豪奢でありながらも、黒に統一された室内。
広く天蓋に覆われるベッドの上。
女の上でふと男は顔を上げた。
「ほう?」
「あら? どうしたのスレイ。疲れたのかしら?」
微かに片眉を上げた男―スレイに対し、組み敷かれた女―サイネリアはどこか挑発的に妖艶に笑う。
対しスレイはただ余裕の笑みを浮かべ、ベッドの上に広がったサイネリアの髪を手に取り梳き口元に当てると、どこかからかうように告げる。
「確かに、色々煩かったシャルロットやアルファを説得するのは多少手間取ったが、誰かを言い包めるのも一種の技術だからな、簡単な事だ、疲れる理由にはならんな。ましてコッチの話なら―」
「っ!!」
ベッドが揺れると同時、サイネリアの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
「俺の場合底なしなんでな? 余裕が無いのは初めてでまだこなれてもいないあんたの方だろう? だがまあ、すぐに身体も魂も俺色に染め上げて、快楽しか感じないようにしてやるが」
「っ、本当にあなたはっ!! それじゃあいったいどういう理由でいきなり遠くを見るようにしたのかしら? 今ここに居る女に失礼だと思わない」
「そいつは済まなかった」
軽く肩を竦めてみせるスレイ。
ただ、と後を続ける。
「少しばかり想定外な奴に呼ばれたのと、予想通りに動いてる奴が“視えた”のでな」
「どういう……っ!?」
いきなりまたも身体を動かされ口篭るサイネリア。
「何、どっちも解決済みだ。呼んだ奴の方には俺自身が向かったし、動いてる奴の方はディザスター達がどうにかするだろうさ。あいつらの事は信頼してるからな」
「あなたが向かったって、あなたはここに居るでしょう?」
サイネリアの疑問に、スレイは軽く笑みを浮かべ肩を竦める。
「俺はありとあらゆる場所に無限を超えて遍在できるのでな。ならば何故あの場に俺が居なかったのか、とかそういう疑問が湧く場面もあるだろうが、俺は必要最低限にしか同時に存在しないようにしてるんでな、自己への縛りって奴だな」
「……私の勘だと、女関係では、その縛りはかなり緩そうね?」
「正解だ」
口角を吊り上げ楽しげな表情を浮かべるスレイ。
「だが、ディザスター達の方に行かないのは、先刻も言った通りシンプルにあの三匹の事を本気で信頼してるからだな。あいつらならあいつ程度はどうにかするだろうさ」
「あいつ、って?」
「その内分かるさ」
軽く肩を竦め誤魔化すスレイ。
「本当にあなたは……」
呆れたような声を出すサイネリアに顔を近付け口付けるスレイ。
「それより続きだ、あんたの身体を徹底的に味わうって役得もあるが、あんたの魂に吸収した闇の力が強大過ぎて、魂が今にも暴走して壊れかねないのを調律する意味もあるんだからな。魂まで共鳴させ繋がり合わないとな?」
「先に気を逸らしたのはあなたでしょう?」
「まあな、だから今此処の俺はあんただけに集中する事にするさ」
「あっ?」
そしてスレイはサイネリアの身体へと自らの身を重ねて行く。
【???】???“???”???
「ふふん?」
呼ばれるがままに跳んだスレイは、そこに在る不可思議な光の繭を見て楽しげに鼻を鳴らす。
辺り一帯が玩具に溢れた空間。
その一つ一つがただの玩具ではない。
例えばとある盤上遊戯。
これで駒を動かせば、そのままに戦争が起こり、その結果通りに人が死に国が滅ぶ。
そんな物騒な代物ばかり。
だが今はそんな物より。
脈動する光の繭。
脈動する度に繭の内の力の波動が圧倒的に膨れ上がっていく。
それを感じスレイは理解する。
こいつが。
ロドリゲーニがスレイをこの場に呼んだ意図を。
「なるほど、俺に恐怖の感情を返すつもりか」
と、肩を竦めて口角を吊り上げ笑う。
「しかしまあ、己が肉体の融合が済んでも居ないのに呼ぶとは、出てきてすぐに俺の顔を見たかったのかね? 随分とまあ熱烈なラブコールだ」
ふと、その言葉に反応するかのように乱れたしかし強大な力の波動が光の繭から放出される。
涼しげな顔で受け流しながら、そこらにあった巨大な玩具に背を預け腕を組むスレイ。
「まあいい、待ってやるよ、今更だ。だが俺に恐怖を返すその事をお前が後悔しなければいいがな?」
何かを主張するような光の繭をやはりあっさりと無視してスレイは遠くを“視る”ようにして呟いた。
「さてと、ディザスター、フルール、ロード、そっちは任せたぞ?」
そして目を閉じスレイは待つ。
己が因縁の相手が完成し生まれ変わるその時を。
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
感想及びレビューは受け付けておりません
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。