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   2013年2月18日更新
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G7からG20そしてGゼロへ
――民主国家同盟D10を立ち上げよ


民主国家同盟D10を立ち上げよ
――なぜ民主国家によるフォーラムが必要か
(2013年2月号)

アッシュ・ジェイン/ユーラシアグループ・コンサルタント

民主的秩序の中核である政治や安全保障領域では、民主国家とそうでない国の間に依然として大きな立場の違いがある。問題は民主国家間の戦略調整メカニズムが希薄になってきていることだ。NATO(北大西洋条約機構)やG8ではこの現実を克服できない。脅威が多様化しているために、任務を安全保障領域に限定しているNATO(北大西洋条約機構)が果たせる役割には限界があるし、ロシアをメンバーに迎え入れたことでG8は空虚な声明を発表するだけのフォーラムと化している。必要なのは民主的価値を共有する諸国によるフォーラムを立ち上げることだ。このフォーラムのメンバーを構成すべきは、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アジア・太平洋の日本、オーストラリア、韓国、そして北米のカナダとアメリカだろう。これにEU(欧州連合)を加えればD10になる。民主的価値を共有する民主諸国連合(D10)は、現在の世界の課題に対処していくもっとも適切な枠組みとして機能するポテンシャルを秘めている。

G7からG20そしてGゼロへ
――主導国なき世界経済は相互依存からゼロサムへ
(2011年3月号

イアン・ブレマー/ユーラシア・グループ会長
ノリエル・ルービニ/ニューヨーク大学教授

市場経済、自由貿易、資本の移動に適した安全な環境を作りだすことを覇権国が担ってきた時代はすでに終わっている。アメリカの国際的影響力が低下し、先進国と途上国、さらにはアメリカとヨーロッパ間の政策をめぐる対立によって、世界が国際的リーダーシップを必要としているまさにそのときに、リーダーシップの空白が生じている。われわれは、Gゼロの時代に足を踏み入れている。金融危機をきっかけに、さまざまな国際問題が噴出し、経済不安が高まっているにもかかわらず、いかなる国や国家ブロックも、問題解決に向けた国際的アプローチを主導する影響力をもはや失ってしまっている。各国の政策担当者は自国の経済成長と国内雇用の創出を最優先にし、グローバル経済の活性化は、遠く離れた二番目のアジェンダに据えられているにすぎない。軍事領域だけでなく、いまや経済もゼロサムの時代へ突入している。


民主国家連合の可能性
(2007年1月号)
アン=マリー・スローター
/プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院長
G・ジョン・アイケンベリー/プリンストン大学教授

「 民主国家連合は、現在の漠然とした「民主主義国家コミュニティー」よりも小さな組織とし、厳格な義務を定めた条約に調印した国をメンバーとする。この組織が、国連その他の国際機関の踏み込んだ改革を求めて中心的な役割を果たしていくことも期待できる。国連が必要な改革を断行しない場合には、長期的にはこの民主国家連合が国連に代わる役割を担っていくようになる可能性もある。」(A=M・スローター)

「21世紀のグローバル構造は、複数の層からなるレイヤーケーキのようなものとみなす必要がある。そうした層をなす機構には、グローバルなものもあれば地域的なものもあり、政府の統治スタイルを基準とするものもあるだろう。こうした複数の機構にはそれぞれ役割があって、さまざまな問題を解決するために協力しあう。最終的には誰もが重要視する伝統的な「大国間」メカニズムである安保理が、その頂点にあるような構造ができることを私たちは期待している。」(G・J・アイケンベリー)





民主的秩序の中核である政治や安全保障領域では、民主国家とそうでない国の間に依然として大きな立場の違いがある。問題は民主国家間の戦略調整メカニズムが希薄になってきていることだ。民主的価値を共有する諸国によるフォーラムを立ち上げる必要がある。写真は今月モスクワで行われたG20の財務相・中央銀行総裁会議の様子。

2月号掲載論文から



先進民主国家体制の危機
―― 改革と投資を阻む硬直化した政治

ファリード・ザカリア


米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

バリー・R・ポーゼン


米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス
G・ジョン・アイケンベリー
ウィリアム・C・ウォールフォース



シェールガス資源が塗り替える世界の地政学地図
アビエザー・タッカー


5年後、アメリカはサウジを抜いて、世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

ファティ・ビロル


ポール・ボルカーの思想
―― 近代ファイナンスの英雄が示した気骨

オースタン・グールズビー


2013年のグローバル経済
マイケル・スペンス、他
他、全12本掲載。


Agenda and Current Issues
2013.2.15更新

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   2013年2月15日更新
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変わらない日本の安全保障意識と日米同盟
――撤退と現状維持の間


吉田ドクトリンと戦後日本
―― 変わらない日本と日本の保守政治
(2013年3月号掲載予定)

ジェラルド・L・カーチス/コロンビア大学教授

1987年、GDPの1%の防衛予算という上限を取り払った日本政府の決定を前に、ヘンリー・キッシンジャーでさえも、これによって、「日本がそう遠くない将来に主要な軍事大国になるのは必然となった」と発言した。しかし、現実にはそうならなかった。戦後に考案された(軽武装、経済成長重視の)吉田ドクトリンが、いまも日本の政策を制約している。このドクトリンがかくも長寿であることに困惑しているのは、専門家だけではない。この戦略を考案した吉田自身、現状をみれば、複雑な思いを抱くはずだ。吉田はリアリストだった。戦後の荒廃ぶりを前に、日本は再軍備よりも経済回復を優先させるしか手はないと考えたが、日本が経済を再生した段階で、このドクトリンを見直す必要があると考えていた。しかし、経済大国となったにも関わらず、日本の大衆は、吉田のようには考えなかった。・・・
まだ日本が占領下にあった1951年に吉田茂がフォーリン・アフェアーズ誌に発表した「来るべき対日講和条約について」は、戦後日本を代表する首相の一人である吉田が、世界の外交コミュニティに発した早期対日講和要請の宣言文、軽武装・経済重視のいわゆる吉田ドクトリンの萌芽とも言われる。・・・(FAJ編集部)

