
性行為の本来の目的は、子孫を残すことです。健康な男女がセックスをすれば妊娠するのは自然の常。健康でいるために、望まぬ妊娠をしないために、性行為の快感を楽しむためにも、避妊をすることは大切なことです。自分を守ることは相手を守ることであり、将来の赤ちゃんを守ることでもあるのです。
避妊は二人で行うもの。避妊により急増する性感染症(STD)も防ぐことができます。お互いの相手任せにすることなく、正しい知識を身につけましょう。そしてその知識をいかして、行動してください。
子宮、卵管、卵巣、膣……女性には生まれながらにして、子どもを産むための機能が備わっています。それらは毎月、妊娠に備えて活動をしているのです。女性の体には「妊娠しやすい期間」と「妊娠しづらい期間」があり、これは生理の周期からわかります。
自分の体のリズムをつかむのには、基礎体温を測ってみるとよいでしょう。生理が始まった日から排卵期までのおよそ2週間が低温期、排卵後から次の生理までの2週間は高温期が続きます。低温期から高温期に変わる直前が排卵日で、この前後が最も妊娠しやすい時期です。ちなみに生理中は妊娠しないという知識は間違いです。

体温が高温期に入り、2、3日たつと「妊娠しづらい期間」になります。この期間を「安全日」と表現することが多いのですが、実際には排卵日を特定することが難しいので、「安全日」を生理の日や、体調などから割り出すことには無理があります。
避妊ナシで望まぬ妊娠を避けることはできないと考えたほうがいいでしょう。あえて言うなら、セックスをしないか、ピルを正しく服用していれば、毎日が安全日というわけです。

いちばん手軽な避妊具として、コンドームに勝るものはありません。正しく使えば非常に高い確率(約90%)で避妊と性感染症を防ぐことができます。価格も安いし、コンビ二等でも手に入れることができます。
ただ、コンドームは男性がつけるものなので、女性がいくら予防に熱心でも、つけてもらえなければ避妊にはなりません。望まぬ妊娠をしてしまったら、それは二人の責任です。だからコンドームは女性が用意してもちっとも恥ずかしいことではないのです。相手につけてもらうのも、自然の行為の中に入れたいものですね。
コンドームの装着について、「こんなことを言ったら嫌われるのではないか……」あるいは「相手がいやがるので、仕方なく……」と思うなら、その時点で、相手があなたを思う気持ちがわかります。それがお互いの愛情というものです。冷静に考えてみてください。たかがコンドーム、されどコンドームです。
コンドームの注意点空気が入らないようにコンドームとペニスの皮膚を密着させるのがポイント。また、挿入前に必ず付けること。
爪でコンドームに傷がつかないように注意。穴が開いてしまうと、そこから精子がもれてしまいます。またペニスが勃起したら空気が入らないように根もとまでつけよう。射精後は、すぐにペニスを抜いて、精液がこぼれないようにします。 また、2枚重ねると、外れたり破れたりする事故が起りやすくなるので、絶対やめてください。
日本で認められているのは低用量ピルで錠剤となっています。ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンを合成した薬で、服用すれば主に排卵を抑制し、体が妊娠に近い常態になります。つまりピルは、「人間は、妊娠中は新たな妊娠をしない」という原理を利用したものです。飲み忘れることがなければ、妊娠率は0.1%ともいわれています。
ピルを服用するためには、医師の処方箋が必要です。また、1回に処方される量は多くても数周期分なので、数カ月に一度、婦人科に通う必要があります。費用は、自由診療といって価格の設定は各医療機関に任されていますが、月3000~4000円程度のようです。健康保険は使えません。
ピルを飲むとホルモンバランスが安定することから、生理痛、月経前緊張症(PMS)やニキビの症状を軽減し、現代女性に増加傾向にある子宮内膜症、乳がん、卵巣がんなどの病気のリスクを減らすことから注目されています。
ピル(経口避妊剤)ってどんなもの?女性が飲む避妊薬。1日1回1錠を服用。医師の処方箋が必要。
どう服用するの?3週間飲んで1週間休むタイプと、その1週間はプラセボ(偽薬)のむタイプがある。ピルは1日でも飲み忘れると効果がなくなってしまう。
注意点飲み始めのころに、吐き気や頭痛がすることがある。多少の体重増加などがある人も。喫煙者は血栓症の危険性がある。妊娠したくなったら服用をやめればいい。
ピルは高血圧やコレステロール値の高い人、乳がんや子宮がんなど婦人科系の病気の疑いのある人は服用できません。また血栓症にかかった人やなりやすい人、35歳以上で1日15本以上の喫煙者はやめたほうがよいでしょう。また、ピルは性感染症(STD)の予防にはなりませんので、STDの可能性のある場合はコンドームを使用してください。

殺精子剤ペニス挿入の30分ほど前に、フィルム、錠剤、ゼリー状になった殺精子剤を膣内に装着する。薬を入れるタイミングが難しい。
ペッサリー膣内に子宮口を覆うように丸いゴムキャップを装着して、精子が子宮に入らないようにするもの。性行為前に女性が装着する。産婦人科医や受胎調節実地指導員である助産師・保健師・看護師がいる施設を訪ねて、自分に合ったサイズを選んでもらい、指導を受ける必要がある。
IUD(避妊リング)子宮内に装着して受精・着床を防ぐ器具。出産経験のある女性に適した避妊で、婦人科で装着してもらう。一度、装着すれば、2、3年は効果がある。
女性用コンドーム性行為を行う前に、女性の腟内に装着する女性用避妊具。外陰部と腟内の双方をおおう構造により、精子の侵入を防ぐ。
緊急避妊とは、避妊をしないでセックスしてしまったとか、コンドームが破けるなど避妊の失敗が起こったとき、またレイプなどの被害にあった場合に、妊娠を防止するという方法です。最も一般的な方法が「緊急避妊ピル」(アフターピルとも呼ぶ)です。
「緊急避妊ピル」はピルに含まれているホルモン剤の効用により、子宮内膜の状態を変え、精子を着床しないようにするもの。病院で診察を受け、72時間以内に服用しなければなりません。
「緊急避妊ピル」は、一時的ですが気持ち悪くなったり、吐いたりする副作用があります。時には、頭痛、めまい、腹痛、乳房緊満などが起こることも。これらの副作用は24時間以上継続することはありません。もしかしたら…?と思ったら、婦人科を訪ねてみてください。
ただし、事前に行う避妊のほうが避妊率が高いので、あくまで緊急事態での方法と考えましょう。