そこが聞きたい:中国とのつきあい方 丹羽宇一郎氏

毎日新聞 2013年02月04日 東京朝刊

 私は、民衆の不満が高まると「アラブの春」のように、何かのきっかけで噴出することもあると思っています。今回がそうだった、とは言いませんが、少なくとも一部の民衆はかなりの不満をため込んでいます。

 人口の7、8%しか占めていない中国共産党員が、14億弱の中国の民を支配できる理由は何でしょう。一つは、共産党が抗日戦争に勝ったから、中国の独立を実現できた。しかし、戦争からいったい何年たったのか。日本を訪れて、日本人はやさしくていいじゃないか、と思う中国人はたくさんいます。もう一つは、急速な経済成長は共産党のおかげ、ということがあります。でも、豊かになれたのは一部で、貧困にあえぐ人がたくさんいます。中国共産党の統治体制の根幹にある理論的な根拠は何か。一部の知識人の間では、そういう話が出るようになってきました。

 ◇習氏も重要性理解

 −−中国はGDPで日本を抜き世界第2位の経済大国です。日本に頼らなくてもいいと思っているのではないでしょうか。

 ◆日本人は、中国の経済が日本と同じようなレベルにあると思っているかもしれないが、とんでもないことです。ひとりあたりのGDPは世界で90番目です。つまり、猛烈な富豪が生まれると同時に、本当にその日暮らし、食うや食わずの人たちがたくさんいる、ということです。平均的な中間層を増やしていかないと、内需も拡大しない。金持ちだけがお金をつかってもたかがしれています。日本のレベルに追いつくには、まだ10年も20年もかかるでしょう。

 −−習近平総書記(国家副主席)になって、日中関係はどうなっていくでしょう。

 ◆習さんは、前総書記の胡錦濤さんと交代した昨年11月の共産党大会以前から、対日政策に中心的に関わっていたことは間違いありません。対日関係の重要さをよく分かっているはずです。

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