もはや安保のフリーライドは許されない
――米軍の大規模な撤退を
(2013年2月号

バリー・R・ポーゼン/マサチューセッツ工科大学教授

アメリカの大戦略に派生するもう一つの厄介な問題は、友人たちがいわゆる安全保障のフリーライド(ただ乗り)をしていることだ。冷戦期のNATOと日米同盟を、ワシントンがその後も維持しようと試みた結果、ヨーロッパとアジアの同盟諸国は、非常に高度な保険を手に入れた。これらの諸国は、自国の軍隊の規模を着実に削減し、軍事的役目をアメリカにアウトソースするようになった。・・・どのように計算するかにも左右されるが、日本の防衛支出もこの10年にわたって、削減されるか、横ばいをたどっている。しかも、日本の指導者たちは、中国パワーの台頭、特に、中国の空軍力、ミサイル戦力、海軍力の増強に懸念を募らせているにもかかわらず、不可解にも地上部隊(陸上自衛隊)に多くの資金を注ぎ込んでいる。・・・


不健全な依存関係に終止符を
――条約の平和的解体を
(1995年8月号)
チャルマーズ・ジョンソン/ 日本政策研究所所長
E・B・キーン/ ケンブリッジ大学教授

アメリカが与えた戦後憲法の第九条は、国権の発動としての戦争(交戦権)を放棄することを規定しているが、(環境の変化を無視して)今後とも冷戦期の鋳型に日米関係をはめ込むとすれば、いずれ日本の政治家たちが直視しなければならぬこの第九条にともなう問題を先送りするだけだ。こうした時代錯誤な鋳型が用いられつづけるなら、日本の指導者が(他の諸国とともに日本が)危険を引き受けるように憲法を改正しようにも、それを政治的に不可能にしてしまうだろう。地域的、そして世界的な問題に、日本がバランスのとれた防衛上の役割を果たすのを可能にするような国内の政治状況が出現するとすれば、それは、(日本がアメリカによって)保護されている状態に、ピリオドが打たれた場合だけだろう。





戦後に考案された(軽武装、経済成長重視の)吉田ドクトリンが、いまも日本の政策を制約している。このドクトリンがかくも長寿であることに困惑しているのは、専門家だけではない。この戦略を考案した吉田自身、現状をみれば、複雑な思いを抱くはずだ。(ジェラルド・L・カーチス)

関連論文



米軍撤退論にメリットはない (2013年2月号)
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス、G・ジョン・アイケンベリー
ウィリアム・C・ウォールフォース

現在の戦略は世界の重要地域における紛争の発生を防ぎ、グローバル経済をうまく先に進め、国際協調をまとめやすくしている。グローバルなリーダーシップのための対外関与から手を引けば、これら立証されている恩恵は消失し、世界はかつてない不安定化に翻弄されることになる。・・・

 



緊縮財政時代の米国防戦略
―― 日本の安全保障とA2・AD戦略
(2012年12月号)
アンドリュー・F・クレピネビッチ


いまも安保はグランドバーゲンか?
――日米安全保障条約50周年の足跡と展望
(2010年3月号)
ジョージ・パッカード


来るべき対日講和条約について(2009年11月号/1951年発表)
吉田茂


米軍の日本駐留は本当に必要か(1998年8月号)
細川護熙


日本の安全保障とアメリカの政策
(2012年1月号掲載/1964年発表)
ジョージ・ケナン


Agenda and Current Issues
2013.2.14更新

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   2013年2月14日更新
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日米安保のこれまでとこれから
――吉田ドクトリンとの決別か、それとも・・・


非武装の日本からアメリカが撤退すれば
――来るべき対日講和条約について
(2009年11月号/1951年発表)

吉田茂

もちろん占領軍が日本に駐留する限り、国土の安全は確保される。しかし仮に米軍が撤退すれば、非武装の日本はどうなるのだろうか。日本は永遠にアメリカに保護してもらえるのだろうか、それは果たして望ましいことなのか。このような問題こそ日本が直面している問題であり、その答えは朝鮮戦争によって明らかとなった。・・・有事のなか、防衛能力を持たない日本がひとり放置されることがあり得ないことも、われわれは今回のケースから十分に理解した。
まだ日本が占領下にあった1951年に吉田茂がフォーリン・アフェアーズ誌に発表した「来るべき対日講和条約について」は、戦後日本を代表する首相の一人である吉田が、世界の外交コミュニティに発した早期対日講和要請の宣言文、軽武装・経済重視のいわゆる吉田ドクトリンの萌芽とも言われる。・・・(FAJ編集部)

米軍の日本駐留は本当に必要か
(1998年8月号

細川護熙/日本国元首相

冷戦期の共通の脅威が消滅していくにつれて、日本人が国内における米軍の軍事プレゼンスに懐疑的になるとしても無理はない。しかも、日本の防衛の多くをこれまで実質的に担ってきたのは、駐留米軍というよりも、日本の自衛隊である。米軍による核抑止力(核の傘)は依然必要だとしても、冷戦後という新時代の進展とともに、アメリカの日本での軍事プレゼンスをしだいになくしていくべきだし、何よりも「同盟関係と基地の存在」をめぐる日米間のパーセプション・ギャップ(認識の隔たり)が大切な二国関係を損なう前に、二十一世紀にふさわしい同盟関係のあり方を議論すべきであり、その任にあたるのは「官僚や将軍たちではなく、(日米の)政治家」でなければならない。


