CCTVアメリカ 対米広報に人材集結
中国の情報文化外交


谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)  慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。

中国はいま某国で

中国はアフリカや中南米、太平洋諸国でどんな活動をしているか。日本の報道が見落としてきた第三国での動きを追いかける。ウェッジ誌連載中のコラムを逐次アップ。

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世界の有力各国が運営する国際テレビ放送のうち、いま最もカネに糸目をつけないのはもはやカタールのアル・ジャジーラではない。

中国の対外広報予算
BBCの19倍?

 英公共放送BBC、米CNNなどではさらにない。2012年を国際化へ向けた大躍進の年とし、米国向け専門放送を始めてもうじき1年になる中国の中央電視台(CCTV)である。国営・中国共産党直結の放送局だ。

 米国の『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』が伝えたところ、中国が対外広報のため割く予算は、09年単年度だけで87億ドルに達した。CCTV英語放送単体の年間予算が、BBC(の恐らく海外放送)が1年で使うカネの実に19倍(!)なのだという。

 これに対し、日本の外務省が13年度予算概算要求に「国際世論の形成・対外発信力の強化」として掲げた金額は172億円。比べるべくもない。

 中国の情報文化外交にとって、本丸とはあくまで米国だ。台湾奪還が可能か。アジアの覇権を握れるか。この先中国は、米国とぶつかる。中国の通信会社(華為・ZTE)は、安全保障上の懸念を案じる米国に十分入れない。そんな状態も北京は解消したい。

 ソフトな中国、活発(そう)な言論機関をもつ中国を、米国の、とくに知識層に印象づけることこそは対米専門放送局「CCTVアメリカ」の狙いであろう。12年2月、戦訓を地で行くかのように、資源をドンと集中投入して始めたのがこのいかにもCNN的な、英語放送のチャンネルだった。

 編成局の本部は「敵陣」ど真ん中、ワシントンに置き、ビル3フロアを最新鋭設備で埋めた。ビジネス番組のスタジオを置いたのは、ニューヨーク・タイムズスクエアに面したNASDAQ(新興企業向け株式市場)の中だ。

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谷口智彦(たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。

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