【ＢＯＸ】しずちゃん、アマ初の有料再起戦「成長の証し見せる」

俳優の伊勢谷友介と「あしたのジョー」のワンシーンを再現する山崎静代（右）

　日本アマチュアボクシング連盟は１９日、都内で会見し、４月２日に東京・後楽園ホールで「第１回女子ボクシング・チャレンジマッチ」の開催を発表した。アマ初の有料興行として旗揚げされ、女子の競技普及、発展を目的に後押しする。１１年世界選手権ミドル級代表・山崎静代（３４）＝よしもとクリエイティブエージェンシー＝の約１１か月ぶり実戦も決定。１６年リオ五輪出場を目指すしずちゃんの強力なカンフル剤となりそうだ。

　久々の実戦に握り拳だ。しずちゃんは「強いパンチをガンガン打つ。強くなった成長の証しを見せる」。自身初となる“ボクシングの聖地”後楽園でのＫＯ予告をした。

　実戦は昨年５月のロンドン五輪予選を兼ねた女子世界選手権以来、約１１か月ぶり。五輪出場を逃した後の昨年１２月の全日本選手権では、唯一の対戦相手に敵前逃亡され、戦わずして優勝した。４月の相手は１１年９月のデビュー戦で判定負けした薛春秋（台湾）に決定。キャリア５０戦以上の相手との因縁試合に向け、しずちゃんは「相手に不足なし。リベンジします」と景気よく宣言した。

　昨夏ロンドン五輪で男子はミドル級で４８年ぶり金、バンタム級で４４年ぶり銅獲得に沸いた。だが、五輪初種目の女子は３階級（フライ、ライト、ミドル）すべてで出場すらできなかった。１６年リオ五輪での躍進を目指し、国内大会を新設して女子の底上げをはかる日本連盟の山根明会長は「継続的に行い、強化につなげたい」と説明した。

ポーズをとる（左から）山根会長、山崎、梅津トレーナー、釘宮、箕輪

　試合は、国際交流のある台湾の協力を得て、４階級（ライトフライ、フライ、フェザー、ミドル）で６戦が組まれる。協賛企業の出資を主に、アマ初のチケット制（料金未定）の有料興行として運営され、一般ファンからの寄付金も募る。寄付者には観戦チケットの特典を付ける予定という。

　女子にとって少ない試合数が悩みだったが、今回の新たな興行実施で不安材料をぬぐい去ることもできる。もちろん、リオ五輪を狙うしずちゃんにとっても朗報だ。現在も、ドラマ撮影の合間にミット打ちなどの練習を行っている。「絶対に、絶対に勝ちたい！」としずちゃん。五輪への夢が４月２日から再スタートする。

　◆梅津トレーナー、病気進行で４か月前倒し
  昨年２月に病気が発見され、現在、進行性末期がんと闘うしずちゃんの恩師・梅津正彦トレーナー（４４）は「一度は昨年６月までの余命と言われ、その後は今年の冬も越せないと言われた。こっからが勝負」と語った。８月開催予定だった大会だが、梅津氏の病気の進行もあり日本連盟が４月に前倒しにした。しずちゃんにとって恩師の回復を祈って上がるリングになる。

　◆伊勢谷友介が医療費寄付金募る
  俳優の伊勢谷友介（３６）も会見に出席し、親交がある梅津氏のために医療費を募る寄付金プロジェクトの設立を発表した。１１年公開の映画「あしたのジョー」で力石徹役を演じた際、梅津氏は１０キロの減量と演技指導に協力した。顔面を本気で殴ってもらい、青あざを作って撮影したエピソードも披露。伊勢谷は「梅津さんは情熱的で、まっすぐで、優しく、温かい人。支援したい」と４・２後楽園での“友情出演”に手を挙げた。

　◆ロンドン銅・清水も参戦
  大会には、ロンドン五輪バンタム級銅メダルの清水聡（２６）、同ウエルター代表・鈴木康弘（２５）＝ともに自衛隊＝のエキシビションマッチも追加された。清水は五輪後では初のリングで、ともに国内上位ランカーとスパーリングを行う。しずちゃんの他に女子は４人の全日本女王が出場。ライトフライ級・佐伯霞やフライ級・箕輪綾子、フェザー級・林美涼に階級を上げて挑戦するバンタム級の釘宮智子が名を連ねた。

　◆女子アマチュアボクシング　０９年にＩＯＣ理事会が１２年五輪での３階級（フライ、ライト、ミドル）実施を決定、日本連盟が国内強化に乗り出した。国内の公式戦は１２月の全日本選手権だけで、国体の実施競技にも入っていない。定期開催の国際大会は４年に１度のアジア大会、隔年の世界選手権。年齢制限は３５歳。しずちゃんは１４年２月４日に達するが、３７歳まで引き上げる案も検討されており、１６年リオ五輪出場を目指している。