2010年06月05日

総理辞任に想う


始めて総理にお会いしたのが、昨年の12月でした。


●鳩山総理とお会いしました
http://bit.ly/872iFQ

以前より官邸で定期的にお話させて頂いていた松井孝治内閣官房副長官にお引き合わせ頂き、寄付税制改革(税額控除)についてお話させて頂きました。

総理はきさくな雰囲気で、同行していたNPOカタリバの今村久美女史が、「総理こっち、こっち」と携帯に付いたカメラを手に持って迫っても、僕たちと並んで撮ってくれるような方でした。「お前ら一国の総理に対して非常識だ」と国内最大のNGO、ピースウィンズジャパン代表の大西さんに、僕までとばっちりで怒られましたが。

その後総理はご自身が所信表明演説で訴えた通り、市民が自ら当事者として社会を担っていく、新しい公共の実現に向けて、現場を回られたいと仰られました。

官邸より相談を頂いたので、例えばということで
アフラックペアレンツハウスや
http://bit.ly/6ANfxN

マドレボニータを紹介したところ、
http://bit.ly/ddBSOD

実際にそうした現場に行き、行政では行えない社会サービスを行っている方々の話に耳を傾けられました。

その後、お任せ民主主義を脱し、自ら行動する市民社会を創るために「新しい公共」円卓会議を発足。通常は官僚の皆さんが全て取り仕切る事務局に、僕は民間スタッフとして参加させてもらうことになりました。非常勤国家公務員ということで、期限付きですがパートの官僚になり、妙な気分でした。

そしてこの新しい公共円卓会議は、憲政史上初めて、その政策形成プロセスをインターネットで全公開する、という取り組みを行いました。

●憲政史上初の「審議会ダダ漏れ」
http://bit.ly/bDXQ32

これまで密室の中で議論していた政策に、多くの国民が参加することこそ、新しい公共にふさわしい、という松井内閣官房副長官のアイディアでした。
僕やNPOカタリバの大学生ボランティアが中継を行い、多くの人が視聴して下さいました。

円卓会議では様々な重要なテーマが提起されましたが、その中心には寄付税制改革(税額控除)がありました。ある問題が起きても、政府はすぐに対処することはできません。制度化となれば、何年も掛る。その間に誰かがその新しい問題に対処しなくてはいけない。そんな時に、欧米のように寄付が集まれば、国民が自律的に、かつ迅速に社会問題に対応できるだろう、と。
その障害になっているのが、寄付をめぐる様々なわずらわしい法的制約でした。それを取っ払って、国民が寄付をし、あるいは寄付を集め、自らの地域の課題を、迅速に自ら解決していくような社会を創っていくためには、寄付税制改革は避けては通れなかったのです。

税収を減らしたくない財務省の消極的な対応に対し、総理は何度もリーダーシップを取り、あの手この手で改革を命じました。
その結果、最終的な方向性を明示する「新しい公共円卓宣言」では、「税額控除」が歴史上初めてはっきりと公式資料に明記されることになりました。

こうした攻防戦を行って何とか成果を勝ち取っていく一方で、政治と金、普天間の問題でメディアの集中砲火を受け、総理の支持率は徐々に失われていきました。成果は新聞には載らず、外国の新聞で自国の代表が揶揄されたことが、嬉しそうに掻き立てられました。

そして総理の突然の辞任を、インターネットのニュースサイトにて知りました。
これまで新しい公共円卓会議で話しあってきた諸々の改革策は、これでパーになってしまうのか、と暗澹とした気分でいたところ、内閣府からメールが来ました。

辞任会見の翌々日、新総理が選ばれる直前である4日の朝8時半〜、最後の円卓会議をします、という通知でした。
審議会が朝の8時半〜、というのは異例中の異例です。
聞くところによると、自身が総理である最後の時間を使って、何とか新しい公共宣言に署名し、実効力を持たせたい、ということだったそうです。
せっかくこれまで議論してきた諸々の改革策を、このまま流産させてしまってはいけない、という執念に似た思いを、僕は感じざるを得ませんでした。

たった25分の会議では、総理への感謝の言葉が委員から語られました。
その間に、僕は非常勤国家公務員の辞任願にサインをしていました。
拍手と共に、宣言は署名されました。

総理は最後に委員一人一人と握手をしました。
僕は後ろの席でその姿を見ていたら、内閣府政務官である泉健太議員が「行かないの?」と近寄ってきて下さいました。「いや、恐れ多いので」と断ると「何言ってんだ、行こう」と背中を押して、総理のところまで連れて行ってくれました。

総理は僕の目の前まで来て、僕の手を取り、「ありがとうございました」と深く礼をされました。

そしてどこかから起こった拍手を背に、官邸大会議室を出て行かれました。

僕は自分が何もできなかったことに唇を噛みながら、彼の背中が見えなくなるまで、小さく拍手を続けました。

そして思ったのです。もはやボールは政治ではなく、我々にこそ投げられている。
政治家や官僚を叩きながら確実に腐っていく我が国の中で、僕は今日から自らの行いによって、半径1メートルの中で1ミリでも社会を変えていこう、と。

