檜山正幸のキマイラ飼育記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2013-02-06 (水)

タチの悪いエリートとは

| 11:01 | タチの悪いエリートとはを含むブックマーク

なんらかの面で平均よりはるかに高い能力を持った人を「エリート」と呼ぶことにします。エリートは、おおむね世の中の役に立つ人ですが、本人がその優秀さ/特別さを意識してないときは弊害をもたらすこともあります。

「俺って優秀なんだぜ、お前らとは違うんだぜ」と鼻にかけたような態度。そんな人は嫌な奴かもしれないですが、無害なエリートです(実際に優秀だとして)。優秀なだけでなくて人格的にもいい人、「僕は特別じゃないですよ。中の上くらいかな。ちょっと運が良かったところもあるし」と本音で言うような人、これは危ないです。タチの悪いエリートかもしれません。

渡邉美樹氏の謙虚さが生むブラック性」には、渡邉美樹氏のタチの悪い面=ブラック性が記述されています。渡邉氏は、多少の運もあったでしょうが、もともと高い能力を持ち大変な努力で成功をつかんだ人ですが、誠実で謙虚な人でもあるためにタチが悪い、と。

彼は過酷な労働の結果、夢をかなえた。成功をつかんだ。そしてこの過程で人間性も高まった。こう思っている。


渡邉美樹氏は自分のことを特別な人間だと思ってはいない。そういう謙虚さがあるので、自分ができたことは、他の人にもできると思っている。


渡邉美樹氏は「できる」と思っている。真似できる。やればできる。がんばれ! と。謙虚なだけに本気でそう思っている。

2007年の夏に、僕は「みんながとても頑健なわけじゃない」という記事を書きました。

僕が非常に腹立たしく感じる事態は、「死ぬ気でやってみろよ、死なないから」ってタイプの発言が、「とても頑健な人」の口から出ること; あんまり頑健でない人までも、そんな言葉にあこがれてしまうこと。

これも似たような話で、自分の高い能力に自覚的でない人が、他人にも「やれば出来る」とけしかけてしまう状況でしょう。

渡邉美樹氏は超有名人で、それゆえに批判もできますが、身近な人で優秀で謙虚でいい人だったらナカナカに困りますよね。優秀で謙虚でいい人がポジティブな発言してることに、横槍入れるなんて難しいもの。

エリートは何もビジネスに限らず、スポーツでもエリートはいますよね。フィジカル・エリートであるコーチは、常人の限界を超えるトレーニングを「普通に」課したりしかねない、怖いですね。

昨今の体罰・暴力問題にも同様な構造があるような気がします。上記の「渡邉美樹氏の謙虚さが生むブラック性」には、次の記述もあります。

彼の成功体験が根拠になっている。[...snip] 彼は労働を通して人間性が高まったと思っている。自分の過去が正しいと思っている。だから他の人にもそれは共通するものだと思っているし、他ならぬ自らの会社の従業員たちにも、そうして欲しいと思っている。

体罰をイヤな体験として捉えていたスポーツ選手がコーチになれば、体罰を繰り返すことはないでしょう。しかし、「自分は体罰で鍛えられた、あれで良かった」という、ある種の成功体験を持っているなら、同じ方法を採用する可能性が高いでしょう。

「僕がうまくいったんだから、君だって」論法を安易に適用するのは危ないよ。

nobsunnobsun 2013/02/06 21:39 こういうことは実によくある気がします.成功してしまったので,自分の苦労の本当の苦労した部分を忘れているのではないかと思います.

m-hiyamam-hiyama 2013/02/07 10:12 nobsunさん、
思い当たるフシがある人はけっこういるでしょうね。
酷い思いをした経験を美化したり武勇伝にしちゃダメですよ、ホントに。

acesuzukiacesuzuki 2013/02/10 23:01 野球なんかで名選手の中でも周りをじっと観察して力を発揮したタイプの人でない限り、なかなか名監督にならない(むしろヘボ監督になる)というのはそういうところなのでしょうね。

m-hiyamam-hiyama 2013/02/11 17:35 acesuzukiさん、
そうなのかもしれませんね。
子供からの受け売りですが、サッカーの名監督モウリーニョはプロ選手経験はないそうです。

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