日米同盟関係がもたらす恩恵とコスト
――いまも安保はグランドバーゲンか?
(2010年3月号)
ジョージ・パッカード/米日財団会長

摩擦があったとはいえ、アメリカも日本も安保条約はコストを上回る恩恵をもたらすと考えてきた。長い時間をかけて、安保条約はたんなる意図の表明から信頼できる協調システムへと進化していた。日本にとって安保条約がもたらす恩恵は明らかだった。アメリカの核の傘に入ったおかげで、いわゆる吉田ドクトリンを実践し、経済成長に専念できた。・・・日本における現在の米軍プレゼンスの規模と意味が、今後、数ヶ月、あるいは数年にわたって議論されていくのはほぼ間違いない。日本には依然として約85の米軍関連施設があり、4万4850人の米軍関係者、その家族4万4289人がいる。駐留米軍の75%近くが、ロングアイランド州の3分の1にも満たない小さな島、沖縄に駐留している。こうした米軍の存在は沖縄の住民にとって頭痛の種であり続けている。・・・





もちろん占領軍が日本に駐留する限り、国土の安全は確保される。しかし仮に米軍が撤退すれば、非武装の日本はどうなるのだろうか。日本は永遠にアメリカに保護してもらえるのだろうか、それは果たして望ましいことなのか。写真は1951年、日米安保条約に署名する吉田茂首相。

関連論文



米軍の大規模な撤退を (2013年2月号)
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

バリー・R・ポーゼン


米軍撤退論にメリットはない (2013年2月号)
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス
G・ジョン・アイケンベリー
ウィリアム・C・ウォールフォース



緊縮財政時代の米国防戦略
―― 日本の安全保障とA2・AD戦略
(2012年12月号)
アンドリュー・F・クレピネビッチ


日本の安全保障とアメリカの政策
ジョージ・ケナン (2012年1月号掲載/1964年発表)

マッカーサー将軍は、少なくとも一九四八年当時は、アメリカそして日本の安全保障のために、日本列島に米軍を恒常的に駐屯させる必要は必ずしもないと考えていた。・・・
 


条約の平和的解体を (1995年8月号)

チャルマーズ・ジョンソン



Agenda and Current Issues
2013.2.14更新

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中国の食品・大気汚染危機
――暗闇で輝く豚肉、爆発するスイカ、とまらない環境破壊


社会道徳の衰退と中国の食品汚染危機
(2012年10月号

ヤンゾン・ファン/米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

メラミン混入ミルク、成長促進剤を添加され爆発するスイカ、赤みを増すために薬剤を添加され暗闇で輝く豚肉など、中国の人々がもっとも懸念しているのは、高く売るためなら、食品に人体に有害な物質を添加することも厭わない農家や業者が引き起こす食品汚染危機が大きな広がりをみせていることだ。汚染危機は、生産・供給側が市場経済の拡大ペースに応じてビジネス倫理を確立できず、政府の規制もそのペースについていけずにいるために引き起こされている。「偽造品や汚染食品を市場に送り出す人も、一方では消費者として他の危険な汚染食品のリスクにさらされており、この社会では誰もが他人に対して毒を振りまいている」状況にある。・・・いまや中国社会の破綻というシナリオでさえも、現実離れしているとは言えない。


暗闇で輝く豚肉と爆発するスイカ
―― なぜ中国の食品は危険なのか
(2012年4月号

トマス・トンプソン/リージェントグループ・リサーチディレクター

4年前のメラミン混入粉ミルク事件以降も、中国では食品汚染スキャンダルが続いている。殺虫剤が混入したハム、紛い物の粉ミルク、汚染されたビーフン、発がん性物質の入ったチリソース、危険な抗菌剤で汚染された魚の缶詰などが市場に出回るという事件が起きている。最近も、塩酸クレンブテロールを添加され暗闇で輝く豚肉、成長促進剤を添加されて爆発するスイカ、より新鮮に見せるためにブリーチされたマッシュルームなどの問題が露見している。これは中国だけの問題ではない。グローバル化によって、中国の食品は世界に広く出回っている。あなたがアップルジュースを飲み、タラ、缶詰の桃、マッシュルーム、ホウレンソウを口に運ぶとき、それが中国産である可能性は高い。


中国の環境破壊はなぜとまらないか
――大気汚染の現実
(2007年10月号)
エリザベス・C・エコノミー/米外交問題評議会アジア研究担当ディレクター

奇跡と称賛されることも多い中国の急速な経済成長が、環境面では壊滅的な事態を引き起こしている。記録的成長を遂げるには当然膨大な資源を消費しなければならないうえに、中国のエネルギー消費は非効率な上に汚染物質をまきちらし、その結果、大気、土壌、水質がひどく汚染されてきた。実際、中国の経済成長を支えてきた石炭による電力生産は、一方で深刻な大気汚染を引き起こし、人々は汚れた空気のなかでの生活を余儀なくされている。中国のエネルギー需要の約70%は石炭によってまかなわれている。・・・だがそれでも、石炭がつくりだす問題は、中国の大気汚染のなかでは今後相対的に小さな問題になっていくと考えられる。ここにきて、国内の交通インフラの整備が大気汚染との関連で重大な懸念として浮上してきているからだ。・・・




中国では食品汚染スキャンダルが続いている。最近も、塩酸クレンブテロールを添加され暗闇で輝く豚肉、成長促進剤を添加されて爆発するスイカ、より新鮮に見せるためにブリーチされたマッシュルームなどの問題が露見している。これは中国だけの問題ではない。グローバル化によって、中国の食品は世界に広く出回っている。あなたがアップルジュースを飲み、タラ、缶詰の桃、マッシュルーム、ホウレンソウを口に運ぶとき、それが中国産である可能性は高い。

関連論文



追い込まれた中国共産党(2013年1月号)
―― 民主改革か革命か
 ヤシェン・フアン

政治腐敗によって脅かされているのは、食の安全だけではない。環境に大きなダメージを与える化学工場からの汚染物質の流出事故を、役人がカバーアップするという事件も起きている。・・・
 


習近平政権の内憂外患(2012年12月号)
ダミアン・マ

石炭をエネルギー源とする中国経済は非常に大きな欠陥をもっており、これは看過できる問題ではない。すでに中国の環境汚染は非常に深刻な状態にあるし、首都・北京は灰色の煙にいつも包み込まれている。公衆衛生問題が深刻化し、環境汚染に関連する呼吸器疾患が増えていると報道されている。・・・
 

