第1特集:金持ちの鉄則
2013年02月16日
【週刊エコノミスト 2月26日号】
◇富裕層は続々海外へ 東京・港区の税収にも影響
◇桐山友一(エコノミスト編集部)
気温30度。現在は雨季のために、一雨過ぎた後には涼しい風も吹き抜ける。シンガポールとジョホール海峡を挟んだマレーシア・ヌサジャヤ地区。パームオイルのプランテーションを切り開いた開発地「イーストレダン」に今、真新しい戸建て住宅がずらりと並んでいる。
マレーシア向けの不動産投資コンサルタント「フォーチュンライフ」(東京都)の當麻浩洋社長(31)は昨年1年間で、不動産オーナーら日本の富裕層向けにイーストレダンの住宅11軒の販売を仲介した。敷地面積約400平方メートルで、価格は約180万〜200万リンギット(約5400万〜6000万円)。それでも「シンガポールに比べればはるかに安い」と話す。
シンガポールへは車で30分余り。政府肝いりの大型都市開発「イスカンダル計画」の対象地区で、昨年はアジア初のレゴブロックのテーマパーク「レゴランド」がオープンし、英キャサリン妃の母校として知られる英名門校「マルボロカレッジ」の分校も開校した。あちこちでインフラや住宅建設の槌音が響き、その活気が世界から注目を集める。
日本人がなぜマレーシアの住宅を買うのか。1つには、日本より海外に成長の可能性を見ているからだ。人気の高い地区なら入居者を容易に見つけられ、将来の値上がり益まで見込める。資産の分散も図れる。
もう1つの理由が、将来の移住に備えて住居を確保する狙いだ。それも「子どもの教育を考えて30〜40代の若い世代が購入している」(當麻社長)。マレーシアやシンガポールなら英語や中国語も日常的に学べ、マルボロカレッジのような学校に通わせることもできる。當麻社長自身もすでにイーストレダンの住宅を購入。引き渡しを待って新生活を始める予定だ。
◇シンガポールへ集中
外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、日本人の海外永住者は2011年、約39万9900人にのぼり、10年前(01年)に比べて36%増加した。個人資産の海外流出も続いている。日銀の「資金循環統計」によれば、国内の個人の対外証券投資残高は昨年、12兆5800億円と過去10年間で最高となった。海外に財産を持ったり移住する人が増えるにつれ、海外税制への関心も高まっている。田邊国際税務事務所の田邊政行税理士は「各国ごとに異なる税制を活用する相続対策などの相談が増えている」と話す。(表)