安倍首相の詐術に騙されるな!
〜閣議決定で河野談話は否定できない〜
安倍首相は12月30日、産経新聞の単独インタビューで、河野談話について「専門家の意見などを聞き、官房長官レベルで検討したい」と語り、村山談話については「戦後50年を記念して出された談話だが、あれから時を経て21世紀を迎えた。21世紀にふさわしい未来志向の安倍内閣としての談話を発出したい」と語り、新しい談話を出すことで事実上、村山談話と河野談話を見直す姿勢を示しました。
また河野談話について、ことさら「閣議決定を経ていない」と強調し、第1次安倍政権の2007年の時に「(河野談話の元となった)政府が発見した資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接指示するような記述は見当たらなかった」という閣議決定をしたから、河野談話には意味がないようなことをのたまいました。
しかし、この理屈は詐術そのものです。
ここでいう2007年の閣議決定とはなんなのでしょう? そもそもそれは河野談話を否定するような、重みのあるものなのでしょうか?
安倍首相のいう閣議決定とは、辻元議員の質問主意書に対する首相の答弁書のことです。
当時実現直前だった米下院決議案について、安倍首相が「米決議があったから、我々が謝罪するということはない。決議案は客観的な事実に基づいていない」「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」「定義が変わったということを前提に考えなければならないと思う」と述べたことに対して、
「@定義とは何か、A証拠がなかったのは事実とどう確認したのか、Bどのような資料があれば「当初、定義されていた強制性を裏付ける証拠」になるという認識か」
などと辻元議員は質問主意書を提出しました。これに対し、首相はこう答弁書を出しました。
「お尋ねは、「強制性」の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」
この答弁書を出したということが、安倍のいう閣議決定です。
素直に読んで、これが河野談話を否定する根拠になりうると、あなたは思えますか?
こんな答弁書など、世間に広く示したわけでもなければ、国際的に約束されたものでもありません。河野談話は官房長官の談話ではありますが、安倍首相がほのめかすように官房長官が勝手に出したわけではありません。当時の宮沢首相も含め、内閣の責任で出した談話であり、事実上外交公約としての役割を果たしてきました。
そしてこの閣議決定とやらは、事実の追認に過ぎません。河野談話の調査段階で、公的な文書の中で「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」というのは事実です。公的文書がないということを認めた上で、被害者の証言や状況証拠等をもって旧日本軍の直接的・間接的関与を認めたのが河野談話であって、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述」は見当たらなかったという事実をただ再確認しただけのものが、閣議決定なのです。
実際、河野談話は、歴代政権に踏襲されています。第1次、第2次安倍政権においてもそれは同様です。安倍首相は「新しい談話を出す」とは言えても、絶対に「河野談話を見直す」とは言えませんし、所管大臣である菅官房長官も同じです。
それでも安倍首相は、そこに問題があるかのような言動をあえて行い、人々を騙しているのです。
河野談話の事実認定の箇所にはこう書かれています。
「今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。」
読めば分かるように、河野談話の要は、軍や官憲が直接的暴力的な、つまり安倍のいう「狭義の」強制連行を行ったか否かにあるのではありません。旧日本軍の直接的・間接的関与を認め。そして日本軍が直接的・間接的に関与した「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と認めているところに意義があるのです。
「狭義の強制連行」がないからといって、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度であるという事実は何も揺らぎません。
安倍首相の詐術に、騙されないようにしましょう!
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