関連ニュース

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中国環境保護部、月間大気汚染ワースト10の都市を発表(2月12日
サーチナ


中国の養豚場で薬剤耐性菌広まる 人の感染症に影響も(2月12日
共同通信



 
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中韓は北の核実験にどう対処する
――追い込まれた金正恩


中国は北の核実験にどう対処するか
(2013年2月

スコット・スナイダー/米外交問題評議会シニア・フェロー

中国が北朝鮮の核実験を、北朝鮮内で権力抗争が起きている証拠とみなした場合、さらに厳格な国際制裁が科されれば北朝鮮が不安定化すると懸念し、現在のアプローチを大きく見直すことはないだろう。一方、中国が核実験を、北朝鮮の体制基盤が強化されたことを意味するとみなしつつも、それが中国の利益に反すると判断すれば、中国は国際社会にこれまで以上に同調する可能性が高い。


北朝鮮の核実験に中国はどう対処するか
(2013年2月

ビクター・チャ/ジョージタウン大学教授

なぜ、国際社会の批判にも関わらず、平壌は核実験を強行したのか。ブッシュ政権の米国家安全保障会議(NSC)でアジア部長を務めたビクター・チャは、北朝鮮は核実験を通じて国内の権力継承プロセスを進展させ、「核武装国家としての地位を確立したいと考えている」と指摘する。だが、そうした動きは北京との関係も不安定化させている。「平壌は中国国内の貧しい省の一つであるかのように北京に扱われることに反発し」、一方、北京は、「北朝鮮が挑発路線を続け、それを中国は阻止しようとしない」と国際社会から批判されることに困惑している。中国が北朝鮮への支援をすべて打ち切れば、北朝鮮の命運は尽きる。だが、北京は北朝鮮崩壊後に誕生する朝鮮半島の統一国家がアメリカの同盟国になるのを望んでいない。つまり、現状で、中国が平壌支援を打ち切るとは考えられない情勢にある。・・・


追い込まれた金正恩
―― 出口のない窮状
(2013年2月号

ビクター・チャ/ジョージタウン大学教授
元米国家安全保障会議(NSC)アジア担当部長

軍務に服することなく、20代後半の若さで権力構造のトップに君臨している金正恩は、現在の体制基盤を強化できるかどうか。それは、彼が権力者としての価値と手腕をもっていることをエリート層に立証できるかに左右される。一連の軍高官の解任劇は、金正恩が、彼らからビジネスの既得権益を奪い取ることで、自らのパトロンネットワークを強化しようとした結果だと考えられる。だがその結果、軍高官の不満は高まっている。韓国に対して強硬策をとって国内的に手腕を示そうにも、すでに、ソウルは北朝鮮の強硬策には大規模な報復攻撃も辞さないと表明しており、軽々に火遊びはできない。中国にさえも見限られた部分がある。しかも、携帯電話の普及とインターネットユーザーの拡大によって北朝鮮社会は変化しつつある。金正恩はいずれ身動きのできない状況へと追い込まれ、アメリカは、北朝鮮の核管理体制の弛緩という悪夢のシナリオに直面する恐れがある。・・・





中国が北朝鮮への支援をすべて打ち切れば、北朝鮮の命運は尽きる。だが、北京は北朝鮮崩壊後に誕生する朝鮮半島の統一国家がアメリカの同盟国になるのを望んでいない。つまり、現状で、中国が平壌支援を打ち切るとは考えられない情勢にある。・・・

関連論文



新しい朝鮮半島を思い描く
―― 毅然たる態度で南北間の信頼を形作る
朴槿恵(パク・クネ) 次期韓国大統領 (2011年9月号) 

北朝鮮がさらにわれわれを攻撃し、核実験を行うようであれば、韓国は取り得るすべての対応を検討することになるだろう。

 



朝鮮半島で何が起きているか
――もう韓国が挑発行為に耐えることはない
玄仁沢、金泰栄 (2012年8月号) 

これまで北朝鮮による数多くの挑発行為に直面してきた韓国市民の多くは、いまや、挑発行為に対する反撃だけでは十分ではなく、より強硬な報復策が必要だと考えるようになっている。・・・こうした堅固な社会コンセンサスを基盤に、反撃だけでなく、対抗策、報復策をとる必要が出てきている。(金泰栄 前韓国国防相)

 



北朝鮮の不安定化と米中関係
――「北朝鮮後」に向けた米中事前協議を
(2011年11月号
S・スナイダー

関連ニュース

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北朝鮮が核実験強行 成功と発表(2月12日
産経ニュース



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フォーリン・アフェアーズ・リポート
2月号の主要論文から


米軍の日本とヨーロッパからの大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ
(2013年2月号

バリー・R・ポーゼン/マサチューセッツ工科大学教授

米財政の健全さを取り戻すために、社会保障支出の大幅な削減を検討せざるを得ない状況にあるというのに、ワシントンは依然としてドイツや日本の安全保障に事実上の補助金を出している。これでは富裕層(国)に社会保障給付を提供しているようなものだ。アメリカが覇権的で拡大的な大戦略を維持してきたために、同盟国の安全保障をアメリカが肩代わりする事態が続き、同盟国は応分の負担をするのさえ嫌がるようになった。それだけではない。敵を倒すたびに新しい敵が作り出され、中ロなどの他の大国は連帯してアメリカの路線に反対するソフトバランシング路線をとるようになった。状況を正し、現実的な安全保障戦略へと立ち返るには、現在の大戦略をより抑制的な戦略へと見直し、アメリカは前方展開基地から部隊の多くを撤退させ、同盟国が自国の安全保障にもっと責任をもつようにする必要がある。


