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  淫魔の実 作者:樹氷霧氷
第28回 発症 1

     28

 会議室のドアが開く音がしたので、真由那は顔をあげた。
 谷村が会議室に戻ってきたのだ。20歳そこそこの若い女性をひとり連れていた。顔にあどけなさを残している。スリットの入った白のワンピースからスラリと伸びた細い脚が目を引いた。
 谷村はセックス特区の歓楽街にある馴染みのソープ店から彼女を連れてきたらしい。
「服を脱げ」
 谷村に命じられて、ソープ嬢はワンピースを脱ぎはじめた。商売柄、裸になることに慣れているのだろう。6人の人間が集まっているこの場でも、躊躇する素振りを見せない。
 ソープ嬢はワンピースの下に淡いピンクのブラジャーとショーツを身につけていた。若々しい乳房と尻が窮屈そうに収まっている。
 手を休めることもなく下着を脱いで、ソープ嬢は自分の裸体を惜しげもなく一堂の前に披露した。
 幼顔とは対照的に凹凸のはっきりした大人びたボディーラインをしていた。乳房は、はちきれそうなほど膨らんでいて、薄桃色の乳首が上を向いている。腰はキュッとくびれて、尻肉は形よく隆起していた。
 誰かが息を飲む気配がした。
 同性の真由那もその肉体に思わず見ほれてしまった。
「床に座って、足を広げろ」
 谷村はソープ嬢に命じた。ソープ嬢は言われるままに、床に腰を落とすと股間を開いた。縮れ毛の繁みが小さく切り揃えられていて、割れ目がよく見えた。
「これを、おまえのお腹に入れる」
 茅野は指に挟んだオシラポスをソープ嬢に見せた。オシラポスは茅野の指の間で苦しそうにもがいていた。表面を覆っている無数の吸盤から染み出した白い粘液が、何本もの糸となって垂れ下がっている。
「きゃあぁ」
 ソープ嬢は顔を青くさせた。
 茅野がオシラポスを割れ目に近づけようとしたが、ソープ嬢は股間を閉じて拒否した。
「駄々をこねるんじゃねぇ。たんまりと金をはずむからよ」
 谷村はソープ嬢の背後から手を伸ばして、彼女の太ももの内側を掴んだ。
「いやぁ、気持ち悪い~~」
 ソープ嬢は逃げようと暴れたが、谷村に押しつぶされる形で床の上に仰向けに倒れてしまった。2人はちょうど、シックスナインのような格好になっていた。ソープ嬢は谷村の体の下で苦しそうにもがいている。
「ほら、おまNこを出せ」
 上体を起こした谷村が両手でソープ嬢の股間を左右に開いた。谷村に乗っかられたソープ嬢になす術はないようだった。
 茅野は無防備になった割れ目を指で広げて、オシラポスの頭をあてがった。
「いやあぁ~~やめて!」
 ソープ嬢は首を左右に振りながら絶叫した。
 オシラポスは体を膨らませたり縮めたりしながら、割れ目の中へと入っていく。
「あんっ、あああぁ~~」
 ソープ嬢の声が色っぽい喘ぎに変わった。
「いやらしい声を出しやがって、へへへ」
 谷村が笑いながら立ち上がった。
「はぁっ、ああぁ~~」
 ソープ嬢の体が小刻みに震えながら仰け反りはじめた。
「大変、おじいさま。オシラポスがあの人の中に入っていくわ」
 真由那は源蔵を見た。
「さすがのオシラポスも、マゾヒズム症候群の遺伝子を持ったおなごかどうかは、子宮に入ってみなければわからないようなんじゃ。心配いたすな、すぐに這い出してくるわい」
 源蔵はソープ嬢を見据えたまま答えた。

 オシラポスは割れ目の中に消えていた。
 ソープ嬢は身悶えながら床に寝転がっている。割れ目からは早くも粘液がトロトロと染み出していた。クリが肥大しきっているのが傍目からもわかった。
「んんっ、あっあああぁ……おまNこが吸いつかれてる! 何これッ、気持ちいいわぁ」
 と、ソープ嬢は下腹部を撫でまわしながら悶えた。波打つように下腹部が上下している。
 オシラポスが膣を移動しているその快感に浸っているのだと、真由那は自分の経験からそう推察した。
「バケモノを挿入するときも快感を味わえるなんて、女は羨ましいな」
 谷村が卑猥に笑った。
「いやあぁ~、お腹の中で動いてる! はぁあぁ~ん! こんな気持ちいいの初めてッ」
 のた打ち回るように体をよじった。
 やがて、ソープ嬢は左手で乳房を揉みしだき、淫らに膨らませたクリを右手で触って自ら慰めはじめた。
 両足がだらしなく広げられている。
 真由那のところから淫裂がよく見えた。蜜汁で濡れて光っている。

