最近サムスン電子をはじめとするサムスングループ15社の株式時価総額が韓国株式市場の約30%を占め、同グループの総売上高は韓国の国内総生産(GDP)の30%を超える。こうした状況から、おのずと「サムスンが揺らいだら韓国経済は大丈夫なのか」という疑問が生じる。
北欧のフィンランドは難題を解く手掛かりを提示してくれる。GDPの25%、時価総額の70%を占めた携帯電話端末最大手のノキアが没落しても、フィンランド経済は最近3年間で平均2.1%の成長を達成し、ユーロ圏の平均(0.9%)を上回った。1990年代に20%代だった失業率は、2010年には8.3%、昨年は7.6%に低下した。
フィンランド経済がさらに強さを増した最初の理由は、約30年にわたり築いてきた「起業文化」だ。1984年に設立された起業促進機関「国立技術開発庁(テケス)」とベンチャー投資ファンド「フィンベラ」が代表的だ。フィンベラは約26億ユーロ(約3250億円)規模で、毎年ベンチャー企業約3500社を支援し、1万人以上の雇用を創出している。毎年20件以上のプログラムを推進するテケスは2011年、1928件のプロジェクトに6億1000万ユーロ(約760億円)を支援した。「起業の夏」「スタートアップサウナ(起業コンペティション)」「起業ワークショップ」などというイベントや会合も相次いで開かれる。2009年にゲーム『アングリーバード』を世界的にヒットさせたソフトウエア開発業者ロビオは、こうした豊かな生態系の中で生まれた。
地域社会に密着した再就職訓練と生涯教育のシステムも注目される。住民の居住地から近い学校を「イブニングスクール」とし、午後4時から10時まで政府主導により自発的な学習の場を提供したり、労働・サービスの訓練など実用的な教育を行ったりしている。最大の成人教育センター「タック」は毎日5000人を対象に92の資格コースを開講している。政府はノキア社員の起業を専門的に支援する「イノベーション・ミル」というプログラムを実施しており、ノキア退職者が設立した企業は300社を超える。
1970年代初めに公教育の強化に着手し、大学まで無償教育を実施しているほか、成績よりも潜在力の開発、科目別の学習達成度を重視するフィンランド式の教育も根底にある。フィンランドは昨年、世界最大の教育企業ピアソンの調査で世界1位の「教育大国」に選ばれ、経済協力開発機構(OECD)による国際的な学習到達度調査(PISA)で3回連続1位となった。「ノキアの没落がむしろフィンランドにとってはよかった」という言葉が流行するのも、こうした教育分野の競争力を土台にして、再就職、生涯教育のインフラを構築し、数十年にわたり起業活性化に向けた努力を重ねてきた「起業DNA」が根付いているおかげだ。
もちろん、韓国経済のためにサムスンは今よりも強くなるべきで、第2、第3のサムスンの登場が望まれる。しかし、サムスンのような大企業に頼ってばかりでは韓国経済が発展することはできず、サムスンが今より弱い状態でも韓国経済が生き残る方策を準備しておく必要がある。フィンランドがはるか以前に開始した自由な起業への取り組みや社会全体の革新に、韓国も本格的に着手すべきだ。