週現スペシャル これぞ、究極の格差社会
使える理系 使えない理系
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■「理系は就職に有利」で選んだ人間の悲劇――文系と違い、ごまかしがききません |
■ダメな理系はすぐバレる |
■理系の恐怖――デキるヤツが徹底してデキるのが理系 |
■理系の頂点「東大理III」の人々の頭脳 |
■宇宙に行ける理系 ノーベル賞とる理系 落ちこぼれる理系 |
■山中教授はここが天才的 |
■理系の悲劇――なぜ文系に支配されるのか |
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文系にもデキる子とデキない子はいます。でも、理系のデキる子とデキない子の間には深くて暗い川があるのです。みんなに尊敬されるのに、なぜか日本を動かすトップではない。理系の謎を追いました。 |
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【PartI】
「理系は就職に有利」で選んだ人間の悲劇――文系と違い、ごまかしがききません
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「うちは曾祖父の代からずっと医者なんだけど、僕だけ東大工学部卒なんですよ。
子供の頃から医者になれ医者になれと言われて勉強してきたけど、どうも医学部に行くほど頭はよくない。で、別に理系だったら就職も困らないだろうと思って、とりあえず理科I類に入った。主に理学部か工学部に進むコースです。まあ、一族のなかでは落ちこぼれですよ」
そう言って笑うのは、長野県飯田市の雪深い集落に住む40代の男性。いまは南アルプスの麓の進学塾で講師をして生計を立てている。
「で、なんとなくロボットとか面白そうだなと思って、機械工学をやりました。いまは東大理系学生の8割が大学院に進むそうですが、当時でも同学年の半分くらいは院に行ったのかなあ。
それで院にも行ったけど、研究者で食っていくのも大変そうだから、とりあえず就職しようと思って。教授の推薦枠で誰でも知っているような建設機械メーカーの研究所に入りました。初任給は月25万くらいかな。でも、その仕事がイヤで」
研究所は、東京から遠く離れた北関東の工場地帯にポツリとあった。
「なんでこんな寂しいところで、好きでもない重機の研究なんかを延々やらなきゃいけないのかって、すぐイヤになった。
先輩や同僚は、ちょっと可動域が広がったり、制御の精度が上がるだけで小躍りしているんだけど、誰に褒められるわけでもなし、僕はそんなことどうでもよかった。やる気も出ないので先輩に振られたテーマに何となく取り組んでいたけど成果も出ず、すぐ『あいつはどうしてあんなにやる気がないんだ』とバレてしまった。研究職は、ごまかしがきかないですね。
職場にも居づらくなって、ようやくハッキリ気づいたんです。ようするに僕は学校でそこそこ勉強ができたから中途半端な気持ちで理系を選んだだけで、別にたいした興味も関心もなかったんだと。
ちょうどその頃、子供が生まれたんですが、生後すぐから病気がちで。それなら空気がよくて、自然の多いところに移ろうかと思って、退職しました」
今年の大学受験シーズンも終盤戦にさしかかっているが、いま受験戦線では、理系に進学したいと希望する受験生が増えている。
大手予備校の河合塾が'12年に行った全国模試の分析では、理系志望の受験生は前年から約7%増加。この増加傾向は数年前から続いている。不況下でも理系学科を卒業すれば就職しやすいと言われるためだ。
「それでも、私は『就職に有利だから理系に進んでおこう』というのは、やめたほうがいい、と受験生やその親たちに伝えたいです」
こう語ったのは、3年前、私立大学の工学部を卒業した20代の女性だ。
「私は、ずっと母から『文系は事務職か営業職にしか応募できないけど、理系なら事務職も営業職も技術職も狙える。あんたは人当たりが悪いんだから、営業なんか向いてない、だからちょっと背伸びしても理系に進みなさい』と言われてきました。でも背伸びしていて、いいことなんてひとつもなかった」
高校3年生のときには、苦手な数学と格闘した。模擬試験の問題に書かれた数式の意味さえ分からず、会場で悔し涙を流したこともあったという。
苦労の甲斐あって受験を突破。地獄の日々は終わるかと思われたが、大学の授業が始まると彼女の精神は恐慌状態に陥った。
「最初の授業から、何を言っているかさえ分からない。高校では、数学の授業さえ乗り切れば、英語や国語の授業では楽しいこともあったのに、工学部ではあらゆる授業で数式が黒板を埋め尽くすんです。同級生には『数学は科学の言語なんだから、数学で授業が進むのは当たり前じゃん』とか言われるし、マジで泣きそうでした」
授業をサボる学生も多いなか、授業には必ず出席した。出席していてもワケが分からないのにサボったらもう二度と追いつけない。必死に勉強しても成績は下の上だったが、「落第しないだけでも自分としては頑張ったつもりだったんです」。
もうひとつ、女子としてつらかったのは、なんと理系男子のファッション・センスと視線だという。
「理系には男子が多いんですけど、なぜかみんなチェックのネルシャツを着ているんです。カバンはリュックサック、たいていメガネをかけている。
私がちょっとメイクして行ったりすると化粧品の匂いに惹かれるのか、教室内でなんとなく寄り集まって来たりする。そのくせ、思い切って声をかけてくるでもなく、上目遣いにチラチラ見てくるだけ」
これはもちろん、多分に彼女の主観による理系男子像。だが、とらえようによっては、彼女がクラスでモテていたということではないのか?
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