ファイル交換ソフトや動画投稿サイトを利用するにあたって、気をつけなければならない点は何ですか。
ファイル交換ソフトとは、P2P(Peer to Peer)技術等を用いて、インターネットを介して不特定多数のユーザー同士が音楽や映像作品などを共有することを目的としたソフトウェアのことで、現在では複数間でのやり取りが可能になっていることから「ファイル共有ソフト」とも言われています。代表的なソフトとしては、Napster(1999年公開)やGnutella(2000年公開)、日本製のソフトではWinny(2002年公開)やShare(2003年公開)等があります。

また、動画投稿サイトとは、インターネット上のサーバーに不特定多数のユーザーが投稿した動画ファイルを不特定多数のユーザーで共有し視聴できるもので、世界的に有名な動画投稿サイトとしてYou Tube等が挙げられます。

デジタル化、ネットワーク化の普及やインターネットのブロードバンド化が急速に進展したことに起因して、既存のテレビ番組や映画・音楽作品などのファイル交換ソフトによる違法利用や動画投稿サイトへの違法アップロードが増え、適法に行われている配信ビジネスの市場規模を大幅に上回っているとの指摘もなされています。

ここでは、ファイル交換ソフトや動画投稿サイトを利用するにあたって、著作物をアップロードする際の問題点と、著作物をダウンロードする際の問題点を解説します。

<1>著作物をアップロードする場合
著作物を公衆に直接受信させることを目的として、権利者に無断でインターネット上にアップロードする行為は、複製権の侵害(著作権法第49条1項1号)、送信可能化権の侵害(著作権法第23条1項)、および第三者が共有フォルダにアクセスして実際に著作物をダウンロードした場合には自動公衆送信権の侵害(同条)、となります。
ネットワーク・テクノロジー自体が非常に秘匿性が高く、かつ、一般家庭に普及しているパソコンで簡単に、しかも大量に違法配信を行うことが可能になっている現代社会において、単に違法配信者への対策を講じるだけでは抜本的な解決に至らないことからも、次のAで説明する違法受信者への対策も講じられています。
なお、Napsterのようにファイル交換ソフトを提供したうえで、ユーザーの情報探索のためにサーバーを設置するといったサービス提供者に対しては、みずから送信行為を行わなくてもサービス提供者の管理のもとに行われていることを根拠に、送信可能化権及び自動公衆送信権の侵害主体者であると認定した司法判断もありますので注意が肝要です。

<2>著作物をダウンロードする場合
ファイル交換ソフトや動画投稿サイトを利用して、音楽や映像作品などをダウンロードする行為は著作物の複製(著作権法第21条)に該当します。一般に著作権の制限規定により、自分だけが楽しむ目的でダウンロード(複製)した場合は、「私的使用のための複製」として複製権の侵害にはなりませんが(著作権法第30条1項)、2009年の著作権法の一部改正により、私的使用のための複製の範囲の見直しが行われ、違法著作物であることを知りながら、そのファイルをダウンロードして行うデジタル方式の録音や録画も、複製権の侵害となりました(著作権法第30条1項3号)。