「汚染土壌の貯蔵が福島では大きな課題だが、ベラルーシでは30キロ圏内に処分場をつくった。非常事態省の役人に話したところ、日本がなぜ汚染土の行き場で悩むのか理解できないようだった」
「低レベルでも持続的な被ばくによる健康影響を懸念する立場から、私は子どもや妊産婦を汚染がない地域に一定期間移住させた方がいいと考えている。実際に松本に移住されてきた方もいる。家族で移住し新たな生活基盤を築くのが望ましいが、親が動けないのだったら集団疎開のような形で子どもだけを移してもいい。それもつらいことだが、考えた方がよい」
■取材を終えて
甲状腺がん以外の健康被害に関しては議論があるところだ。放射線防護の観点から被ばくによる健康影響にはしきい値(それ以下なら問題ないという値)はないとされるが、低レベル被ばくと疾病の因果関係を明らかにするのは容易ではない。また他の環境要因に比べ、被曝(ひばく)によるリスク増は小さいとも推定される。
菅谷市長が福島でも広範囲の移住を選択肢にあげるのは福島第1原発から離れた福島市など「中通り」でも事故後に1平方メートル当たり10万ベクレルを超える放射性セシウムの土壌汚染があったことがわかっているからだ。これはベラルーシの軽度汚染地にほぼ相当する。除染によって住宅地の汚染度は下がっていると考えられるが、菅谷市長はベラルーシの状況からみて油断しない方がいいと考えている。
また市長の耳にはベラルーシにおける未熟児や早産・死産の増加といった周産期医療での問題も聞こえてくるという。これもはっきりとしたデータがあるわけではない。ただゴメリに周産期医療センターを建設する計画があり、そこにチェルノブイリ医療支援の一環で長野県立こども病院(安曇野市)で研修した経験を持つ医師が参加する可能性があるそうだ。現地の確かな情報が入りやすくなることを期待している。
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甲状腺がん、チェルノブイリ、ベラルーシ
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