 真由那はオシラポスを寄生させるときのことを思い出していた。いや、体が思い出しているのだった。
 オシラポスは吸盤で膣襞の粘膜に貼りつき、体を膨張させたり縮ませたりしながら進んでいく。
 吸盤で膣襞の粘膜を吸いつかれるのは、ペニスでは味わうことのできない快感であった。軽い絶頂を迎えたように膣襞の一部が痙攣するのだ。それがオシラポスの歩みに合わせて、痙攣ポイントが奥へとゆっくり進んでくる。
 悦びのツボに向かって快感がゆっくりと迫ってくるのは、期待感と焦れったさから狂おしい悦楽をもたらすのである。
 やがて子宮に到達したオシラポスはグルリとその中をひと巡りする。内膜を吸いつかれて、下腹部が凹むように痙攣する。そして、ヌルリと這うときの内側から刷毛でなぞられたようなくすぐったい感触が加わるのである。そうなったら、もう泣き叫ぶしかないのだった。

 股間が熱くなっているのを真由那は感じていた。子宮もこそばゆい。オシラポスが自分の子宮の中を這い回っているかのようだった。
 目の前で繰りひろげられているソープ嬢の自慰行為を凝視していた。彼女の指が淫裂でしなやかに動いている。
 自分の秘唇を弄っているような錯覚を感じて、真由那は身じろいだ。ショーツが股間に貼りついていた。いやらしい蜜がショーツを濡らしているのだとわかった。
「あぁん、あぁん、あぁん……イっちゃうッ」
 ソープ嬢が甲高い声をあげた。
 クリを弄る指の動きが早くなっていた。蜜汁で濡れたそこがグチュグチュと鳴っている。
「ああぁ、イク……イクぅ――」
 うめくような声を発した後、ソープ嬢の体の動きがぱたりと止まった。うるさいぐらいだったよがり声も消えていた。そこだけ時間が止まったかのようだった。
 ただ、下腹部だけが痙攣していた。

「はっ、はっ、はっ――」
 思い出したように、ソープ嬢の呼吸が再開された。苦しそうな息づかいである。
「ようやくおれの出番が来たようだ。緑の実を食ったおれが、バケモノにエサをたっぷりと与えてやるぜ」
 谷村は立ち上がると、ズボンを脱いだ。
 肉棒は、すでに臨戦態勢になっている。
 谷村がソープ嬢の体に割って入り、正常位で挿入した。
「あぁんッ」
 導き入れた瞬間、ソープ嬢は大きく体を反らせた。
「おおっ! 中がぐっちょぐちょで、襞の粒々感が……すげぇ気持ちいい」
 谷村はソープ嬢の腰を抱えるようにしながら律動した。
「ああぁん」
 ソープ嬢は顎を上げた。
「どうだ、おれのちNぽは?」
 自慢げな表情を浮かべながら、股間を打ちつけている。ソープ嬢の大きな胸が波にもまれているように前後左右に揺れていた。
「いやあぁ! 何これ! はあぁ~~お腹の中がジンジンする! 何かが動いてるぅ~~」
 ソープ嬢は床に爪を立てて、掻きむしるような仕草をしていた。
「襞の収縮が半端ないぜッ。ちNぽが奥に吸いこまれている!」
 谷村が嬉しそうに叫ぶ。
「引っ掻いて! おまNこの中を引っ掻いて! 疼いて仕方がないのッ」
「おおおぉ、締りが凄いッ」
 谷村はソープ嬢の腰を掻き抱いた。
「はああぁ、突いて! 激しく、突いて! くすぐったいのよ!」
 ソープ嬢の顔は悦楽で歪みきっていた。
「こんな風にか?」
 谷村の腰が高速で前後する。肉と肉がぶつかり合う乾いた音が大きくなった。
「あああぁ。もっとよ! もっと、激しくやって! わたしのおまNこを突き壊して!」
 ソープ嬢は狂ったように叫んでいる。周りに真由那たちがいることなどすっかり忘れた様子であった。
 真由那の位置から、2人の接合がよく見えた。
 柔らかな淫裂を嬲るように野太い肉棒が猛々しく出入りしていた。大きな口を開けた淫裂が、むせるようにゴボゴボと音を鳴らしている。
 肉棒に掻き出されるように膣口から女の蜜が流れだして、肛穴まで濡れ光らせている。
(儀式のとき、わたしもあんなにたくさんの恥ずかしい蜜を垂れ流しているのかしら)
 駿平の横顔を見ながら、心の中でつぶやいた。駿平が真由那の視線に気づいてこちらを向いた。目が合って、真由那は恥ずかしさのあまり全身から汗が噴きだしたのだった。

