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  白銀の魔法騎士 作者:歌舞伎山 俊彦
対戦が終わった翌日の放課後、優と椿は生徒会室に来ていた。
昨日の一件は、優が放心状態(演技)で事情を訊く暇がない、という理由で今日に事情聴取を兼ねた昼食会が行われた。
「はぁ……。マジでしんどい」
「ぼやいている暇があったら、さっさと生徒会室に入るわよ」
「ラジャー」
生徒会室の前で、軽く深呼吸して扉を開ける。
何気ない動作で椿を護るように前に立つ。
扉を開けて、先に入ったのは椿だった。
彼女は、中に入って笑顔で一礼した。
ゴホン、と誰かが咳払いした。
同性でも思わず見惚れてしまう笑顔だから、見惚れていたのを誤魔化す咳払いだったのだろうと、優は確信する。
後ろにいたから、優は何故咳払いしたのかは解らなかったが、雰囲気で理解した。
「相変わらずのご丁寧な挨拶ですね」
妙に歯切れが悪く苦笑いを浮かべる紫乃に、優は勘違いして労いの声を掛ける。
「会長、いつもご苦労様です」
「ありがとう。……入学式から殺人事件が起きかけたりとか色々な問題が多くて、最近は肩が凝ってるわ」
「そうなんですか。では、また後日伺います」
回れ右をして、優はその場から立ち去ろうとする。
しかし、椿に頭を鷲掴みされ失敗に終わった。
「なぬ!?」
「適当なこと言って逃げるな」
表情こそ笑顔だが、目は笑わず脅迫じみた言葉を言ったから、色々な意味で優は恐怖した。
「まあ、とりあえず座ったら?」
優が青ざめているのを見た紫乃は、助け舟を出した。
これ幸いと、優は素早く端の席を陣取った。
椿もそれに続いて、優の隣の席に座った。
生徒会のメンバーは、その年の魔法科の学年主席が入ることが恒例となっている。だが、優の目の前にエリカが不機嫌そうに居座っているのだろう。
疑問を抱くが、その前に俯き生徒会役員をバレないように値踏みする。
まずは、小柄ながら均整のとれたプロポーションの女性は、前にも見た火神紫乃会長だ。
その隣に、長身で手足が長い美人といった感じの会計の腕章を着けた三年生の柊琴美。
その対面に座っているのが、書記の腕章を着けた秋峰瑠璃が座っていた。ぱっと見で、中学生と間違えそうな体型をしていた。
瑠璃の隣に、神経質そうな細身の男性が副会長が座っていた。
(逃げようかな……)
全員が成績上位だから、何となく気後れしてしまう。
彼が魔法を撃てば、その場から脱兎の如く逃げれるだろう。しかし、その後に校則違反とかで取り押さえられ罰則を貰ってしまう。だからこの場合、何もせず座っていることが得策だ。
そんな考えだが、とっとと帰りたい優は、さっさと用件を済ませようと思う。
「生徒会長、とっとと帰りたいんで本題に入ってください」
「そうね。……では、単刀直入に伺います。貴方には、井上春彦の死因を教えてほしいんです」
こんな事を訊くのは、本来警察がやる仕事だ。しかし、警察の介入を拒んだ上の連中が学生だけで問題を解決を望んだのだろう。
「魔法力増強液って耳にしたことありますよね?」
「魔法師の能力を一時的に上げる画期的な液剤のことね」
画期的、と紫乃が言った言葉に苦笑した。
「画期的じゃなくて、猟奇的なんですけどね」
「どういうこと?」
この話をしてしまうと、気分が悪くなる人が出るから気乗りしないが、言うしかないだろう。
「生きている魔法師の血なんですよ」
優の言葉に全員が絶句した。
「……血液型が合わないのでは?」
琴美の疑念に即答する。
「飲むくらいなら大丈夫でしょう。だけど、彼は直接投与したから残念無念でしたけど」
優にとってみれば、既に見慣れている事だからあっさりと言っているが、その場にいた人間は違った。
気まずい雰囲気なのを察して、優は話題の転換を試みる。
「それにしても、生徒会って女性の比率が高いですね」
「今、それは関係ないでしょう」
「椿さん、そんなに細かいと皺が増えるよ?」
「余計なお世話よ!」
殴られた。
「アベシッ」
大袈裟に倒れて、そのまま扉へ向かう。
「こらこら、逃げるんじゃないの」
椿に再び捕まって引き戻された。
「はぁ……。とりあえず、その液剤は普通じゃ手に入らない代物なんですよね」
「誰かが販売しているとでも?」
椿が訊くと、微妙な顔して頷いた。
「さあ、僕の預かり知らぬ問題ですから、そこら辺りは生徒会とか風紀委員で調べてください」
自分の言うべき事は言った、とばかりに優は立ち上がった。
「じゃあ、入学式殺人未遂事件の話しに移ろうかしら」
「後日伺います!」
自分にとって都合の悪い話題に移ろうとしたことを察知して、優は文字通り一瞬でその場から姿を消した。


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