がさほど広くないうえ、歩いた場所がオートマッピングされるため、隅から隅まで歩いてもそれほどの手間はかかりません(中盤以降はさすがにめんどうくささが先に立ってきますが)。
戦闘を積み重ねてレベルアップしていく、というよりも、お姫様用のプレゼントをちまちま取ってくる途中でインネンをつけてくるザコを相手にしていくうち、自然と強くなってしまいます。イベント探しの要領が悪い私のこと、あまり一般論として片づけるのはよくないかも知れませんが、あっちうろうろ、こっちうろうろを繰り返していると、いつの間にかレベル20を超えてしまい、ボスキャラも含め弱すぎ。
イベントの発生順序がほぼ確実に固定であるため、見つけられないと先に進めない、さらに敵がもともとそんなに強くない、ということもあって、どうにも緊張感のない戦闘を義務的に繰り返すはめになりました。おまけに、「ここをクリアしないと先に進めない」といったケースがあまりにも多いため、核となるイベントをさがしているうちに、気がつくとレベルがやたらと上がってしまい、敵キャラはほとんど瞬殺できるという状態にさえ陥ります。
また、戦闘パターンにバリエーションがほとんどなく、力任せにぶん殴っていればたいてい向こうが倒れるので、頭の使いようもないというシロモノです。
装備類やアイテムを宝箱から出すという形にするのは悪くないのですが、このために、モンスターが「ただの邪魔者」になってしまい、緊張感も何もない「足止め役」を振り払うために時間をむだに使っている、という気にさせられてしまいます。ザコキャラ相手にゲームオーバーになる心配が皆無、というのは親切設計といえなくもないのですが…。
なお、エンディングが複数用意されているためでしょうか、一度クリアすると、回想モード内の「SPECIAL」を選択することで、戦闘レベルが最大の状態でリスタートすることが可能です(装備はクリアされますが)。ありがたい設計、というよりは、こうでもしないとリプレイする気になれない、という受け止め方になってしまったのは、ひねくれたプレイヤーの悪意にも一因があるのでしょうか? 私の場合、初回プレイでの所要時間は10時間を超えましたが、2回目以降は最初からリプレイしても3時間程度で済みました。
実にいろいろと細かいトコロまで作り上げているゲームですが、私の環境では不具合の類はまったく出ていません。ただ、建物←→外、など、場面が切り替わる際に、10秒近くかかることが多いのですが、これはグラフィックカードに起因するのでしょうか(S3 Savage4Pro)。通常の移動の時には非常にスムーズなんですけどね。
CD-ROMは1枚で、最小インストール時に90MB、最大の場合は300MBのHDD量を必要とします。また、OP・EDのムービーを再生するために、同梱のindeo videoをインストールする必要があります。
ゲーム操作はすべてキーボードで行い、マウスは受け付けません。マウスを使わないアダルトゲームというのは、私は初めて経験しました(一般ゲームならあるんですけれどね)。移動はカーソルキー(矢印キーおよびテンキー)で行い、アクションはエンターキーというのは通常どおりですが、このほかに、さまざまなショートカットキーが用意されています。なかなか覚えきれるものではありませんが、マニュアルのほか、パッケージ同梱の「プリンセスメモリー基本操作」という紙にすべて記されているので、これを手元において参照しながらプレイするのがよいでしょう。こちらがアクションを起こさないと時間切れになるとか敵に囲まれるとかいった心配はありませんから。マウスが使えないことに対しては賛否両論があるでしょうが、長時間プレイではキーボードの方が疲れないでしょうし、また多彩なコマンドをわかりやすい形にまとめる工夫は評価したいと思います。
グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示で、強制フルスクリーンとなります。また、色数設定や音源設定ができます。また、コンフィグメニューから、インフォウィンドウの表示/非表示、オートマッピングのオン/オフ、移動速度の通常/高速、メッセージスキップのオン/オフ、BGMの有無、効果音の有無、ボイスの有無などを設定できますが、これらはWindows上のiniファイルを書き換えることで設定変更することも可能です(テキストエディタで編集可能である場合は、こちらの方が楽でしょう)。
