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安倍晋三の御用新聞となった朝日 - 紙面も大きく右旋回
気温は低いが、陽射しに春の温もりがある。季節が春に近づいていることを感じさせる。しかし、気分は凍てつき暗く閉ざされていく一方だ。希望が見えない。今日(1/21)の朝日の1面は安倍晋三の単独インタビューがトップに出て、「TPP交渉参加に意欲」と見出しが踊っている。安倍晋三が、朝日を使ってTPP参加の方針を国民にメッセージした。読売や日経ではなく。最近、若宮啓文を退任させた後、朝日の社長が安倍晋三と会食するなど不穏な動きがあったが、それを裏付けるように朝日の紙面がガラッと変わり、安倍晋三を翼賛する話題と論調が目立つ。若宮啓文が主筆になった2011年以降、朝日が少し品質の安定を取り戻しつつある気配が感じられたが、このところめっきり右傾化の度を強め、記事の内容も粗雑で軽薄になっている。安倍晋三に媚びへつらい、安倍晋三の政策をヨイショする記事ばかりが満載だ。経済政策だけでなく、安保外交政策についても批判的な記事は全くない。TPPについても、TPP推進の旗を振ってきたのは朝日ですと言わんばかりの得意顔が透けて見える。中国叩きの過激さについてはNHKと同じだ。とうとう安倍晋三のマスコット・ペーパー、御用新聞になってしまった。インタビューは4面に要旨を載せ、1面にその要旨の要約を短く書いているだけで、朝日の視点からの解説はない。4面の要旨の中身は、録音を朝日が纏めたというよりも、安倍晋三サイドから文章が丸ごと提供されている。


つまり、これを要旨として紙面に載せろというテキストが安倍晋三から朝日に先に手渡され、朝日はカメラマンがポーズをつけた安倍晋三を官邸で撮影しているだけなのだ。立ち合ったのは政治部長の曽我豪。安倍晋三と昵懇の曽我豪が、今後の朝日の編集を仕切り、わずかに若宮啓文が正常化させていた朝日をドロドロの右翼新聞に変えていくのだろう。安倍晋三の写真も、まるで産経のように肖像視した撮影で、見ていて薄気味悪くなる。マスコミ好きの安倍晋三らしい毒々しさに満ちている。朝日は、安倍晋三の単独インタビューの機会をもらえて嬉しいのだろうか。これで商品価値が高まり、部数減に歯止めがかかる材料になると思っているのだろうか。右傾化に付き合い、産経と同じ紙面にすることで、市場で生き残ろうと足掻いているのだろうか。それが朝日の読者のニーズに応えることなのか。17面の耕論(オピニオン面)では、集団的自衛権の特集が組まれ、M.グリーンを含む米国の論者が3人登場して、日本の集団的自衛権の行使を要請し正当化する主張を並べている。これには驚いた。1面を使った「耕論」面は、数年前まではなかった。若宮啓文が主筆になってから定着させた新しい紙面作りであり、朝日にすれば久しぶりにヒットした経営企画だったと言っていい。読者の一人である私も、他の紙面よりも「耕論」に注目する習慣が身についている。他の記事は官僚リークのコピペばかりであり、官僚と飲み食いした料理屋の酒の臭いしか漂ってこないのだ。

記者自身が、官僚との夜の酒席ばかりに夢中になっていて、取材した(リークを受けた)政策の中身に関心がなく知識がないのだ。そのことが記事を見ればすぐに分かるのである。記事を書いた記者の中で、情報は二の次で、うわの空であり、官僚を飲食接待した店とか料理とか、その次に行った店のホステスとの深夜の痴態と享楽ばかりが頭に浮かんでいるのである。ろれつが回ってないという表現があるが、記事の文章のろれつが回っていない。そういう記事が官僚リークについては特に多くなっていた。官僚の方も、すっかり記者と読者をバカにしていて、どうでもいいやといいかげんにリークしていたのだろう。テキトーに書いときゃいいと、あのデスクは俺がよく知っているからと。そうした朝日のおぞましい品質劣化の中で、オピニオン面の耕論は新境地のヒット企画だった。紙面の真ん中(17面)に置いているから、1面から他の面もめくって読み進む消費者行動を促す。若宮啓文を退任させた後、朝日は耕論を逆に悪用し始めていて、読者が耕論を読むのをいいことに、内容を次第に右翼色にシフトさせる悪質で巧妙な洗脳工作に及んでいた。今日(2/21)の集団的自衛権特集には、3人の論者が寄稿している。そのうちの一人がCSISのM.グリーンで、この男が何を言っているかは読まなくても分かるし、わざわざ紹介する必要もないだろう。ちなみに、安倍晋三は訪米してCSISで"Japan is back"と題した講演をすることになっている。後の二人は前国務副長官のJ.スタインバーグとMIT教授のR.サミュエルズ。