「はあぁ~ん、子宮の中で動きまわってるぅ……あああぁん、子宮がジンジンするぅ!」
 髪を振り乱しながら、ソープ嬢は泣き叫んだ。下腹部が激しく波打っている。
「イクぞ! おっ、おっ、おっ、おおお――」
 谷村が歓喜の咆哮を放った。
 深々と挿入したまま、腰の動きを止めた。
「おおぉ。いつもと違って射精に勢いがあるぜ! いっぱい出てるッ……おおぉ、気持ちいい……あああ、まだ出てるぞッ」
 谷村はソープ嬢の体にしがみつくようにしながら、種汁を注いでいた。
「おじいさま……」
 真由那は源蔵を見た。オシラポスが谷村の精液をエサに産卵してしまうのではないかと心配になった。
「大丈夫じゃ」
 源蔵はきっぱりと言った。
 しかし、真由那の不安が払拭されることはなかった。

 谷村が満足そうに息を吐いて、ソープ嬢の体から肉棒を抜いた。先っぽが自らの種汁で白く濡れていた。
「じいさん。いつになったら実が収穫できるんだ?」
 茅野は源蔵に訊いた。
「普通なら、3日後じゃ。3日後に産卵が始まる。じゃが、その女性はマゾヒズム症候群の遺伝子を持っておらんから、産卵は起きぬ」
「産卵するかしないかは、3日後にわかる。楽しみだな」
 茅野は笑った。
「おい、見ろ!」
 谷村が叫んだ。ソープ嬢の股間を指差している。
 種汁まみれになったオシラポスが淫裂から這い出てきていたのだ。そして、茶色い薄い膜がその後から淫汁と一緒に流れでてきた。
「ほれ見てみろ。わしの言うたとおりじゃ。オシラポスはマゾヒズム症候群の遺伝子を持った女でないと産卵せぬのじゃ。無理やりその辺の女に寄生させようとしたから、脱皮までしてしまったわい」
 源蔵は言った。
「くそっ。それなら、日吉村の女を連れてきて、産卵させるまでだ」
 茅野はオシラポスを拾い上げようとした。
「返せ!」
 誰かが叫んだ。
 駿平だった。茅野に体当たりを食らわせていた。茅野が後方にすっ飛んだ。
「てめぇ、何しやがるんだ!」
 近くに立っていた谷村が駿平に蹴りを飛ばした。駿平の胸を谷村の足が捉えた。くぐもった音がした。
 後ろに倒れた駿平はすぐに立ち上がった。すぐさま、駿平の顔面に谷村のパンチが炸裂した。
 駿平は仰向けになって倒れた。
「駿平!」
 真由那は駆け寄った。
「どけ!」
 起き上がった茅野が怒鳴った。
「イヤです! やめてください!」
 真由那は駿平の体に覆いかぶさった。
「もっと……もっと、蹴って。もっと、殴って……おおおぁ……」
 駿平の声であった。真由那は駿平の顔を覗きこんだ。駿平が恍惚の表情を浮かべながら喘いでいたのである。
「いかん! マゾヒズム症候群を発症したわい」
 源蔵は呻くように言った。
「おおぉ~。もっと、蹴って。はああ……もっと、殴って。すごく気持ちいいよ!」
 駿平は自分の拳で自分の胸を叩きはじめた。
「ダメよ、駿平! しっかりして!」
 真由那は駿平の腕を掴んだ。
「何なんだ、これは……」
 突然の事態に、茅野と谷村は呆然とした。
「おじいさま、早くオシラポスの実を駿平に食べさせないと危険だわ」
 真由那は縋るように源蔵を見た。
 ここにはオシラポスの実はない。日吉村に取りに戻っていたら1日はかかってしまう。村の誰かに持ってきてもらうにしても半日だ。それまで、駿平の体がマゾヒズムの快感に耐えられるのかわからなかった。
「他にオシラポスの実を持っておらんのか?」
 源蔵は茅野と谷村を睨みつけた。2人はその剣幕に驚いたのか後退りした。
「昨晩、わしは富丘にオシラポスの実を3個渡した。お前たちに拘束されるとき、あいつは予防のために1個食った。あと2個は手元に残っていたはずじゃ。釈放の取引をしたとき、全部もらったのではないのか?」
 源蔵は谷村に詰めよった。
「おれがもらったのは1個だけだ。さっき食っちまったやつだ」
「そうか……」
 源蔵は肩を落とした。
「あっ、所長が1個持っているかもしれない。釈放を決めたのは所長だからな」
「所長はどこじゃ?」
「主任に連絡を取ってみます」
 研究員の松本が白衣のポケットからケータイを取り出した。

   つづく
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