悪質運転:法改正試案、被害遺族ら不満の声も 「甘さ感じる」

毎日新聞 2013年01月17日 大阪朝刊

 悪質運転に対する新しい罰則を検討している法相の諮問機関・法制審議会の刑事法部会が16日に示した法改正の試案は、悲惨な交通死傷事故の遺族や被害者の要望に向き合うものだった。しかし、遺族らの要望が100%かなうものではなく、評価とともに不満の声も聞かれた。

 昨年4月、京都府亀岡市で集団登校中の児童ら10人を死傷させた少年(19)=自動車運転過失致死傷(上限は懲役7年)などの罪で公判中=は無免許運転だった。だが、試案で無免許運転は危険運転致死傷罪(同20年)の適用対象にはならなかった。

 妊娠7カ月だった松村幸姫(ゆきひ)さん(当時26歳)の父中江美則さん(49)は「僕たちの活動が(試案という)一つの形になったことはありがたい」とする一方、「無免許運転は故意で、危険運転と同じはず。今回の結果は甘さを感じる」と納得できない表情を見せた。

 小谷(おだに)真緒さん(当時7歳)の父真樹さん(30)は「(試案が示した両罪の)『中間の罪』を作ることで、結果的に無免許運転をした人に救いの手を差し伸べているようにも思える」と語気を強めた。横山奈緒さん(当時8歳)の父博史さん(38)は「無免許でも、免許を取得したことがないケースと期限切れなどを同等に扱うかなど、議論が分かれるのではないか」と話す。

 一方、特定の病気の発作による暴走に対し上限15年の罪を新設することについて、栃木県鹿沼市のクレーン事故(11年4月)で長男大芽君(当時9歳)を亡くした伊原高弘さん(41)は「危険運転の条文改正に踏み込まず小手先だけの改正」と不満の声を上げた。遺族は危険運転致死傷罪の適用拡大を求めてきた。「持病を隠して免許を取得した悪質な運転をなぜ『危険』と名の付く交通事故の最高刑で裁けないのか」と憤る。

 運転中のてんかん発作が原因とされる暴走で7人が死亡した京都・祇園事故の遺族、奥村順子さん(65)は「発作が起きる可能性がある人間が運転することがどれだけ危険なことか、多くの人に認識してもらいたい。今の法律は甘すぎる」と一定の評価をした。

 11年10月、名古屋市北区でのひき逃げ事故で、長男の貴仁さん(当時19歳)を失った真野哲(さとし)さん(51)は「中間の罪を作ることで複雑化し、涙する遺族が出てしまうのではないか」と懸念を示した。

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