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【福井】

背中を蹴飛ばしたい→蹴りたい背中 司書の相談体験一覧

入力中の覚え違い事例を前に「人が覚え違うのは当たり前。このページで検索システムを補いたい」と話す宮川陽子さん=福井市の県立図書館で

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 「『ぶるる』みたいな旅行ガイドの本はどこにある?」−『るるぶ』JTBパブリッシング発行。「ウサギのできそこないが二匹出てくる絵本」−『ぐりとぐら』。ぐりとぐらは、おりょうりすることたべることが好きな「のねずみ」です。こんな思わず笑ってしまうようなやりとりが、県立図書館のホームページに掲載されている。二〇〇七年から続く人気コンテンツ「覚え違いタイトル集」だ。

 「読みたい本を蔵書検索システムで探したけれど、どうしても見つからない」といった相談が、図書館カウンターにはよく寄せられる。検索システムでは、書名や著者名の一部でも探せるが、一言一句違えずに入力しないとだめ。本来ひらがなのところを漢字にするだけでも正しく検索できなくなるからだ。

 「人間は覚え違うもの。あいまいな情報で検索のできないシステムが悪い」と考える同館司書の宮川陽子さん(36)が、本探しの一助にと覚え違いしやすい例をリストにし、公開した。

 『キャッツー』だと思っていたのは『キシャツー』(小路幸也、河出書房新社)だった。『あでらんすの鐘』は『あんでらすの鐘』(澤田ふじ子、中央公論新社)、『トコトコ公太郎』は『とっとこハム太郎』(河井リツ子、小学館)で『まんじょうき』は『方丈記』(鴨長明)などなど、掲載事例は現在三百三十九件。同館司書の体験談のほか、メールでの情報提供もある。

 一月にニュースサイト「ねとらぼ」で取り上げられると、インターネット上で「もはやネタ集」「これで見つける司書さんスゲエ」などと話題に。同館トップページの月間アクセス数は通常二万〜六万ほどだが、一月は十万を超えた。

 『背中を蹴飛ばしたい』が『蹴りたい背中』(綿矢りさ、河出書房新社)だとは司書ならすぐに気付きそうだが「フクロウがいろいろな動物を染めていってカラスが真っ黒になる話の本は?」などはどうやって探すのか。

 「相談者が覚えているキーワードを分割して入力してみたり、情報量の多い国立国会図書館サーチを使ったり。絵本は山口県の図書館に登場人物でも検索できるデータベースがあるので、それも使います。話しているうちにピンとくることもあるけれど、絞り込めずにギブアップして『情報提供お願いします』と掲載することもありますよ」と宮川さん。

 「面白い」と注目されるのは、館にとっても大歓迎。覚え違いタイトル集は、認知度の低いレファレンスサービスへの入り口でもあるからだ。調べ物の関連資料を探したり、慣用句の語源などの質問に答えたりと、実は便利なサービス。「『覚え違い』から、レファレンスの紹介ページも開いて、こんなこともできるんだと知ってもらえれば」

 (林朋実)

 

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