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【茨城】

県沖「常磐もの」ヒラメ復権へ 県栽培漁業センター 4月にも事業再開

主力のヒラメを育成、生産する水槽が並ぶ魚類棟=鹿嶋市で

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 県産ヒラメは、東京都内の築地市場でも「常磐もの」と呼ばれ、名高い。放流するヒラメの稚魚を育て、県内漁業を支えてきた県栽培漁業センター(鹿嶋市平井)が東日本大震災で被災し、休止に追い込まれていたが、二年が経過し、四月にも事業が再開できる見通しになった。東京電力福島第一原発事故による風評被害など県内漁業に、いまだ爪痕は残るが、常磐もの復権に向け、関係者も意気込んでいる。(林容史)

 センターは一九九五年、漁業資源の増大を目的に県が開設した。財団法人の県栽培漁業協会に運営が委託され、アワビやハマグリの稚貝、ソイやアユなどの稚魚を育てていた。

 中でもヒラメの生産は協会が独自に続けてきた主力事業で、震災前の二〇一〇年度、八十二万匹の稚魚を県内の各漁業協同組合に出荷した。協会によると、県内のヒラメの漁獲量に占める放流魚の割合は15〜10%で、20%を超えたこともあるという。

 センターは鹿島港脇の地盤が軟弱な埋め立て地に立っていたため、震災の液状化で大きな被害を受けた。施設内の床が一部陥没、敷地内は噴き出した泥水であふれた。埋設してあった海水の取水管をはじめ上下水、通気、電気ケーブルなど大動脈が絶たれ、当時、育成中だったアワビの稚貝約九十三万個が死滅した。

 液状化対策など改修方法の検討に時間がかかった上、原発事故の影響で県内産の魚の安値が続き、一部漁業者から「採算が合わないのでは」などと、ヒラメの生産事業再開に批判的な声もあった。しかし、県は「将来に向け、漁業資源を充実させる必要性は大きい」と震災から一年後の一二年三月、事業費約十一億五千万円を予算化して復旧工事に踏み切った。

 秋口から冬にかけ、豊富な餌を食べて脂が乗り、肉厚になる茨城沖のヒラメ。一二年四月、放射性セシウム濃度が国の基準値を超えたため、出荷制限となり、一部解除される八月下旬まで漁獲がまったくなかった。現在も日立市川尻以北では解除されておらず、小型船による漁は行われていない。今シーズンは豊漁も追い打ちを掛け、ある県北地域の漁業者は一キロ当たり四千〜五千円を付けた卸値が「千〜千五百円まで落ち込んだ」と肩を落とす。

 同協会の鈴木正伸専務は「一日も早く漁業者が元気に漁に出られるよう、市場はきちんと評価してほしい」と願う。事業再開で、ヒラメ関連の遊漁船、宿泊、飲食業の活性化にも期待を寄せる。 

 

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