2月17日付 少年法改正 更生の視点も忘れるな
法制審議会が少年法の改正要綱を谷垣禎一法相に答申した。罪を犯した少年に言い渡す有期刑(懲役・禁錮)の上限を現行の15年から20年に引き上げるなど、全体として刑罰強化を求める内容となっている。 これを受け、法務省は今国会での法制化に向けて改正案づくりに本格着手する方針だ。 しかし、少年犯罪の厳罰化は更生の可能性に重点を置いた法の理念に反するばかりか、再犯防止にも逆効果と指摘する専門家が少なくない。拙速な法改正で禍根を残すことがないよう、法務省には少年犯罪の実態を踏まえた適切な対応を求めたい。 改正要綱では、有期刑の上限引き上げのほか、少年に更生を促すため刑期に「○年以上○年以下」と幅を持たせて言い渡す不定期刑についても、上限を現行の10年から15年に引き上げるなどした。 さらに、不定期刑の幅が「1年以上15年以下」などと大きく開くのを防ぐ規定も新たに設けている。 こうした刑罰強化は、少年事件の被害者や遺族らの法改正を求める声に応えたものだ。2011年に大阪地裁堺支部であった裁判員裁判の判決で、成人と比べて量刑の範囲が狭い少年法の規定に対し、改正を促す異例の言及があったことも議論を後押ししたとみられる。 少年法の改正をめぐっては、01年に刑事処分の対象年齢が16歳以上から14歳以上に引き下げられ、07年には少年院に送致できる年齢の下限も14歳から「おおむね12歳」に引き下げられた。厳罰化の流れが続く一方で、少年の凶悪事件は減少し続けているのが実情だ。 罪を犯した少年に更生の機会を与えるのが少年法の趣旨であり、成人に比べて量刑範囲が狭められているのは、犯罪を大目に見るということではない。そこに大人と同じ尺度で考えてはいけない理由がある。 少年による凶悪事件や悲惨な交通事故が起きるたび、厳罰化を求める世論が高まりを見せてきた。相次ぐ少年法の改正も、そうした社会情勢を反映したものだろう。 掛け替えのない家族の命を奪われた遺族らにとって、罪を犯した少年が法律で守られていると感じるのは十分に理解できる。ただ、刑罰の強化といった対症療法だけでは根本的な解決にならないことも押さえておく必要がある。 人格形成の途上にある少年は大人に比べて柔軟性が高く、きちんとした処遇を受ければ立ち直る可能性がある。そうした少年の刑期をいたずらに長期化すれば、その後の社会復帰を妨げ、再犯の可能性を高めることになりかねない。 そもそも罪を犯した少年は、親からの暴力や育児放棄といった深刻な問題を抱えている場合が多い。そうした少年に必要なのは、抑止効果を狙った刑罰の強化ではなく、彼らの存在を受け止められる居場所づくりだともいわれる。 改正要綱には、家庭裁判所で審判を受ける少年事件に検察官が関与できる範囲の拡大も盛り込まれた。 出席の判断は裁判官に委ねられたとはいえ、範囲拡大の措置が教育的観点を重視した法の趣旨に照らして適切なのかどうか。いま一度、幅広い議論が望まれる。
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