ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  白銀の魔法騎士 作者:歌舞伎山 俊彦
人数編成を間違えてました。

16(1月11日改稿)
優は生徒会室で正座しながら、別なことを考えた。
国が残っていくには、エネルギーが必要になる。電気を作るには原料となる石油や核燃料が必要なように、資源が必要となってくる。
だから、国同士で徒党を組んで連邦化していた。
東アジア(日本以外)で中国を中心とした中華人民共和連邦(通称、中華連邦)、EUヨーロッパ連合、ロシアを中心とした真ソビエト連邦(新ソ連)だったりと様々だ。
中華連邦と新ソ連は、社会主義国家だから、民主主義国家は目の敵にしている。
これが主な対立の原因となって、第三次世界大戦が起こった。
国が違えば考え方も何もかも違う。その国で当たり前だった常識が、他の国に行けば通じないのと同じだ。
まったく関係ない事を考えていた事に気づき、優は自分を戒めた。
生徒会室には、副会長以外の役員が勢揃いしていた。風紀委員長の槙原小雪もいた。
別に「正座していろ」と命令されたわけではないから、優は立ち上がる。回れ右して退室しようとしたところで、頭を鷲掴みされる。
「なんで帰ろうとしてるのかしら」
「思春期の男子がする行動に理由を付けろ、と言われても無理な話です。遅刻した理由も、ね」
「何が「ね」なのよ。全て思春期で片付けられるとでも思ってるんですか!?」
椿の怒声が響く。頭を鷲掴みされてるから、逃げたくても逃げれない。
「まあまあ、落ち着いて」
紫乃が声を掛ける。
「これが落ち着いてられますか!?
一時間も、呼び出されてから一時間も経ってから来たんですよ!?」
「仕方ないんです。ちょっとした報復行為をしてきたんですから」
「誰によ!」
「野々宮商会って会社に」
「は、犯罪者!」
椿が人聞き悪いことを言い放った。
「やめてー。体は撃たれても平気だけど、心は一度撃たれたら一生ラブになってしまう」
「胸を押さえながら、変なことを言わないで! 貴男がラブになることなんて一生ないでしょうに!」
「失礼なことを言いやがって。こうなったら徹底抗戦です。いいか、誰もが恋人を作れると思うなよ! おまえ――」
風紀委員長を指差した。
「あたしには彼氏がいるが」
「出鼻を挫かれた!?」
頭を抱える。
さて、ふざけるのは終わりにして、本題に移ることにした。
「何の用ですか?」
「さっきまでと雰囲気が変わりましたね」
「黙れハゲ」
「お前がな!」
「カルシウム足りてない証だ」
椿に銃を額に突きつけられて、優は手を上げる。
別に撃たれても死なないが、室内に頭を吹っ飛ばされた遺体を作るのは戴けない。
だから、おとなしく降参する。
「はいはい、とりあえず銃を下ろしてくれ。喋りたくても喋れなくなるよ」
「さっさと言いなさい」
銃を下ろしてくれたから、早速語り出す。
「さっきも言ったけど、野々宮商会に殴り込んだのは事実ですよ」
「理由は?」
「うーん……」
野々宮商会がクラスタの隠れ蓑になっていたことを言いふらしたら、鴉様に闇討ちされる危険があるので伏せる。
「こっちだって色々あるんですよ」
「…………まあいいでしょう。いつでも変な行動しかしない貴男に理由を訊いても無駄でしょうね」
優の認識が『変人』として認識されていることに気づいた。
心当たりがあるだけに、この認識は仕方なかった。
泣きそうになるのを堪えて、優は「そっちは?」と用件を聞くことにする。
「生徒会と風紀委員はなんで呼び出したんですか?」
これに答えたのは、紫乃ではなく琴美だった。
「井上春彦が薬物の不正使用で死んでから、新しい制度で騎士科が小隊を組んで戦闘訓練するのはご存知ですよね?」
「知ってます」
「前に起きた襲撃事件で退学者と死亡者がでたことによって、総合的な人数が5人足りません」
「つまり?」
この後のセリフは、琴美ではなく会長である紫乃だった。
「特例で貴男たちのグループだけ、6人から7人編成で組んで貰うことになります」
「なるほど」
優は、手の平ををポンと叩いて納得する。
「解りました。……帰っていいですか?」
「もう一つ宜しいですか?」
「何ですか?」
ウンザリとして不機嫌になるのを、優は隠し切れてなかった。
「貴男、何で魔法科を選択しなかったんですか?」
答えづらい質問だった。
いつかはバレる隠し事だったが、意外と早くて驚いた。
「試合を見れば、貴男の魔法力と発動速度は、椿さんを超えています。だから、貴男は騎士科でいるより魔法科に入るべきでは?」
魔法を使える人間が魔法科ではなく騎士科に入っても、何ら問題はない。
だが優には、騎士科でなければいけない理由があった。
決して口に出してはいけない理由であったりするが。
何も言えず黙ると、紫乃は軽く息を吐いた。
「葛城先生に口止めされてるんですね」
「あははは」
「なら、仕方ないわね。これ以上は追求しません」
紫乃が急に砕けた口調になったから、優はぽかんとする。
「じゃあ帰って宜しい?」
「いいですわ」
「ひ、1ついいですか?」
瑠璃が挙手する。
「葛城くんのデバイスを見せてくれませんか?」
「いいですよ」
黒い銃を背中のホルスターから取り出す。
それを手渡すと、瑠璃はウットリと見つめる。
「これがKAになるなんて、どうやって作ったんですか!?」
「優子さんに聞いてください。早く返して。でないと、魔法が暴走しちゃうから」
これは本当だ。
彼の足元からは、火の粉が吹き荒れ床を焦がす。
「これって制御装置だったんですか!?」
慌てて瑠璃は、優に銃を返す。
「スゴい魔法力ですね……」
紫乃の呟きに、優は苦笑いを浮かべた。
魔法力を暴走させる人間は、未熟な人間の証だった。
暴走させる人間は、魔法師にはなれない。それが法律で決まっていた。
「貴男が魔法科を選択しなかった理由がソレだったのね」
「法律は遵守しなければいけませんから」
ゆっくりと息を整える。
「人間暖房機ね」
「その渾名は嫌だ!」
「あら、残念」
本気で残念がっているように見えて、優は不機嫌になった。
「それにしても、葛城くんのKAってどうやって光っているんですか?」
「LEDです」
「本当ですか!?」
瑠璃が驚きの声を上げる。
「そんなわけないでしょう、秋峰さん。光のは魔力を放出しているからですよ」
「何故解った!?」
柊琴美、中々侮れない人物だった。
真実を知った瑠璃は、頬を膨らませる。
「嘘つき」
「まあ、LEDで光らせていたら、ただの変態何ですけどね」
「自分で言っては駄目でしょう」
椿が諭す。
「僕は、常に魔力漏れした状態で戦っているから、発動速度が異常に速いんですよ」
「大丈夫なの?」
紫乃が心配するのは当たり前だった。
魔力を常に暴走させている人間は、体力の異常に速い。
「大丈夫ですよ。そのための制御装置なんですから」
銃を誇示する。
腑に落ちなかったが、一同は優がこれ以上何も言わないのを察して無理やり納得せざるを得なかった。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。