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――>液肥の土壌灌注、葉面散布で対応する
表.元素の欠乏・過剰障害の地上部の典型的は症状
症状 |
欠乏元素 |
過剰元素 |
|
クロロシスを生じる |
上位葉から |
鉄、イオウ(亜鉛、マンガン、銅) |
銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、カドミウム |
下位葉から |
チッソ、カリ、マグネシウム(リン、亜鉛、マンガン、銅) |
ホウ素 |
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上位葉の生長停止 |
ホウ素、カルシウム |
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斑点症状 |
大型 |
カリ |
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小型 |
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マンガン、ニッケル、カリ |
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奇形・亀裂 |
葉に |
モリブデン |
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茎に |
ホウ素、カルシウム |
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葉縁から枯死 |
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カリ |
ホウ素(リン) |
クロロシス(白化)の出方で欠乏要素を知る
元素の欠乏症・過剰症の発生には規則性がある。
・ 作物の生育はあまり劣らず、生長点から黄色くクロロシスを生じるのは鉄欠乏の可能性が高い。
・ 果実にネクロシス(壊死)を生じたり、茎にひび割れを生じるのはカルシウムやホウ素欠乏の可能性が高い。
・ 下位葉から葉脈の緑を残し、葉全体にクロロシスを生じるのはマグネシウム欠乏。
・ 作物全体の生育が悪く、葉脈の緑も黄色く、下位葉全体にクロロシスを生じるのはチッソ欠乏の特徴。
クロロシスが新葉から出るもの 旧葉から出るもの
・ 必ず新葉や生長点から欠乏症状が発生しやすい元素は鉄、カルシウム、ホウ素である。
・ 必ず旧葉から欠乏症状を発生しやすい元素がマグネシウム、カリウム、チッソである。
・ 亜鉛、マンガン、銅、モリブデンは両者の中間で、作物の生育スピード、作物の種類により、新葉から欠乏症状が出る場合と、旧葉から発現する場合がある。
・ 元素の過剰症状の発生にも規則性があり、二次的に生じる鉄欠乏症状をのぞき、元素そのものの直接的過剰症状は、一般的に旧葉から発生する。
・ 果実の生育が旺盛になり、マグネシウム、カリウムの必要量が多くなると、果実近傍の葉にこれらの欠乏症状が出る。
元素の種類により、@成長点部位の元素要求程度、A旧葉部での元素の存在形態による分解難易度、B元素の篩管転流能力に違いがあるため、元素の種類により症状の出る部位が異なる。
養分の吸収・転流の特徴と欠乏・過剰の出方
根からの養分吸収に2つの経路
作物は養分の大半を根から吸収するが、根の表面から導管までの養分の吸収経路は2つある。
一つは、細胞壁からなるフリースペース(アポプラストと呼ばれる組織)をマス・フロー(水の流れとともに移動する)と拡散(高濃度側から低濃度側へ濃度勾配に従って移動する)によってイオンが移動する経路である。大半の水やカルシウムが主としてこの経路を通る。
もう一つは、根組織の表面あるいは皮層の細胞に積極的に吸収されたイオンが、原形質連絡系を通って、拡散と能動的な原形質流動によって細胞間を移行し、導管へと入っていく経路である。リンやカリウムは主としてこの経路を通る。
液胞と細胞質をあわせてシンプラストと呼ぶ。細胞内を通る経路のことである。
カルシウムとリン・カリウムとで大きな違い
培地の養分濃度が低い場合、カルシウムも細胞内経路により能動的に吸収移行されるが、その量は僅かである。
