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6 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:42:49 ID:???
Title"しんじてたのに"

 ___とある研究所にて



 少々広めの水槽。中にはある程度の遊具が置かれ、中で暮らす水棲ポケモンにはある程度快適な環境だろう。
 今日はシャワーズを使うらしい。ロケット団員の一人がそれをつれて来た。人懐っこいのか、ロケット団員に普通に抱かれていても逃げようとしない。
 「習得している技は全て確認してある。「とける」は覚えていない。」
 なら、大丈夫だ。
 シャワーズを水槽に入れた。はじめ驚いたシャワーズだが、その後は嬉しそうに泳いだり遊具で遊んだりしている。
 「実験結果はいつ出る?」
 「・・・俺は過去にこんな実験はしたことないが、推定ではレポートをまとめる時間を含めて一週間と言ったところか。」
 「なら、一週間後にレポートを取りに行く。俺達はここで帰らせてもらうぜ。」
 「待て、金の方はどうした?」
 「ああ、そうだな。」
 そういうとロケット団員は50万円を俺に手渡した。
 「これだけだ、残り250万はレポート回収時に渡す。」

 やはり、ある程度エグい事には高い報酬がつく。


 「気持ち良いか?」
 水槽の中のシャワーズに俺は言った。シャワーズはこちらを向き、にっこりとした顔で頷いた。気に入ってもらえたようだ。
 シャワーズは今までじっとしていた事に疲れたのか、水槽を勢い良く泳いでいる。
 しかしコイツは知らない。

 この水槽の水には、3パーセント程の硫酸が混ざっていることを。



7 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:43:53 ID:???
 ___一日目
 そう言えばシャワーズは何を食うのだろうか?書物庫で図鑑を広げて調べてみるが・・・本来シャワーズは両生類の為、木の実でも何でも食うらしい。
 適当にリンゴや木の実を水槽の投入口から入れてみる。そうするとシャワーズはそれに寄っていき、水槽でそれにかじりついた。
 ・・・因みに本当に微量だが、それらには麻薬を注射してある。水槽には蓋がしてあるがいざ逃げ出したときの保険だ。
 目の前のシャワーズは何も知らずに其れを食べる。

 もう生きてこの場から出られないのに。

 「レイジ、レイジ居るか?」
 と、友達のショウイチが研究所にやってきた。
 「ここだショウイチ。」
 「おう、ちょっと遊びに・・・ん、なにやってんだ?」
 「ちょっとした実験さ。」
 「ふーん、可愛いやつだな。」
 「だろ?」
 「そういやお前、最近仕事増えたよな。以前は借金にまみれてたのに、今は全額返済したんだって?」
 「まあな・・・この実験、実は極秘なんだ。今日から一週間ここに来ないでもらえるか?」
 「ああ、いいぜ。じゃ、頑張れよ。」
 ショウイチは研究所を去っていった。深く詮索しようとしないのがあいつのいい所だ。いや、俺にとって都合がいいだけか・・・



8 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:45:02 ID:???
 ___二日目
 研究所を閉鎖した。6人程居る研究員には、今日から一週間の有給を取らせた。
 研究所の全ての窓を閉鎖し、入り口を全て封鎖した。誰も中で実験が行われているとは思わないだろう。
 シャワーズの水槽を見に行く。シャワーズは相変わらず元気に泳いでいる。
 カメラのシャッターを切った。様子を比較するためである。カメラをパソコンに繋ぎ、昨日撮影した写真と見比べた。

 ・・・微量だが皮膚が少し伸びている。

 硫酸は確実に効果がついてきているようだ。
 今日のエサはサクラビスだ。因みに水槽の水が汚れると大変なため、予め殺してから血を抜いておいた。
 水槽に投入すると、シャワーズは其れに寄りかかって肉を食いちぎり始める。
 サクラビスの白い肉が、水槽の中を舞ってからシャワーズに飲み込まれていった。
 シャワーズを一端水槽から上げ、口の中から頬の細胞を少し取った。そしてシャワーズを水槽に戻す。

 もう二度とコイツを水槽から出すつもりはない。

 顕微鏡で一日目と比べてみる。
 確実に、細胞は死滅しつつあった。



9 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:47:41 ID:???
 ___三日目
 シャワーズの表情が変わっていた。スムーズに水槽を泳げなくなっていた。
 ・・・ヒレに孔が開き始めたのだ。
 シャワーズは少し水の成分を疑いだしてきたような気がした。
 「多分、ここに来るまでにそういう病原体に感染したんだろうな。薬を打ってやろう。」
 いかなる手を使ってでもシャワーズが自力で脱出出来る間は騙し通さなければならない。俺はシャワーズの水槽の蓋を開けると(これ以上シャワーズを水槽の外に出してはならない)シャワーズを上まで泳がせ、体に注射した。
 シャワーズは安心したような表情を見せていた。そして水槽の中で再び泳ぎだした。
 注射したのは薬ではない。

