そこが聞きたい:原発と民主主義 黒川清氏

毎日新聞 2013年02月18日 東京朝刊

 −−インターネットで、委員会の様子を英語の同時通訳付きで発信しましたね。

 ◆日本に対する世界の信用をいかに取り戻すか強い危機感を抱いたからです。英国のBSE(牛海綿状脳症)対策が、いい先例でした。1986年に発見された当初、英国政府は「大丈夫だ」と発表した。ところが、人間に発症して大騒ぎになり、欧州議会に独立調査委員会ができた。間違いは誰にでも起きるが、大切なのは内々で処理してはならないということなのです。英国が牛肉の輸出解禁にこぎ着けたのは06年。事件発生から実に20年かかった。

 英国議会には、独立調査委員会の伝統がある。古くはタイタニック号の沈没事故、最近ではイラク戦争への参戦、政権とメディアの癒着といった問題を検証している。日本では「国の調査」というと、政府すなわち霞が関が主導権を握ってきたので、肝心な行政を検証できない。議員による委員会は、政治的な駆け引きが起きるから、外部の知見を入れ、透明性を徹底させなければならないのです。

 ◇「タテ社会」の破綻

 −−報告書で日本社会の「思いこみ」を厳しく指弾しました。

 ◆原発政策には、政・官・財・メディアが一体となって同じ方向へ進む「規制の虜(とりこ)」と言われる現象があった。本来は規制しチェックすべき側が、規制される側に取り込まれるねじれた関係です。日本人は「所属している場」と「個人の属性」が異常に密着しているタテ構造の社会で、責任ある立場の人が責任を果たさない、責任をとる覚悟ができていない。それが、想定できたはずの事故を想定しなかった原因だったと思う。でも冷戦が終わり、インターネットが普及して、世界の構造はすごい勢いで水平方向につながってきている。そこに原発事故が起きたのは、タテ構造のシステムが破綻したという意味で、暗示的です。

 −−国会事故調は、いったん終わりました。

 ◆除染から廃炉まで事故の後始末をどう収束させるか、使用済み核燃料をどうするか、今後のエネルギー政策はいかにあるべきか、国会に第2、第3の独立委員会を作って調査すべきことはたくさんある。こうした経験を重ねることが、民主主義のプロセスを学習し、世界の信用を回復していく道でしょう。

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 ■ことば

 ◇四つの原発事故調報告書

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