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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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posted by 駒崎弘樹 at 22:27 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
貴重な経験談拝読しました。小生は、鳩山総理と言う人は、自分の気持ちを率直に語る今までに珍しい政治家だと感じていました。片言節句をとらえて「言葉が軽い」などとのマスコミのキャンペーンに世論がやすやすと乗ったのが残念です。しかも辞任のスピーチになると、とたんに「感動した」「いい演説だった」などと。沖縄にとってもマイナスだと思います。地元民はもう少し冷静に鳩山さんに協力すべきだったでしょう。沖縄への気持ちを率直に語った彼を潰しては、この問題に次期政権がより慎重になるのは明白。辺野古に基地建設が実際強行される事は無いにしても、これで普天間継続使用はほぼ決まったと思います。国民はもう少し長い目で見るべきでした。残念です。
Posted by 加納哲哉 at 2010年06月06日 00:34
今回も貴重なお話しありがとうございます。普天間の問題も国の安全のあり方という本質に触れてなく、議論がなされてるように思えます。ここ数日も国の対外的な機能が止まっていることも非常によくない状況です。でもそれは政治家の問題ではなく、自分の国の問題。それにどう取り組むかは国民一人一人の問題なはず。子供にどう引き継ぐかに責任を持ちたいです。
Posted by t.fukuda at 2010年06月07日 02:51
>加納さん

仰る通りですね。自国の首相をサンドバックにすることが、対外交渉を有利に進めるとは思えません。

>t.fukudaさん
そうですね。もしかしたら、戦後60年間負担を沖縄に押しつけ続けた構造を再確認する歴史的契機にはなったかと思います。
世界で唯一、他国の軍隊にお金を払って駐留し続けてもらっている状態を、今後50年でどうしていくべきなのか、ということについて、再び冷静な国民的議論が必要になってくるでしょう。
Posted by 駒崎弘樹 at 2010年06月07日 07:33
鳩山さんや小沢さん叩きに暗澹たる思いでした。記事を読ませて頂き,少し光明が見えました。そうです!全部を鳩山政権に押しつけてサンドバックにして叩き落とし,辞任後まで唾を吐くようなマスコミの腐敗ぶり!また,それを後押しするかのような一部の国民たち,思わず愚民と言ってみたくなります。
Posted by kyodogenso at 2010年06月08日 09:50
ここ最近はずっと、基地の話題で暗い気持ちになっていたので、記事を読ませていただき、少し驚きました。もっと別の面があったのに、知らなかった自分を悔しくも思います。
こうやって、情報は発信されているのに、きちんと受信できていないことも、早い首相交代を招いた一因かもしれません。他の面での活躍を評価できていたら、辞任はなかったですかね・・
Posted by おひむ at 2010年06月08日 21:44
時の政権与党とその党首・総理大臣(最高権力者)の言動に問題があれば、厳しく批判することはジャーナリズムの使命です。前の大戦においてジャーナリズムが権力に迎合ないし批判を抑制したことは厳しく批判されているではありませんか。
わが国の国土・国民を守る自衛隊の最高指揮官であることを自覚していないような発言を軽々に漏らす総理大臣を批判しないようでは、ジャーナリズムの資格はないと思います。それが鳩山さんだろうが、誰だろうが、どの政党の党首だろうが。

鳩山さんの功績を三つ挙げるとすれば、
@小沢さんと刺し違えて泥沼化していた政局を一気に流動化させたこと。
A沖縄県民にタダ乗りしてきた日本の安全保障の現状を国民全体に知らしめ、国家安全保障を白紙から再検討すべきだという気付きを国民にもたらしたこと。
B菅党首・官内閣はしょせん中継ぎ党首(投手)だとしても、結果的に、40代、50代の政治家が日本の将来を担うための道を開くきっかけを作ったこと。

その意味で、「鳩山総理」の存在は、戦後政治の流れを変えるきっかけとなったエピソードとして後世に記憶されるかもしれません。

なお、「新しい公共」が、鳩山由紀夫氏のオリジナルだと勘違いされている向きもありそうですが、ご存知の通り、このキイワードは、自民党政権時代の平成16年版国民生活白書の副題「人のつながりが変える暮らしと地域・新しい『公共』への道」から借用したものです。

6月9日付け各紙によれば、鳩山氏は国の最高権力者としての説明責任を最後まで果たさず総理の座を降りました。
読売はこう書いています。
「鳩山前首相は退任にあたっての記者会見を拒否したまま、職を去った(中略)。退任記者会見で失言などをすれば、菅内閣の門出に水をさしかねないと警戒したとの見方も出ている」

 引き際の美学なんにも語らずに
           (北川絢一郎)

国民への信頼は裏切っても盟友、菅さんへの友愛の情は裏切らなかったのでしょうか。

尾崎 雄

Posted by 尾崎 雄 at 2010年06月09日 21:52
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