東日本大震災:福島第1原発事故 ベント前、10キロ圏拡散 線量最大720倍に
毎日新聞 2013年02月22日 東京朝刊
福島第1原発事故ではモニタリングポストのほか、事故対応に当たるオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)やSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)も活用できなかった。これらの事実は、従来の備えでは深刻な原発事故に対処できないことを示している。
モニタリングに関しては、国の原子力規制委員会で事業者や自治体を交えた議論が進む。その会議に参加した福島県の担当者は積極的な発言はせず、司会者から促されて、事故時にモニタリングポストが使えなかったことなどを伝えるだけだった。
だが、観測データを住民避難に生かせなかった失敗を福島県が重く受け止めているのであれば、モニタリングポストの電源や通信手段の多重化を図るよう、原発のある他の自治体に提言することもできるはずだ。
「同じ事故を二度と起こしてはならない」と主張する福島県は、自らの事故対応を再検証し、国が新たに作る「原子力災害対策指針」策定の中心となり改善を求めていくべきだ。【神保圭作】
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■ことば
◇放射線モニタリングポスト
空気中の放射性物質の濃度を自動観測する装置。全国の原発周辺地域に設置されている。1時間ごとの平均線量を監視施設などにリアルタイムでデータ送信し、避難指示などに活用する。電源喪失で送信できなくなっても、非常用バッテリーで観測データを機器内に蓄積し続けることができる。