改革と投資を阻む硬直化した先進国の政治
―― 先進民主国家体制の危機
(2013年2月号

ファリード・ザカリア/国際政治分析者

先進民主世界を悲観主義が覆い尽くしている。ヨーロッパでは、ユーロ圏だけでなく、欧州連合(EU)そのものが解体するのではないかという声も聞かれる。日本の経済も停滞したままだ。だが、もっとも危機的な状況にあるのはアメリカだろう。停滞する先進国が本当に必要としているのは、競争力を高めるための構造改革、そして、将来の成長のための投資に他ならない。問題は政治領域にある。政治が、効率的な改革と投資を阻んでいる。その結果、われわれが直面しているのが民主主義体制の危機だ。予算圧力、政治的膠着、そして人口動態が作り出す圧力という、気の萎えるほどに大きな課題が指し示す未来は低成長と停滞に他ならない。相対的な豊かさは維持できるかもしれないが、先進国はゆっくりとそして着実に世界の周辺へと追いやられていくだろう。今回ばかりは、民主主義の危機を唱える悲観論者が未来を言い当てることになるのかもしれない。


追い込まれた金正恩
――出口のない窮状
(2013年2月号)
ビクター・チャ/ジョージタウン大学教授
元米国家安全保障会議(NSC)アジア担当部長
軍務に服することなく、20代後半の若さで権力構造のトップに君臨している金正恩は、現在の体制基盤を強化できるかどうか。それは、彼が権力者としての価値と手腕をもっていることをエリート層に立証できるかに左右される。一連の軍高官の解任劇は、金正恩が、彼らからビジネスの既得権益を奪い取ることで、自らのパトロンネットワークを強化しようとした結果だと考えられる。だがその結果、軍高官の不満は高まっている。韓国に対して強硬策をとって国内的に手腕を示そうにも、すでに、ソウルは北朝鮮の強硬策には大規模な報復攻撃も辞さないと表明しており、軽々に火遊びはできない。中国にさえも見限られた部分がある。しかも、携帯電話の普及とインターネットユーザーの拡大によって北朝鮮社会は変化しつつある。金正恩はいずれ身動きのできない状況へと追い込まれ、アメリカは、北朝鮮の核管理体制の弛緩という悪夢のシナリオに直面する恐れがある。・・・




2月号掲載論文から



米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス
G・ジョン・アイケンベリー
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シェールガス資源が塗り替える世界の地政学地図
アビエザー・タッカー


5年後、アメリカはサウジを抜いて、世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

ファティ・ビロル


ポール・ボルカーの思想
―― 近代ファイナンスの英雄が示した気骨

オースタン・グールズビー


2013年のグローバル経済
マイケル・スペンス、他


イギリスのEUジレンマ
――脱退すべきか、踏みとどまるべきか

ロビン・ニブレット
他、全12本掲載。



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なぜ中国は対外強硬路線をとるのか
―― 変化する共産党と軍の関係


中国の対外強硬路線の国内的起源
―― 高揚する自意識とナショナリズム
(2011年4月号

トーマス・クリステンセン/プリンストン大学教授

中国の外交政策の決定に、軍、エネルギー企業、主要輸出企業、地方の党エリートなど、ますます多くの官僚たちが関与し始めている。これはかつてなかった現象であり、党の指導層は、こうした異なる集団の利益を調整していく意図と能力も持っていないようだ。・・・中国の政府高官は中国のグローバルなポジションについても、国内の開発上の課題についても、より冷静な判断をしているが、より強硬な外交政策を求める国内世論が熱を帯びた国内政治環境を作り出している。・・・中国政府の路線を弱腰だと批判している人々のなかには、現役の軍人、政府系シンクタンクや大学の研究者が含まれている。こうした声を中国のエリートたちが無視できる時代は終わっている。・・・


東アジアの領有権論争
2013年の世界 ―7つの危機
(2012年12月)
ジェームス・リンゼー/米外交問題評議会研究部長

2013年には、東アジアにおける領有権論争が、例えば、中国と日本(および同盟国)との武力衝突にエスカレートする恐れがある。(潜在的資源をめぐる)利益、そしてナショナリズムが緊張を否応なく高めている。東シナ海と南シナ海における境界線をどう引くかで、莫大な規模に達するとも考えられているオフショア石油資源、鉱物資源の開発からどの国が利益を引き出すかが左右される。さらにナショナリズムが高まっているだけに、2013年に各国の新指導者が、相手国の立場に譲歩するのは難しいだろう。アメリカの外交官は、同盟諸国に対して連帯を示しつつも、それが無謀な行為を助長しないように十分に配慮する必要がある。

中国を対外強硬路線へ駆り立てる恐れと不安
  ―― アジアシフト戦略の誤算とは
ロバート・ロス/ボストン・カレッジ 政治学教授

中国の強硬外交は新たに手に入れたパワーを基盤とする自信に派生するものではなく、むしろ、金融危機と社会騒乱に悩まされていることに派生する中国政府の不安に根ざしている。シンボリックな対外強硬路線をとることで、北京はナショナリスティックになっている大衆をなだめ、政府の政治的正統性をつなぎとめようとしている。その結果、2009―10年に中国は対外強硬路線をとるようになり、近隣国だけでなく、世界の多くの諸国が中国と距離を置くようになった。この環境で、東アジアの同盟諸国は「大恐慌以来、最悪の経済危機のなかにあるアメリカは、自信を深め、能力を高めている中国に対処していけるのか」と疑問をもつようになり、こうした懸念を払拭しようと、ワシントンはアジア地域のパワーバランスを維持できることを立証しようと試み、アジアシフト戦略へと舵を取った。だが、台頭する中国を牽制するはずのアジアシフト戦略は、逆に中国の好戦性を助長し、米中協調への双方の確信を損なってしまっている。






中国の外交政策の決定に、軍、エネルギー企業、主要輸出企業、地方の党エリートなど、ますます多くの官僚たちが関与し始めている。これはかつてなかった現象であり、党の指導層は、こうした異なる集団の利益を調整していく意図と能力も持っていないようだ。・・・

