ついに、というよりも、ようやくにして、というべきだろう。中国共産党政権が8年にわたって検討してきた格差是正策の基本方針を、明らかにした。
所得の少ない人々の収入が増えれば、個人消費という新しいエンジンを中国経済にもたらす。勢いを欠いた世界経済を引っ張る力ともなろう。格差の縮小は中国社会の安定のためにも欠かせない。基本方針をどう具体化し実行していくのか、目を凝らしたい。
発表されたのは「収入分配制度の改革深化に関する若干の意見」という名前の文書だ。労使関係や税制、社会保障などの面から、低所得層の収入増や富裕層の収入の適正化を目指すとしている。
たとえば労使関係では、業種別や地域別の労使協議の枠組み作りを進めて「一部の企業の従業員の賃金が低すぎる問題を徐々に解決する」と表明した。
「もらいすぎだ」との批判の多い国有企業の幹部への報酬については、管理と抑制を強化する方針を示した。国有企業の政府への上納金の割合を3年内に5%引き上げるとの数値目標も掲げた。
税制面では資産課税の強化が目立つ。上海など一部地域で試験的に実施している不動産税(固定資産税の一種)の対象地域を徐々に広げる。遺産税(相続税)について「適当な時期に徴収を始める問題を研究する」とした。
方向としては望ましいと評価できるが、具体策は乏しい。
格差の広がりに対して温家宝首相らは繰り返し深刻な危機感をあらわにしてきた。にもかかわらず「若干の意見」の発表が遅れに遅れ、中身も総花的になったのは、国有企業の幹部ら既得権益を持っている勢力が強く反発したためとみられている。
具体化にあたっては一層激しい抵抗が予想される。3月に開かれる全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、どこまで実効性のある格差対策を打ち出せるか。本格的に動き出す習近平政権の指導力を占う意味でも注視したい。
温家宝、習近平
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