スタインバーグはこう言っている。「集団的自衛権は、国連憲章で参加国に認められている権利です」「日本だけが他国と同じ権利がなく、責任も負わないという理由は見当たりません。国際社会の一員として、日本が集団的自衛権の考え方を受け入れるのは、自然なことだと思います」。サミュエルズはこう言っている。「米国からすると、今の日米同盟は双務的、互恵的に見えない。日本が集団的自衛権を容認すれば、米国は基本的には歓迎するでしょう」。議論の中身を読み進むと、サミュエルズの方が集団的自衛権行使についてやや抑制的で、スタインバーグと較べて相対的にハト派の主張をしている。だが、米国にも、憲法解釈の変更を伴う日本の集団的自衛権の行使に対して、批判的だったり慎重な意見を持つ論者はいるはずである。日本の国情を理解し、現在の日本の右翼化傾向に懸念を覚え、憲法9条の平和主義路線を支持している論客はいるはずだ。例えばチョムスキーやスティグリッツに質問すれば、この3人とは全く違う見解が返ってきただろう。従来なら、そういった声を拾って日本の読者と世論に提示してきたのが、まさしく朝日新聞だったはずである。今回(2/21)の企画は、日本が憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使に踏み切ることを、米国の専門家は例外なく歓迎し容認していると伝える報道であり、米国は全員が歓迎しているから、臆せず橋を渡ってよいと読者の背中を押す記事だ。集団的自衛権行使に慎重派が多い朝日の読者を、朝日自ら洗脳工作して変節へ誘導する記事に他ならない。

サミュエルズは、イラクで空自が米軍兵士を空輸した行為やインド洋で海自が海上給油した活動そのものが、すでに集団的自衛権の行使なのだから、この範囲の支援を日本の判断でやればいいと言っている。これが朝日の社論なのだろう。サミュエルズもスタインバーグも、米国の論者の立場でそれを簡単なことであるように気軽に言うが、日本にとっては憲法(解釈)を変えることは国家の重大問題だ。朝日は、集団的自衛権の行使が憲法(解釈)を変える問題であることを、この3人に一言も言わせていない。つまり、この特集に意図され投企された思想性において、現在の朝日は公明党より右寄りだ。また、言うまでもないが、空自のイラク米兵輸送も海自のインド洋海上給油も、日本が国益のために独自判断した任務ではない。米国から要請され、米益を国益にスリカエて国民を言いくるめ、政府と政権が応じた誤りである。この二つの軍事行為によって、日本は中東イスラム諸国の人々の信頼を大きく傷つけ、長年の努力で築き上げてきた国益を損じる最悪の結果を招いた。スタインバーグはこうも言っている。「一方で、日本による集団的自衛権の行使の検討が、中国を標的にしたものだと受け取られないようにすることが大切です」「日中間の緊張が高まることは誰の利益にもならないからです」「(首相や閣僚らの)靖国神社参拝など、近隣諸国に不安を与えるような行動を取れば、集団的自衛権の行使は、国際社会への積極的な貢献以外の目的だと受け止められるでしょう」。これこそ、まさに現在のオバマ政権(ケリー)の本音が吐露された言葉と言える。

この判断と事情があり、今回の日米首脳会談において、米国側からの日本の集団的自衛権行使へのエンドースは見送られた。米国が中国への過度の刺激を避け、安倍晋三の依頼を断ったのだ。どうやら朝日は、このオバマ政権の立場を自社のスタンスにしようとしているように見える。ハト派的な偽装と詐術で人の目を欺いた集団的自衛権行使容認の姿勢である。


by thessalonike5 | 2013-02-21 23:30 | Trackback | Comments(1)
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Commented by 竹林三十郎 at 2013-02-21 17:32 x
いつも興味深く拝見しております。
朝日の「耕論」のお話を読んで、そういえばNHKのNW9みたいだと思いました。あの番組も、当初は柳澤さんがキャスターをやっていて、比較的まともな番組だったのに、今や看板は同じでも、中身はすっかり変質。右傾化とかそういう以前に、内容がまったくお粗末で、おどろおどろしい声音の女性のナレーションで中国や北朝鮮の脅威を伝える様は、まさに北朝鮮の女性アナウンサーと瓜二つ。面白いのは、田口、大越体制になって、はっきり視聴率も落ちたそうで、視聴者は正直ですね。
朝日は読者が東京新聞に流れたら、誰が読んでくれるのでしょうね。
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