関連論文



日中韓の新指導者と東アジア安全保障
――世界を左右する三つの課題
(2013年2月号)
ジェームズ・リンゼー


追い込まれた中国共産党(2013年1月号)
―― 民主改革か革命か

ヤシェン・フアン


中国の台頭は続く (2013年1月号)
―― 共産党の強さの源泉と中国モデルの成功

エリック・X・リ


習近平政権の内憂外患(2012年12月号)
ダミアン・マ


復活した日中の歴史的確執(2012年10月号)
何憶南

関連ニュース

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レーダー照射、軍の単独行動示唆 中国・外務省「状況把握せず」(2月6日
共同通信


「日本が仕掛けた世論戦」 中国・共産党系紙「『1発目』覚悟できている」(2月7日
産経ニュース

2月号掲載論文から



5年後、アメリカはサウジを抜いて、世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

ファティ・ビロル


米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

バリー・R・ポーゼン


米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス
G・ジョン・アイケンベリー
ウィリアム・C・ウォールフォース

他、全12本掲載。

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論争 米軍は東アジアから撤退すべきか
―― 緊縮財政時代の米国防戦略


米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ
(2013年2月号

バリー・R・ポーゼン/マサチューセッツ工科大学教授

同盟諸国が自国の防衛のための責任を果たすように、アメリカは同盟関係を見直す必要がある。・・・日米安保条約を解体すべきではないが、その内容を再交渉する必要がある。現在の安保条約では、アメリカは日本の防衛に派生する重荷の多くを引き受け、日本政府は米軍の活動を助けるとされている。この役割を入れ替えなければならない。つまり、日本が自国の防衛に派生する責務のほとんどを担い、ワシントンはこれをバックアップするという構図に置き換えるのだ。中国のパワーが拡大している以上、すべての米戦力を東アジア地域から撤退させるべきではない。しかし、ペンタゴンは、差し迫った軍事問題に対処するのに必要とされる戦力レベルへと部隊規模を削減すべきだろう。例えば、すべての米海兵隊は日本から撤退させることができるし、この場合、沖縄の基地問題をめぐる厄介な交渉を幕引きにできる。・・・


米軍撤退論にメリットはない
―― 米軍がアジアから撤退すれば・・・

スティーブン・G・ブルックス/ダートマス・カレッジ准教授
G・ジョン・アイケンベリー /プリンストン大学教授
ウィリアム・C・ウォールフォース/ダートマス・カレッジ教授

対外関与戦略が必要とするコストは、実際には、後退戦略支持派が主張するレベルよりもはるかに低い。だが、関与戦略が大きな恩恵をもたらさない限り、そのコストを負担し続ける価値がないのは事実だろう。現実には、大戦略は投資額をはるかに上回る恩恵をアメリカにもたらしている。最大の恩恵とは、この戦略によって危険な紛争が起きるリスクが抑え込まれていることだ。アメリカの安全保障コミットメントによって、地域的覇権の確立を狙う国の拡大路線が抑止され、パートナー国も他国を脅かす形で安全保障問題を解決しようとするのを控えるようになる。・・・ワシントンが東アジアから撤退すれば、日本と韓国は軍事予算を増やし、核武装化に踏み切る可能性が高く、これに対する中国の反応によって地域秩序が不安定化する。冷戦期に、韓国と台湾が核兵器を入手しようと試みたことを思い出すべきだ。・・・

日本の安全保障とA2・AD戦略
―― 緊縮財政時代の米国防戦略
(2012年12月号

アンドリュー・F・クレピネビッチ/戦略・予算分析センター会長

アメリカの国防予算が大幅に削減されるのは避けられず、アメリカの安全と繁栄に不可欠な「西太平洋と湾岸地域」、そして(海洋、宇宙、そしてサイバースペースという)「グローバルな公共財」へのアクセスを維持することに焦点を合わせた戦略をとる必要がある。西太平洋の安定とアクセスを保障するアメリカの戦略の要となるのは、やはり日本だ。日本は接近阻止・領域拒否(A2・AD)戦略への投資を大幅に増やして、中国や北朝鮮による攻撃の危険を低下させるべきだ。同盟国によるこうした試みが実現すれば、(中国など)ライバル国が持つA2・ADシステムの射程外から使用できる長距離攻撃システム、敵のA2・ADのレンジ内でも効果的に活動できる攻撃型原子力潜水艦など、米軍の強みを生かせるようになる。ここに提言するアクセス保障戦略とは「米軍は(予算の制約下で)現実的に何ができるか」を前提にした戦略だ。




現在の安保条約では、アメリカは日本の防衛に派生する重荷の多くを引きうけ、日本政府は米軍の活動を助けるとされている。この役割を入れ替えなければならない。つまり、日本が自国の防衛に派生する責務のほとんどを担い、ワシントンはこれをバックアップするという構図に置き換えるのだ。(B・ポーゼン)

関連論文



中国を対外強硬路線へ駆り立てる恐れと不安
―― アジアシフト戦略の誤算とは 
(2012年11月号)
ロバート・ロス


大中国圏の形成と中国の海軍力増強 (2010年10月号)
―― 中国は東半球での覇権を確立しつつある

ロバート・カプラン


日米安全保障条約50周年の足跡と展望
――いまも安保はグランドバーゲンか?
(2010年3月号)
ジョージ・パッカード


米軍の日本駐留は本当に必要か(1998年8月号)
細川護熙


「欧米世界」をユーラシア、日韓へ拡大し、日中和解を模索せよ (2012年1月号)
Z・ブレジンスキー


欧州によるスマート・ディフェンスを提唱する
― 緊縮財政時代の大西洋同盟 
(2011年9月号)
A・F・ラスムセン
(NATO事務総長)



 
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生き残るのは先進民主国家体制か、
それとも権威主義資本主義国家か


