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国際
【東亜春秋】編集委員・山本勲 対日強硬で権力固める習氏
習近平政権が尖閣諸島をめぐる日中対立を好機とばかりに、露骨な対日強硬策で権力固めを急いでいる。対外危機を利用して政権強化を図るのは共産党歴代指導者の常套(じょうとう)策だが、21世紀のこの時代に危険極まりない。仮に中国軍艦艇による自衛隊護衛艦へのレーダー照射が軍の一部の暴走だったとしても、そのタネは習総書記の激しい対日非難と民族主義の鼓吹がまいた。安倍晋三首相の訪米では、中国の愚行抑止で日米が完全に一致するよう強く望みたい。
「中華民族の偉大な復興を実現するには必ず富国強軍を堅持し、軍は党の指揮に断固従わねばならない」
習総書記は昨年末の広州戦区視察時にこう演説。さらに「招集すればすぐ来たり、来たれば能(よ)く戦い、戦えば必勝せねばならない」と檄(げき)を飛ばした。これは中ソが一触即発の危機にあった1968年に毛沢東が発した檄とされるだけに、真意をめぐるさまざまの観測が内外で飛び交った。
南部・広州での発言だけに「南シナ海を意識した発言か」との見方も出たが、真相はその後の尖閣情勢の突出した緊張が物語っている。習総書記は日本を国民の政権不満への“はけ口”にしつらえ、発足間もない弱体政権の求心力強化を狙ったとみられる。
というのも党新指導部の要職は江沢民前国家主席や胡錦濤国家主席系の人脈が分け合い、自前の人材はほとんどいない。習総書記の唯一の強みは軍部との緊密な関係だった。父の習仲勲元副首相は革命期の軍人で、本人も大学卒業後は党中央軍事委員会に就職。その後の党地方幹部時代も各地で軍職を兼務してきた。
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