うわさと社会:ドイツ・都市伝説の真相/2 「冷戦末期、西独の米軍基地に巨大なオオカミ男出現」

毎日新聞 2013年02月19日 東京夕刊

 ◇森への「恐れ」現代人にも

 ツチノコ、口さけ女、人面犬など、日本では時折、異形の生き物が都市伝説の主役となる。ドイツでもえたいの知れない獣が話題になるが、舞台の多くは「森」だ。欧州中部の豊かな森林地帯に位置するドイツでは、各地の民間伝承を起源とする「グリム童話」にも頻繁に森が登場する。

 東西冷戦末期の88年、米軍が駐留していた旧西独モアバッハの森に、後ろ脚で人間のように立つ「巨大なオオカミ男」が出現したとのうわさが流れた。高さ3メートルのフェンスを越えて逃げたのを複数の米兵が目撃し、軍用犬も怖がって後を追わなかったという。

 調査後、08年に「モアバッハの怪物」という本を出版し、現在も都市伝説を研究するマインツ大学のマティアス・ブルガルトさん(30)は話す。「常に危険と隣り合わせの軍隊には、日常の不安感からうわさや都市伝説を生みやすい土壌がある。欧州土着のオオカミ男伝説が、駐留米軍という現代的な組織を通じて蘇生したケース。私が会った米兵は、今も真剣に信じていました」

 だが、「謎の野獣を見た」との目撃例は後を絶たない。92年に南部ザールラント州、00年にベルリン、09年にはベルギー国境地帯で「巨大な黒ヒョウ」のような獣の目撃が伝えられ、警察も捜索に乗り出した。ドイツ動物保護連盟の広報担当ミュルハウゼン氏は「ドイツの寒さに耐えて生存できるかは疑問」と話す。

 97年には西部アーレンの森で「ピエロの格好をした人物」の目撃談が相次いだ。サーカスが盛んな欧米では道化師の仮面に恐怖心を抱く「ピエロ恐怖症」を訴える人も多く、「森から現れるピエロ」のうわさに当時は警官隊が出動する騒ぎになった。

 ブルガルトさんは言う。「グリム童話に今も親しむドイツ人は、森に一種の『恐れ』を抱いています。森は現在も、私たちの心理に一定の影響を与えているのです」

 森には何かがいる−−。メルヘンの伝統が残るドイツでは、この深層心理が「怪物」を生み出している。【マインツ(独西部)で篠田航一】=つづく

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