 シャワーズの血液に、微量の麻薬を混ぜたものだ。

10 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:48:52 ID:???
 ___四日目
 朝起きて冷蔵庫を覗くと、食料が尽きていた。買い出しに行かなければならない。
 私服に着替えて研究所を後にした。
 恐らくシャワーズは逃げ出さないだろう。
 いつも行く食料店で適当に缶詰を買い(自炊はしない)、レジに出した。
 「・・・あら、レイジじゃない。」
 「ん?・・・ああ、リナか。」
 ここでバイトしている俺の知り合いである。
 「今日は食料を買いにきた。」
 「まだ私何も言ってないわよ。」
 「・・・。」
 「レイジ、なんか最近あんたの悪い噂流れているわよ。」
 「悪い噂?」
 「裏で危ない研究しているんだって。」
 当たっている。
 「・・・噂だろ、信じるなよ。」
 「そうよね、噂よね。」
 「・・・ああ、そうだ。」
 余り話したくなかった。つりを受け取ると、早々そこを去った。

 シャワーズの水槽を改めて観察する。写真を撮って三日目と比較。
 皮膚が少し焼け爛れている。ここからは激しく酸化が進む。変化が激しくなるだろう。
 シャワーズは何とか泳ごうと精一杯体を動かしていた。そして、誤って腕を水槽の壁にぶつける。
 『ボコン』
 嫌な音とともに、シャワーズの腕がちぎれた。そう激しく当たっていないのに腕がちぎれたのは、体皮の組織が硫酸で死にかけている証拠だ。
 苦痛にシャワーズが水中で悲鳴をあげた。そして俺のほうを向いて「助けてくれ」と言わんばかりに訴える。
 無視をした。あいつの力では既に、ロックされた水槽の蓋を開けることは出来ない。硫酸の混ざった水に、シャワーズのちぎれた腕から血が流れ出していた。

11 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:49:55 ID:???
 ___五日目
 シャワーズが口から血を吐いた。元々水中で呼吸してたため、硫酸が内臓を溶かしたのだろう。潰瘍状態になったのだ。
 其れをも無視。俺が今していることは例え食わなくてもシャワーズにエサを与えることだけである。
 シャワーズは既に泳がなかった。皮膚も大分弱くなっている。泳げば最期、水の抵抗力と水圧で皮膚がちぎれるだろう。其れをシャワーズも察知しているのだ。
 シャワーズはじっと俺を見ている。その眼は助けを必死に訴えている。
 俺は水槽に近づく。シャワーズは助けてもらえると思ったのだろうか、少し笑った。
 そして俺は言った。

 「バカだな、もう少し人間を疑えば助かったものを・・・」

 シャワーズの表情が歪んだ。そして、その表情は既に生還を諦めた事を悟っていた。
 俺はそんなシャワーズを一瞥し、研究室を去った。

12 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:51:02 ID:???
 ___六日目
 寝坊した。まあいいが、研究室へ行く前に朝食を済ませる。恐らく研究室に行ったら飯は食えないだろう。
 そして研究室へ行き、水槽を見た。
 真っ赤になった硫酸混じりの水に、青い液体が浮いている。液体と化したシャワーズの皮膚だ。所々白いのは溶けた眼球だろう。
 そして底には溶けてない内臓の絡まった白い骨。周りには溶けかけた脳ミソが広がっていた。
 六日間回しつづけたカメラを止めた。そして俺は12時間程前の様子を再生した。
 真っ赤な泡を吹くシャワーズ、液化した皮膚が水面に浮いていく様子。
 眼球が一回転したかと思えば、其れが音もなく顔から抜ける。
 爪や牙が自然に剥がれ、水槽の底に沈む様子、抜けた場所から赤い液体が水中に溶け出していく様子。
 ・・・もう、慣れた。
 俺はそれらを観た後、机に向かい書類を広げた。

 明日には、ロケット団が来る。レポートをまとめなければならない。

13 名前: Pain's Fun 2006/07/14(金) 19:52:14 ID:???
 ___七日目
 「レイジは居るか?」
 「ああ、ここだ。」
 「実験は終わったか?」
 「・・・見ての通りだ。」
 ロケット団員はグロテスクな水槽を見て、「うっ」と口を塞いだ。
 「コレがレポートだ。」
 「そうか、ご苦労だったな、報酬の250万円だ。」
 団員が出したスーツケースには、確かにその額の金が入っていた。
 「しかし、特定の殺害方法でポケモンが死ぬまでの様子を集めて何になるんだ?」
 「こっちにはこっちの事情があってな・・・」
 「そうか・・・」
 「・・・しかしそう言うお前も、良くこんな依頼を引き受けたものだな。」
 「お前達と手を結ぶと、次々と金が入ってくる。数年前まであった膨大な借金ももう無い。」
 「そうか。」
 「人間ってスゲェな、昔の俺はこんな酷い事したくないって思っていたが、金が絡むと何でも出来る。」
 「・・・。」
 ロケット団は何も言わず俺のレポートをバッグにしまいこんだ。
 「次の研究対象が決まったら連絡する。」
 「ああ、わかった。そろそろ硫酸攻め以外の殺し方も観たいんじゃないのか?上は。」
 「・・・そうかもしれないな。」
 そしてロケット団は去っていった。
 明日は研究員が戻ってくる。この水槽は片付けなければならない。
 排水口と下水をポンプで繋ぐと、水槽の排水口を開いた。


 真っ赤な排水口から、シャワーズの骨と溶けた肉は流れていった。
 
 
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