児童虐待:住民税非課税世帯で割合高く 不安定雇用背景か
毎日新聞 2013年02月19日 15時00分(最終更新 02月19日 15時09分)
千葉明徳短大(千葉市)の山野良一教授が児童虐待と生活困窮度の関係を調べたところ、児童相談所の一時保護を受けた虐待の割合は、生活保護世帯より収入が多いとみられる住民税非課税世帯で高いことが分かった。近年の研究では、親の貧困は児童虐待につながりやすいとされるが、逆の結果。非課税世帯は不安定な雇用で経済的ストレスが大きい一方、生活保護世帯はケースワーカーの訪問などで孤立せずに済んでいることなどが背景にあるとみられる。【遠藤拓】
全国児童相談所長会が08年に行った調査では、虐待が把握された世帯の3割超が経済的困難を抱えていたとの結果が出ている。
山野教授は親の収入の差や人的支援の有無がもたらす影響に着目。データを分析し昨年12月に学会で発表した。それによると、全国の児童相談所が08年4〜6月に虐待を把握した6764世帯の内訳は、困窮していない(住民税課税)2027世帯▽所得が基準以下の住民税非課税698世帯▽生活保護受給772世帯−−で、残りは不明だった。
一方、子供を虐待から守るなどの目的で親から引き離す一時保護に踏み切ったケースは、住民税課税562世帯(27.7%)▽住民税非課税313世帯(44.8%)▽生活保護受給304世帯(39.4%)で、住民税非課税世帯が生活保護世帯より多かった。
非課税世帯では、親が生活費を稼ぐため不安定な非正規雇用労働で働くケースが少なくない上、人的支援を受けられる制度もない。これに対し、生活保護世帯は最低限の暮らしに足りない生活費が保護費で賄われ、自治体のケースワーカーが生活指導するなど親子関係を見守り、子育ての悩みを相談する機会もある。
調査結果はこうした状況を反映したものとみられ、山野教授は「生活保護が子供を虐待から守っていることを示唆した」と指摘。「親の経済的ストレスが高まり、児童虐待が深刻化する可能性がある」として生活保護の切り下げに反対しており、「非課税世帯も含めた子育て支援を抜本的に改善すべきだ」と話している。