セーブは、自室あるいはそれに準ずる寝室のベッド脇でのみ可能で、10個所までセーブ可能となっており、プレイ時の主人公名・レベル・プレイ時間(「時刻」ではありません。念のため)が記録されます。ロードは任意の場所で可能です。
タイトルメニューに表示される「MEMORY」モード内に「GALLERY(CGモード)」「MUSIC(BGMモード)」「MONSTER(倒したモンスターの詳細情報)」「SPECIAL(一度クリアする必要あり。「シナリオ・ゲームデザイン」欄を参照のこと)」「TITLE(タイトルに戻る)」の各メニューがあります。「GALLERY(CGモード)」は、サムネイル表示になっていますが…やっぱり少ない(--;)
BGMは、MIDI(GM・GS・FM・XG)で演奏されますが、全然印象に残りません。いろいろなシーンがあるものの、それらに曲が割り振られているというのはわかりますが、シーンを盛り上げるBGMとしての機能を果たしていない、といってもいいでしょう。『D+VINE[LUV]』のように、BGMを演出の重要な要素として位置づけた曲作りをしてほしかったのですが。
音声は、ヒロイン3人のみとなっています。メインヒロインのフィーリアは、おなじみ長崎みなみさんが担当。この人の守備範囲は本当に広いですね。長崎さんの「お兄ちゃん」は、『プルミエール2』のサワディ以来でしょうか? 全部のゲームをプレイしたわけではないので詳しくはわかりませんが。
☆画野朗・MAKOTO2号両氏の原画です。女の子は非常にかわいく、この点については問題ないでしょう。
それはいいんですが、CGの枚数がいくらなんでも少なすぎデス。CGモードに登録されるのが28枚とはどういうことでしょうか。しかもエンディングは各キャラごとにあるうえ、どうやら好感度的な要素もあるようなので、序盤から最低3回はプレイする必要があって、それでこの数。
カクテル・ソフトのゲームでは、基本的に同時期に出されているフェアリーテールのゲームに比べ、質・量の両面で上回っているのがここ最近のパターンだったと思うのですが(『Piaキャロットへようこそ!!2』>『バーチャコール3』、『With You』>『PALETTE』など)、このゲームについては、量的な不足は目にあまります。3D表示に凝るより、セールスポイントである「グラフィック」を絞り込んだという今回の手法は、どう考えても成功とは思えません。いえ別に「2次元こそがすべてだっ」などとわめくつもりは毛頭ないのですけれどね(^^;)
戦闘シーンでの動きも、あまり楽しくないですね。自分と敵とがターンごとに攻撃をする、という体裁を取っているのですが、もっとキャラのアニメーションに工夫をしてほしかったと思います。
そして、通常画面ではキャラクターが3D表示されますが、これがまたあんまりかわいくないんです(^^;)
フィーリアで決まりですね。そうはいっても、気に入るべくして気に入った、というより、もともと対象となるキャラがこれだけ少なければ、こうなるしかないでしょう。
USGさんのページ(閉鎖)でレビューがアップされています。このほかのレビューサイトでは、「作業が多い割に楽しめなかった」あるいは「キャラクターはそこそこかわいかった」という意見が多いようです。
シナリオ面での甘さ、戦闘シーンでの緊張感のなさにとどまらず、全体のバランスがとうてい褒められたものではなく、プレイしている最中、ずっと「作業」という感覚を引きずらざるを得なかったことを考えると、このゲームをエンディングをすべて見るためには、かなりの忍耐が必要でしょう。
少し前に出た同タイプのゲーム『D+VINE[LUV]』(アボガドパワーズ)に比べて、ほとんどあらゆる面で「スケールの小ささ」を感じるとともに、力のいれどころを何か勘違いしているのではないか、と思ったことがたびたびでした。
壮大なシナリオなど別になくてもよい(あればもちろんベターではありますが)のですが、何よりも「飽きさせず」「先に進みたいと思わせる」作りのゲームにしてほしいものです。また、これまでのセールスポイントであった「女の子をかわいく見せる」という「ウリ」自体がかなり弱くなっているのも確かなので、萌えを求める方にも、あまり好印象は持たれないでしょう。
手間暇かけてできてしまったハンパもの、という評価をくだしておきます。