先進国の経済成長を阻む硬直化した政治
―― 先進民主国家体制の危機
(2013年2月号

ファリード・ザカリア/国際政治分析者

1979年に社会学者のエズラ・ボーゲルは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を出版し、見事な経済的台頭をみせていた日本のバラ色の未来を予測した。「予言が完全に外れてしまった理由は何だと思うか」というワシントン・ポスト紙の問いに、ボーゲルは次のように答えている。「日本経済は高度に洗練された先端性をもっていた。だが、その政治システムがかくも行く手を阻み、日本を下方スパイラルに巻き込んでいくとは予想していなかった」。「問題は経済にではなく、政治にあった」とするボーゲルの指摘は間違っていない。すべての先進諸国経済は弱点を抱えているが、そのすべては、かなりの強さをもっている。だが、先進国はすでに高度な経済発展段階に達しており、時代遅れの政策、政治構造、政治手法を、経済の現実に見合うように変化させるか、放棄する必要がある。エコノミストのマンカー・オルソンが指摘するように、問題は、既存の政策が利益団体に恩恵を与え、その現状をこれらの集団が何としても維持しようとしていることにある。改革のためには、政府がそうした閉鎖的な一部の利益ではなく、国益を優先させる必要がある。問題は、民主社会において、そのように主張するのが、ますます難しくなっていることだ。・・・


21世紀は権威主義的
資本主義大国の時代になるのか
(2007年8月号/2011年3月号に抜粋掲載

アザル・ガット/テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。


中国による新秩序も文明の衝突も起きない
――「アメリカ後」の世界秩序
(2011年6月号)

G・ジョン・アイケンベリー/プリンストン大学教授
新興国が台頭し、欧米諸国が衰退していくにつれて、ルールを基盤とする開放的な国際秩序の特質は失われ、ブロック、勢力圏、重商主義ネットワーク、宗教的ライバル関係などの、より対決的で分散したシステムが台頭してくると心配する専門家もいる。だが、アメリカのグローバルシステムにおける地位が変化しているのは事実としても、中国を始めとする新興市場国には、リベラルな国際秩序の基本ルールや原則をめぐって先進国に闘いを挑むつもりはない。むしろ、その枠内でより大きな権限とリーダーシップを得たいと望んでいるだけだ。それどころか、非西洋国家の台頭と経済・安全保障領域での相互依存の高まりによって、現在の秩序を支える新たな基盤が誕生している。むしろ、行き過ぎた市場原理主義に陥っていたアメリカは、第二次世界大戦後の指導者たちの立場を思い起こし、「経済の開放性と社会の安定」というビジョンをいかに具体化していくかをゆっくりと考えるべきだ。世界は経済の開放性や市場経済を拒絶しているのではなく、安定と経済安全保障に関するより拡大的な概念を求めているのだから。




先進国はすでに高度な経済発展段階に達しており、時代遅れの政策、政治構造、政治手法を、経済の現実に見合うように変化させるか、放棄する必要がある。・・・問題は、既存の政策が利益団体に恩恵を与え、その現状をこれらの集団が何としても維持しようとしていることにある。改革のためには、政府がそうした閉鎖的な一部の利益ではなく、国益を優先させる必要がある。問題は、民主社会において、そのように主張するのが、ますます難しくなっていることだ。・・・写真は、ウォール街のベイルアウトに反対するアメリカ市民。

関連書籍・論文



漂流する先進民主国家 (2012年1月号)
――  なぜ日米欧は危機と問題に対応できなくなったか

チャールズ・クプチャン



歴史の未来 (2012年2月号)
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を

フランシス・フクヤマ



思想の衝突1923−2012
――市場経済民主主義は立ち直れるのか?

アンソロジーvol.36

2月号掲載論文から



米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

バリー・R・ポーゼン


米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス
G・ジョン・アイケンベリー
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5年後、アメリカはサウジを抜いて、世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

ファティ・ビロル


ポール・ボルカーの思想
―― 近代ファイナンスの英雄が示した気骨

オースタン・グールズビー
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   2013年2月4日更新
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中間層の衰退、政治の硬直化、統治危機
―― 日米欧の民主体制危機のルーツ


先進民主国家体制の危機
―― 改革と投資を阻む硬直化した政治
(2013年2月号

ファリード・ザカリア/国際政治分析者

先進民主世界を悲観主義が覆い尽くしている。ヨーロッパでは、ユーロ圏だけでなく、欧州連合(EU)そのものが解体するのではないかという声も聞かれる。日本の経済も停滞したままだ。だが、もっとも危機的な状況にあるのはアメリカだろう。停滞する先進国が本当に必要としているのは、競争力を高めるための構造改革、そして、将来の成長のための投資に他ならない。問題は政治領域にある。政治が、効率的な改革と投資を阻んでいる。その結果、われわれが直面しているのが民主主義体制の危機だ。予算圧力、政治的膠着、そして人口動態が作り出す圧力という、気の萎えるほどに大きな課題が指し示す未来は低成長と停滞に他ならない。相対的な豊かさは維持できるかもしれないが、先進国はゆっくりとそして着実に世界の周辺へと追いやられていくだろう。今回ばかりは、民主主義の危機を唱える悲観論者が未来を言い当てることになるのかもしれない。


歴史の未来
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を
(2012年2月号

フランシス・フクヤマ/スタンフォード大学シニアフェロー

社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。マルキストが共産主義ユートピアを実現できなかったのは、成熟した資本主義社会が、労働者階級ではなく、中産階級を作り出したからだ。しかし、技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問われているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していくのを政府がどの程度助けるかという点にある。


漂流する先進民主国家
― なぜ日米欧は危機と問題に対応できなくなったか
(2012年1月号)

チャールズ・クプチャン/米外交問題評議会シニア・フェロー
グローバル化が「有権者が政府に対して望むもの」と「政府が提供できるもの」の間のギャップをますます広げ、政府は人々の要望に応えられなくなっている。これこそ、アメリカ、日本、ヨーロッパという先進民主世界が現在直面しているもっとも深刻な問題だ。先進民主諸国が統治危機に直面する一方で、台頭する「その他」の諸国が新たな政治力を発揮しているのは偶然ではない。グローバル化した世界への統合を進めていくにつれて、先進民主国家が問題への対応・管理手段の喪失という事態に直面しているのに対して、中国のような非自由主義国家の政府は、一元化された中央の政策決定、メディアに対する検閲、国家管理型の経済を通じて、社会の掌握度を高めている。必要とされているのは、民主主義、資本主義、グローバル化の相互作用が作り出している大きな緊張をいかに解決するかという設問に対する21世紀型の力強い答えを示すことだ。政府の行動を、グローバル市場の現実、恩恵をより公平に分配することを求める大衆社会の要望に適合させるとともに、痛みと犠牲を分かち合えるものへと変化させていく必要がある。




停滞する先進国が本当に必要としているのは、競争力を高めるための構造改革、そして、将来の成長のための投資に他ならない。問題は政治領域にある。政治が、効率的な改革と投資を阻んでいる。その結果、われわれが直面しているのが民主主義体制の危機だ。

関連書籍



思想の衝突1923−2012
――市場経済民主主義は立ち直れるのか?