リン、カリウムにおいても濃度が高い場合には、一部細胞外経路により吸収されることがある。この経路は代謝的制御下にないので過剰障害の原因の一つになる。
葉肉においても同様な2つの経路が維管束の末端と蒸散している表面の間に存在しており、水の移動は主として細胞外経路を通じて行われる。
導管だけで転流する元素 篩管でも転流する元素
2つの経路から導管に入った各元素(イオン)は、蒸散流にのり地上部へと移行転流していく。
導管のそばには篩管があるが、リン、カリウムは急速な側方輸送により、導管上昇中にも篩管へ自由に吸収移行され、光合成産物であるショ糖と同様に、導管とは別な流れで作物全体に上方にも下方にも移行分布する。節のところにミトコンドリアを多く含む転移細胞があり、これが選択的に養分を吸収蓄積し、側方輸送への交通整理をしている。
(植物体から糖液を吸っているアリマキの口元を切り取り、染み出した液体を分析する。)
新葉や果実にカルシウム欠乏症が出やすい理由
老化細胞中の元素が、有機構成成分から分解されて再転流するのも、この篩管に入ってから、他の新しい部位に転流するのだが、カルシウムは再転流の際殆ど篩管を通ることが出来ない(理由不明)。従って、旧葉にカルシウムが十分あっても、再転流して新葉部や果実に移行できにくい。
転流時の元素の形と欠乏・過剰
元素の導管中や篩管中の移行形態。
・ チッソは硝酸態、アミノ酸、アマイド、ウレイドなどが主で、アンモニア態は殆どない。
・ リンは正リン酸の形態が一般的だが、篩管中では糖リン酸の形でも移行する。
・ カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、モリブデン、マンガン、ホウ素、塩素はイオンの形でそのまま導管中でも篩管中でも移行する。
・ カルシウムは無機イオンの形で転流するが、篩管中の移行量はごく僅かである。
・ 鉄はクエン酸などの有機酸とキレート化合物を形成して移行する。
薬剤や病原菌は導管を通る
導管は半ば死んだ細胞で出来た管の様なもので、分子量の大きい殺虫剤、除草剤、抗生物質、合成生長調整物質もそのままの形で、導管を通って作物体内に広がり分布する。バーティシリウムなどの病原菌の分生胞子や病原菌の毒素も導管の中を通って上部へと移行する。
ウイルスは導管にも篩管にも入り、光合成産物とともに、上方にも下方にも移行する。ビタミン類も主として篩管中を移行する。
リン過剰による鉄欠乏発生の仕組み
リン過剰で生じる鉄欠乏は、導管中でリン酸鉄の沈殿が出来てしまうためである。従って、キレート財であるEDTAやクエン酸を投与するだけで、鉄欠乏を防げる場合がある。
図.葉の表面構造と養分吸収
@葉の表面(クチクラ)からの水分蒸散、裏面(気孔)からの水分蒸散
A細胞と細胞を貫通する原形質の糸「原形質連絡」
B「原形質連絡」を通じて吸収される
葉面に散布された養分は葉の表面からも吸収される。細胞と細胞とが細胞膜を貫通している微細な原形質の糸、すなわち原形質連絡糸(プラズモデスマータ)で相互に連絡を取っているのと同じような組織がクチクラ層を貫通している。葉の表面にはワックスがあるため、界面活性剤が共存すると表面吸収効率が高まる。
特定元素の葉面散布
モリブデンが作物に必須であることは葉面散布によってであった。
葉からの養分吸収は、原形質連絡糸(プラズモデスマータ)と同じような組織がクチクラ層を貫通しており(エクトデスマータ)、それを経由して葉肉細胞に吸収される。
特定の元素を葉面散布することにより、副作用的に他の元素の吸収移行を活性化することもある。マグネシウムを葉面散布することにより、リンの移行率が増える(ゴマ)。老朽化水田における水稲へのマンガンの葉面散布、晩霜による障害回復のための尿素の散布も効果がある。
茎からの注射に効果
野菜の茎に注射器を下から上向きに差し込んで1〜2時間置いておく。導管の蒸散流に伴い溶液が吸収される。アセトンで脱脂処理した木綿糸を用いても養分を吸収させることが出来る。
渡辺:原色生理障害の診断法(農文協)
微量元素、葉面散布、土、作物、状態、測定について、Googleサイト内検索をしてみましょう。
http://www1.ocn.ne.jp/~amiyacon/
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