(2013年2月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国の温家宝首相の親族の蓄財疑惑を報じた米紙ニューヨーク・タイムズが先月、中国のハッカー集団による攻撃を受けたと発表すると、中国政府は躍起になって関与を否定した。しかし、欧米企業を狙ったサイバー攻撃に関する調査結果が明るみに出るなか、関与を繰り返し否定する中国の立場は揺らいでいる。
■人民解放軍が攻撃に関与か
米情報セキュリティー会社マンディアントは、企業に対するサイバー攻撃を数年にわたって調査してきた。同社は長大な報告をまとめ、繰り返し攻撃を仕掛けている「APT1」と呼ばれるハッカー集団が、中国人民解放軍の一部隊と類似していることを指摘した。決定的な証拠とまでは言えないが、外国企業へのサイバー攻撃と中国軍を結びつけるうえで大きな説得力を持つ内容だ。
世界的にサイバー攻撃は増加傾向にある。ネット活動を監視するアカマイによると、中国発のサイバー攻撃比率は2012年第2四半期から第3四半期にかけて倍増した。中国だけではない。2位の米国、3位のロシアもこれを追う。サイバー空間の戦闘は世界の安全上の五大脅威のひとつであり、ひとごとでは済まされない。
イランの核施設攻撃のために米政府が使ったとされるウイルス「スタックスネット」は、インフラの機能を停止させるウイルスの威力を知らしめた。しかし、企業が攻撃に遭いネットワーク化した世界の安全が損なわれれば、経済への打撃ともなる。核兵器のような差し迫った脅威ではないかもしれない。だが、同様の軍拡競争を招きかねず、現実世界に重大な影響をもたらす。
■各国はサイバー攻撃への関与を認めよ
中国、米国、その他の国は少なくともサイバー活動に関与していることを認めるべきだ。個別の作戦を明らかにせよという意味ではない。オバマ政権が「スタックスネット」を用いたことが発覚したことで、米国の安全保障政策の評判は傷ついたかもしれない。しかし、サイバー活動に関与する組織の存在をまずは認めなければ、核兵器と同様の共通ルールづくりは始まらない。ルール作りの協議には各国の軍、とりわけ中国人民解放軍の参加が不可欠となるだろう。
これまで中国政府は、国内を発信源とする組織的攻撃ではなく、クレジットカード詐欺などサイバー犯罪への国際協力を進めることで批判をかわそうとしてきた。しかし、中国政府や海外展開をめざす中国企業が信頼を得るには、サイバー活動を巡る秘密のベールを脱ぐ必要がある。将来の危機を食い止めるために国際社会の共通の取り組みが必要だ。
(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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