アンソロジーvol.36

2月号掲載論文から



米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

バリー・R・ポーゼン


米軍撤退論にメリットはない
―― アメリカの対外エンゲージメントを維持せよ

スティーブン・G・ブルックス
G・ジョン・アイケンベリー
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5年後、アメリカはサウジを抜いて、世界最大の産油国になる
――世界エネルギーアウトルック

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ポール・ボルカーの思想
―― 近代ファイナンスの英雄が示した気骨

オースタン・グールズビー
他、全12本掲載。



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日本を苦しめる負の連鎖
――制度改革か、日本システムからの退出か


日本システムから退出する企業と個人
(2013年1月号掲載/2001年発表論文

レオナード・J・ショッパ/バージニア大学准教授(論文発表当時)

年金の減額に備えて市民たちがますます多くを貯蓄に回すようになったために、個人消費を増やして経済を回復させようとする政府の試みもうまくいっていない。また、若い女性たちが結婚して仕事を辞めたり、あるいは逆に結婚を先送りしたりすることで、人口高齢化や少子化という人口動態上の危機を管理するのもますます困難になっている。これらのトレンドの一つだけが孤立して起きているのなら、問題が表面化した時点で劇的な対策を迅速に実施できるかもしれない。だが実際には各トレンドは連鎖している。出生率のさらなる低下が年金制度に対する不安を増幅させ、それによって、人々は躍起になってより多くを貯蓄し、支出を減らしている。競争力のある日本企業がより多くを海外に投資しだすと、日本に残された企業への投資の収益率はますます低下してくる。こうしたトレンドの双方が、政府による経済を上向かせようとする努力をますます困難にし、株式市場の崩壊や超インフレの危険を高めている。そして、こうした危険ゆえに、企業、個人投資家、そして女性たちは、資本逃避や移住といった、より急進的なシステムからの「退出」策に目を向け始める。


日本を待ち受ける「社会契約」の再定義
――衰退する日米欧経済
(2013年1月号)

ロバート・マッドセン
/マサチューセッツ工科大学国際研究センターシニアフェロー
成長のために、そして再び金融危機に直面するのを避けるために必要な、経済改革に向けた政治的コンセンサスを日本は構築できるだろうか。数字だけをみれば、日本の国力(パワー)が失われた20年で低下したわけではない。経済規模も防衛力も1990年当時より大きくなっている。だが、バブル崩壊後、民間セクターが債務支払いに追われるなか、日本政府は経済規模が縮小するのを食い止めようと経済に介入し、この間に対GDP比債務残高はかつての3倍へと膨れあがった。日本(そして米欧という)という巨大な債務を抱えた先進国には「社会契約」をいかに再定義するかという難題が待ち受けている。予算を均衡させ、再び金融危機に直面するのを回避するには、税率を引き上げ、社会保障支出を削減するしか方法はない。アメリカ、日本、そしてヨーロッパ諸国は、この困難なプロセスとそれが引き起こす社会的緊張への対応に長期的に追われることになるだろう。

重要なのは経済だ
――日本の回転ドア政治を打開するには
(2013年1月号)
ジェラルド・L・カーチス/コロンビア大学教授

欧米にキャッチアップするという目的が達成され、1989−90年にかけて冷戦も終わったために、日本の戦後システムを長く支えてきた支柱は崩壊した。以来、小泉元首相を部分的な例外とすれば、日本の繁栄と安全をいかに維持していくかについて市民を説得できる政治家は登場していない。次から次と政治家が登場して政権を担うが、結局は市民を失望させ、信任を失っている。最大の問題は日本経済が低成長から抜け出せずにいることだ。24時間態勢で紙幣を量産するだけで、経済がどうにかなるものではない。規制緩和、専門職の女性への機会の拡大、移民の受け入れ、社会保障改革、年金改革、税制改革も必要だろう。もっと歳入を増やすと同時に、経済を刺激する方法を見つけなければならない。「どうすれば、失われた20年を経た日本に残されたポテンシャルを開花させ、より迅速に経済を成長に向かわせることができるか。この点について自分たちが何をしているかについて政府が市民を納得させられない限り」、政治プロセスの健全化は望めないだろう。




数字だけをみれば、日本の国力(パワー)が失われた20年で低下したわけではない。経済規模も防衛力も1990年当時より大きくなっている。だが、バブル崩壊後、民間セクターが債務支払いに追われるなか、日本政府は経済規模が縮小するのを食い止めようと経済に介入し、この間に対GDP比債務残高はかつての3倍へと膨れあがった。日本(そして米欧という)という巨大な債務を抱えた先進国には「社会契約」をいかに再定義するかという難題が待ち受けている。

関連論文



日本衰退論の虚構
――みえない日本の等身大の姿
(2013年1月号)

ジェニファー・リンド



論争 日本は衰退しているのか
―― 日本衰退論の不毛
(2012年12月Subscribers' Only公開)

ジェラルド・L・カーチス

2月号掲載論文から



先進民主国家体制の危機
―― 改革と投資を阻む硬直化した政治

ファリード・ザカリア



米軍の大規模な撤退を
―― 控えめな大戦略への転換を図れ

バリー・R・ポーゼン


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他、全12本掲載。


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