【ワシントン=勝田敏彦】国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書に、科学的立証がないのに「ヒマラヤの氷河が2035年までに消失する可能性が非常に高い」という誤った記述が含まれていた問題で、該当部分の統括責任執筆者が英紙の取材に「私たちがこの部分を強調できれば政策決定者や政治家に衝撃を与え、しっかりした対応を取るよう働きかけることになると考えていた」と述べていることがわかった。
24日付英紙デーリー・メール電子版が報じた。記事によると、この統括責任執筆者は、IPCCの作業部会でアジア編を担当したインド人研究者のムラリ・ラル博士。取材に対し、参考文献にした世界自然保護基金(WWF)の報告書が、科学的に検証されていない「あいまい(grey)な文献」と知っていたと話した。
科学者の集まりであるIPCCの報告書は、温暖化対策をめぐる国際交渉の基礎資料になっている。多数の論文をもとに作られていることから、人為影響による温暖化を強調した報告書の骨格部分が覆ることにはならないが、博士の証言により、政治的中立性を疑う見方が強まるとみられる。
IPCC報告書をめぐっては昨年11月にも、基礎になった気温データについて温暖化を誇張したとも受け取れる研究者間の電子メールのやり取りが盗み出される騒ぎが起きている。