2013-02-14
「原発ほどコストの高い電力はない」説は本当か? Vol.2
「原発ほどコストの高い電力はない説は本当か?」においてkoさんから貴重なご指摘を頂きましたので、ご紹介およびご回答をいたします。長文となりましたが、ご了承下さい。
◆koさんから頂いたコメント
とりあえず原発のコスト計算のみについて記述します。火力・自然エネルギーのコストについては今回は割愛します。
0. 大前提
私は今回の事故処理コストが20兆円では済まないと考えています。また、今回の事故は非常に幸運だった(1. 事故原発が東岸で西風卓越のため放出放射能の大半が太平洋へ流出、2. 定期点検工事が予定通りだったら4号機燃料プールは水の満たされた炉心ではなく空の炉心に隣接していた筈で早期に干上がって福島第一サイトへの接近困難、収束不能になっていた)ために次の事故被害想定としては今回の1桁以上上,、を想定すべきと考えています。
そもそも東海原発1号機(電気出力15万kW)を想定した1959年日本原子力産業会議報告書「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」で最大3.7兆円と算出されております。なお、1959年の名目GDPは13兆円です。電気出力15万kWは昨今の原発の1桁下で、同一サイト多数立地の現状では接近不能->連鎖的破壊を考慮すべきと考えます。当該報告のサマリーとしては http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/genpatu/gunshuku9905.html を挙げます。
1. 以上をおいておくとしても、計算された中のみに限定してもいくつか数字の誤りがあるようです。
1.A 「1年あたりの原発事故処理コスト=約5.7〜20兆円÷46」と除算に日本の原子力発電開始からの年数を使用されてますが、事故確率は稼働炉数比例と考えるべきで、事故までの経過炉年を基準に考えるべきです。福島第一事故まで1500炉年であり、この事故を少なめに「1事象」とカウントすると、事故時点で50炉が稼働していたことより、30年に一回事故が起きると考えられます。「3事象」とカウントすると10年に一回事故が起きる計算です。
1.B 「1年あたりの廃棄物処理コスト=約18.8兆円÷72年」と除算に72年という数字を使用されていますがこれはどこから採られたのでしょうか。リンク先で「試算は、再処理工場が二〇〇六年から四十年間運転することを前提に、その後に解体・処分に必要な七八年ごろまでの期間が対象。」とありますが、これは18.8兆円かけて *四十年間運転* というものです。運転期間を2078-2006で計算するのは単純に間違いです。
以上の点のみ考慮しても(今回の事故を「1事象」とカウントしたとして)最大1.3兆円/年かかることになります。更に燃料費を「日本のウラン輸入金額が45年間で約4.4兆円に過ぎない」として1000億円程度と見積もったのか 算入していないようですが、発電炉数が増えてきていたことを考えると2010年レベルの発電量を確保するには2000億円程度はかかると見るべきで、これは無視してはいけないレベルの金額と考えます。算入すると最大1.5兆円/年です。
2. 原発に電力を依存する前提で原発新設不要 というのは現在の日本の原発の炉齢が平均20年以上で設計耐用年数が30年程度ということを考えると不自然です。passerbyさんの指摘の通り新設コストも含めてkWh単価を算出されるべきかと考えます。その際には、原発新設費用が大幅に上昇しつつあることを考慮する必要があります。昔の古い安全基準の炉を新設するのが受け入れられるとは思えませんので。
1 で指摘した部分だけでも4倍の違いが2倍に縮まります。0を考慮しないでこれですので、「有意に低いコスト」というのは疑問である、と考えます。
◆ご回答
◆0. 大前提
福島原発事故に「不幸中の幸い」の側面があった点は私も同意します。ただ、事故被害額の試算においては50年代の試算ではなく、オリジナル記事の通り最新の東日本大震災の試算を用いさせて頂きたいです。
◆1.A 原発事故処理コスト
「1年あたりの原発事故処理コスト=約5.7〜20兆円÷46」と除算に日本の原子力発電開始からの年数を使用されてますが、事故確率は稼働炉数比例と考えるべきで、事故までの経過炉年を基準に考えるべきです。福島第一事故まで1500炉年であり、この事故を少なめに「1事象」とカウントすると、事故時点で50炉が稼働していたことより、30年に一回事故が起きると考えられます。「3事象」とカウントすると10年に一回事故が起きる計算です。
ご指摘頂いた試算の方がより正確と考えますので、下記の通り訂正させて下さい。
1年あたりの原発事故処理コスト
=約5.7〜20兆円÷30年
=約1900〜6700億円
◆1.B 廃棄物処理コスト
「1年あたりの廃棄物処理コスト=約18.8兆円÷72年」と除算に72年という数字を使用されていますがこれはどこから採られたのでしょうか。リンク先で「試算は、再処理工場が二〇〇六年から四十年間運転することを前提に、その後に解体・処分に必要な七八年ごろまでの期間が対象。」とありますが、これは18.8兆円かけて *四十年間運転* というものです。運転期間を2078-2006で計算するのは単純に間違いです。
72年というのは、「引用記事」に記載されている、再処理工場の「操業」に40年間、「廃止」に32年間に沿って合算したものです。
同記事に記載されている通り、バックエンド費用約18.8兆円の大半を占める11兆円は、再処理工場の「操業」および「廃止」に伴い発生するとのことなので、両期間を合算した72年を用いています。そのため当初の試算で問題ないのではないでしょうか。
1年あたりの廃棄物処理コスト
=約18.8兆円÷72年
=約2600億円
◆1.C 廃炉コスト
1年あたりの廃炉コスト
=約2.8兆円÷20年
=約1400億円
◆1.D ウラン購入コスト
更に燃料費を「日本のウラン輸入金額が45年間で約4.4兆円に過ぎない」として1000億円程度と見積もったのか 算入していないようですが、発電炉数が増えてきていたことを考えると2010年レベルの発電量を確保するには2000億円程度はかかると見るべきで、これは無視してはいけないレベルの金額と考えます。
了解しました。まずご指摘通りの2000億円を試算に反映させて下さい。
1年あたりのウラン購入コスト
=約2000億円
◆2. 原発新設コスト
原発に電力を依存する前提で原発新設不要 というのは現在の日本の原発の炉齢が平均20年以上で設計耐用年数が30年程度ということを考えると不自然です。passerbyさんの指摘の通り新設コストも含めてkWh単価を算出されるべきかと考えます。その際には、原発新設費用が大幅に上昇しつつあることを考慮する必要があります。昔の古い安全基準の炉を新設するのが受け入れられるとは思えませんので。
主張内容は理解いたしますが、これは原発固有の問題ではなく、火力発電など他の発電手法でも同様の新設コストが発生するので、両者をコスト比較する必要があるのではないでしょうか?
しかしながら私は両者についてのコスト試算情報を持っていないため、今回は試算から割愛させて下さい。
以上から試算内容をアップデートすると、隠された原発コストは年間約7900〜1兆2700億円となりました。現状の原発停止の追加コストの半分弱程度ですが、燃料代の推移によってはその差はかなり縮まる可能性もありそうですね。ともあれ、貴重なご指摘を頂きましたことを感謝します。
1年あたりの隠された原発コスト
=廃棄物処理コスト+廃棄物処理コスト+廃炉コスト+ウラン購入コスト
=約1900〜6700億円+約2600億円+約1400億円+約2000億円
=約7900〜1兆2700億円
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